システム担当ライブラリアンの日記

図書館システムやサービス系の話題を中心に。最近、歩き旅の話題も。

(2013.3.14) 第19回大学教育研究フォーラム(京都大)_3_シンポジウム

2013-03-17 14:27:55 | イベント参加
シンポジウム「「学び」を改めて問う:主体的な学びとは何なのか」

・感想
 「主体的な学び」が最近語られる中、日本の伝統芸能の学びから気付かされること、「学べ学べ。学ぶことが次から次へと」という、ある意味アンチテーゼのような発言。この辺りから、現代の状況にある程度マッチした考え方が見えてくるのではと感じました。本当に必要な知識とか教養ってなんなの、と。

 また、文科省の室長の発表、文科省の言うことは少し斜に構えていたのは認めますが、今日の話は、基礎知識の確認に、いくつかの投げかけ、内容も伝え方もよかった。行政の立場として、こういう調査を元に、こう考えているとか、あっさり言いながら、深そうでした。。

■教育担当理事の挨拶
「研究は教育の一環」と?

■認知科学から見た「主体的な学び」(渡部・東北大)
・今日の話は、「日本の学びと大学教育」(刊行予定)の一部から

○障害者、自閉症などの学びの研究から
・近代教育=きちんとした知をきちんと教える の限界
・日常的な学び

○主体的な学びについて3つの疑問
・アクティブラーニング
 伝統芸能における弟子の学びと類似。「よく見て覚えろ。わざは盗め」
→「きちんと丁寧に教える」ことで主体的な学びが生まれるのか

・「主体的な学び」には時間もかかる。失敗からも学ぶ。
→「主体的な学び」を効率的に獲得させることは可能か。

・ポートフォリオ評価
 一方、伝統芸能:非段階制、評価の非透明性
→教員は「主体的な学び」を正しく評価できるのか(個人的なこともある)


■学習の共同性と社会性を活かした学生と教員の学びの場のデザイン(美馬・公立はこだて未来大学)

○寺子屋の風景~現代の大学の講義写真
○はこだて未来大学の挑戦

 学習の共同性:理解の深化
 社会性:社会的に意味のある活動の中で動機付けられる

○制度と空間
・制度: プロジェクト学習、チーム・ティーチング
・空間: ガラス張り教室、オープンスペース、公共施設の配置、ICT

・3回生でプロジェクト学習が必修
 2002年~開始

○プロジェクト学習の特徴
・専門知識を実社会の問題に適用
・プロジェクト管理や運営方法も学習

・統括グループの存在

(ちょっと省略)

■主体的な学びとは何か(田中・東大)

1.社会構造から見て

○「主体的な学び」の前史
 #日本製の言葉、英語にはない表現
・1996年中教審答申に「生きる力」
・対極の「強制された勉強」「プログラムされた学習」

2.教育の現場から見て

・「自発的」に行われていても、「自己・他者・世界との関係を編み直す」ことにならない。
 道徳の学習、「いのち」と「食材」

 ◆話す技術だけでなく、自分の考え=話すことを持つことへの気づきが大事?
  >僕の講習

・気づきを広げる

3.一貫性、何が根本的なことか


■なぜいま学生の学修を中央教育審議会で取り上げるのか(松坂・文科省)
○18歳人口;学校数・学生数

○少子化のインパクト
・いい大学が上位の学生から取っていけば、上から○○万人の学生の偏差値は下がる。

○都道府県別の進学率
・20%以上の差

○「大学改革実行プラン」(現状の提示)
・生産人口の減少、高齢者人口の増加
 より高付加価値の人材が必要と言われる背景

○「事業仕分け」
・87%の国民 「教育費を増やすべき」と回答
 29%が「税負担が増えてもいいから」と回答
 →国民の期待

○学士課程の学修時間
・日米比較
・中間層の勉強時間が大きく減少 ◆

○求められる学士課程教育の質的転換
・学長アンケートでは「課題設定、解決・探求」「双方向」「フィールドワーク」

○大学と学位(学修水準)の水準
・700の大学で違いがあっていいのか、

○大学改革の視点
・学修時間を増やすために「中等教育」ではなく「主体的な学び」

○学費
・早稲田大学 社会科学部: 4,300円/90分
 民間の学校と比べても高価。金額的にも期待に応えるべき。
 (ここに図書館の整備等も含まれているが)
 
■討論(#ここは特にごく一部のメモです)
・京大 喜田先生(メディアセンター)
 学べ学べの大合唱。学ばなくてもいい社会も考えるべきでは。
 ITの立場だと、日々対応することが多い。

・渡部: 
 一人で学習する人がいい人もいる。
・美馬
 プロジェクト学習ばかりでもない。
 求められる知識は変わる。学習方法を身につけるのも大事。
 オープンスペースはプロジェクト学習だけのためではない。ライブラリーの自習場所等、使い分ける。
・松坂
 ・日本の学費は高い? アイビーリーグより安いかもしれないが、欧州よりは高いかも。
  三重の教育委員会にいたことがあるが、学費と生活費で1000万円、
  失った所得で1000万円、計2000万円。月10万円払ったとして17年間。
 ・他人を役に立たないということへの不寛容性も日本社会に広がっている?

 ・15回の授業が15週に渡らなくてもいいという制度改正(柔軟化)を検討している。

○まとめ
・松坂
 どんな形であれ学んでもらえれば、まずはよいのでは。
 それでも学ばない、という学生が行政の課題。追い出すのか、そのまま卒業させるのか。
・美馬
 高校→大学ではなく、社会に出てから、問題意識を持って大学に入るというのもあってよいのではないか。制度面でも何かできないかと。その中で学習意欲も出るのでは。
 4月の一斉採用も再考の必要があるのではないか。
・渡部
 グローバル化。日本のアドバンテージも大切になると最近思う。
 なので、伝統芸能の中の学びに着目していきたい。
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2 コメント

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学びの原点とは (Unknown)
2013-03-17 21:43:39
「伝統芸能の中の学び」とは、一言で表現すれば、そこにはハングリーな学びがあるからである。学びたいけど仕方なく就職したという人がいる、1年苦労した揚句、大学に入った。その時、学べることの幸せを感じたと、彼は言った。その学び方は貪欲であった。それが学びの原初的姿ではなかろうか?
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アクティブラーニング/技は盗め (Unknown)
2013-03-18 08:31:42
ある大学図書館は「研究個室」を極力少なくした。閉鎖的空間、他から見えない空間の局所化である。それは研究者が普通の席で資料を広げて没頭している姿を学生に見せる機会を増やす意味もある。いわゆる雁行型に設えたように、横に低い間仕切りがあるだけの席で満足する研究者は=教育者でもある。富士山の見える仕切りのない窓際席を好む教員もいる。学生に挨拶しながら座っている。技ではないが、そういう教員の姿を見て学生は何を感じるであろうか?検索に頼らずにガラス越しに見えるブックタワーで宝物探しをするのもアクティブではなかろうか。教え込まれるのではなく教え合うことで知識の領域が増す。人間とはそのように生まれてきているのである。
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