大井町、15時半。仕事なんかうっちゃって、酒場を探す。
大井町駅東側のあの狭い路地。どこか必ず開いてる酒場があるはずだ。
すると、「晩杯屋」を見つけた。
数年前にはなかった店舗。
都内に増殖中の立ち飲みチェーン。
「晩杯屋」との出会いはもう6,7年前になるだろうか。
ムサコこと武蔵小山で引っ越しの手伝い中に店を見つけ、我慢できなくて、立ち寄った店。
赤羽「いこい」で店主が修業したという旨の貼り紙が店内の壁に貼られていた。
次に入ったのが、大山の「晩杯屋」。これも散歩中に偶然見つけて入った。その店舗はとても広く、新橋の「ごひいきに」が移転したことで、多分区内最大の広さの立ち飲み屋になったのではないかとボクは勝手に思っている。
噂によると、「晩杯屋」は中目黒にも店があり、都内に3店舗を築いたかと思いきや、大井町にも店を構えるなど、同じく「いこい」で修業したとされる上野の立ち飲みの雄、「たきおか」の店舗数を上回る快進撃を続けている。
更に今年に入ってからは、高円寺、町田、巣鴨、水道橋に店舗をオープンさせるなど、その勢いは止まらない。
ムサコの「晩杯屋」は極狭で、大山の店舗は広々。その中間くらいの店舗の広さの店が大井町店だった。
15時半というのに、店はもう満員だった。ボクはなんとか、間を空けてもらい、陣地を確保した。
ボクは「黒ホッピー」セットに、「煮込み」をオーダーした。
ホッピーセット370円、「煮込み」130円は、堂々のワンコインだ。この精神は確実に「いこい」から伝承されている。
そして、メニューの多さとその安さ、そのワクワク感は「いこい」の系譜である。
頼んだものが速攻で供される。これも嬉しいサービスだ。
というわけで、秒殺でホッピーが出てきて、ぐいっとジョッキに注ぎ、ぐわっと一口飲み干して、ボクは気付いた。
店は満員なのに、異様に店内が静かなのである。時折、注文する声が聞こえる程度で、誰もが無口だ。
カウンターを眺めまわすと、ほとんどがご隠居風のいでたちで、全ての人が一人客だった。総勢10数人程度の客が全て一人客というのは、ボクにとってショッキングだった。
時間帯なのだと思う。時刻は15時半。まだサラリーマンは就業時間内である。
サラリーマンの姿がないのは当然としても、しかしご隠居らが全て一人客というのも不思議な光景だった。
しかし、店内の静寂は客たちに少なからず緊張感を与えただろう。
注文する声がぎこちないのである。
「マグロ山かけ」。
ひとりの老人が力のない声で注文する。
元々、声に力がないのか、それともこの静まり返った雰囲気のせいで、そうなったかは分からないが、とにかくそのかすれそうな声に多くの客が注目したのは確かだ。
だが、その重苦しい雰囲気も年配のカップルの登場によって一掃される。ひとりは杉平助翁のような老人、もうひとりのご婦人が50歳代と思われる、どこかのスナックのママのような雰囲気の御仁で、その2人はボクの横に陣取った。老人は杉翁のような奇声を発することで、店内はにわかに活気づき、注文が頻繁に出るようになった。
そのボクも「秋刀魚刺し」(200円)と「ナカ」を注文した。
店内もホッとした空気に包まれた。
しかし、その老カップルの落ち着きのなさといったら。
夫婦漫才のような掛け合いは見ていて楽しかったが、ふらりと店の外に出た利入ったりする杉翁に、べったりとくっつくママさんの姿はひとりの時間を作りに飲みに来た者にとっては煩わしいものだったろう。
杉翁は何度もボクに話しかけ、天気の話しとか、景気の話しとか、どうでもいい話題をどうでもいいように話した。
でも、それはボクにとって満更悪い時間ではなかった。
「晩杯屋」の「ナカ」は濃い。
ともすれば、1本の外で4杯行けるかもしれない。
だから、1本飲み終えたら、ボクはもうけっこうふらふらだ。
大山店は清々しさのある店舗だったが、大井町店はジメジメとした感じだった。
だからなのか、気持ちよく酔ったという手ごたえのないまま、店を出た。
この日のボクは生き血を吸われていないと思う。
場所がかなり木場よりですが、本当、立ち飲みが増えました。
そうですか。
門仲店も出来ますか。
「晩杯屋」は今、急速に店舗が拡大中です。
もしかすると、「焼鳥 日高」をしのぐ、立ち飲みチェーンの一大勢力になるかもしれません。
そういえば門前仲町には下総屋って立ち飲みもありました。
ひざげりさんのおっしゃるとおり、増やしすぎですね。
下総屋ですか。
門仲は立ち飲みパラダイスですね。
さて、いつ門仲に行こうか、今検討中です。
でも、2軒ずつ、はしごしても3~4日はかかりますね。