システム担当ライブラリアンの日記

図書館システムやサービス系の話題を中心に。最近、歩き旅の話題も。

(2013.12.6) 大阪大学 TAシンポジウム_1

2013-12-08 14:26:07 | イベント参加
この記事は例によって、私の理解の範囲で書いたあくまで個人的なメモです。

大阪大学 TAシンポジウム
 STA制度の導入による大阪大学の教育力向上
 ~大学院生のキャリアアップを目指して~
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/event/2013/12/20131206_01
に参加しました。

・2013.12.6(金) 13:30-17:00
・大阪大学 銀杏会館

●まとめ
2年目に入った新TA制度や、STA(S=Senior) の制度概要や、現状や課題など、本学の取組が理解できました。
STAに従事することによる教育的効果と、研究者の質を上げることによる大学の教育力、研究力向上も期待できると。
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●挨拶
・TAによる教育を経験する学生→ TAに→ 教員に という流れに。

●STA制度2年を振り返って(下田教授)
○本学のTA制度の歴史
 1992年 大学院生の処遇改善、教育の充実、指導者としてのトレーニング
 2004年 TA経費が運営交付金の中に=毎年減額
 2007年 RA経費で補填可能
 2011年 中教審答申「グローバル化社会の大学院教育」
      プレFD
 2012年 新TA制度

○アンケート
・主に共通教育では必須に
・TAにコミュニケーション能力向上

○課題
・教育的指導能力を必要としない業務も多い
・文系科目で受入少ない(授業の特性)

・教育的効果
 従事理由: ドクターの学生は教育者という意識が強い
 学んだこと: 教えることの難しさ
        授業内容の復習(マスターの学生)

○予算配分、開講科目数
・医歯薬系は全般的に厚い。特に薬学。

○制度見直しのポイント
・業務の明確化と効率化: SA、JTA(TA)、STA
・STAによるキャリア教育の拡大
・授業方法の多様化、効率化

○制度改革
・SA 経済的支援
・JTA 教育指導能力
・STA 教育企画能力

○区分と報酬 2012~
・SA 950円
・JTA
・STA 高めに、インセンティブを期待

○配分方式
・TA経費の90% 7割を基礎配分。3割は学生数と部局種別に基づいた配分
・残り10% 全部局。院生のいない部局、部局独自の取り組み

○従事者数
・全修士の42%が経験; 全博士の29%が経験(キャリア教育の割には少ない)
・博士のほとんどがJTA、STAは数%

・従事者の割合 高い:薬、
・STA従事者の割合 高い:経済、人、、、

○部局別のTA採用のべ人数
・全学教育と工学部が突出
・所属院生のない部局

○部局別、予算投入実績


○学生一人あたりの経費実績
・理系平均 14,000円。 薬学部は突出
・文系平均  2,800円
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○STAが増えないのは?
・JTAとの違いが分からない
 特別な業務を用意するのか

・STAを増やすと人数が減る

○増やすための方策
・制度の周知
・予算の拡充(総長裁量経費)
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○STAの効果
・活用例 教員がSTA制度の趣旨を理解し、学ぶ機会を作る
     学生側の姿勢

・業務報告書(A4一枚、学期ごと)から
 STAが補講を担当。
 講義を担当。
 演習を担当。
 ◆図書館の場合は、指導する教員を置けるか

・STAとしての自覚の効果
(業務内容がJTAとあまり変わらなくても)

○課題
・TA拡充の必要性
 全学共通科目
 部局が負担している経費
・予算の漸減: 効率化係数、毎年30名減る計算

・教育を意識した指導
 教員とのコミュニケーション; 研修; 成果の継承; 募集方法
・制度の周知

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■基調講演 日本のTA制度の現状と課題、大阪大学のSTA制度への期待
 小笠原正明氏(大学教育学会会長)

●1.研究大学の成功:制度化されたTA
○北米におけるTA制度の展開
・第2次大戦前にカナダ・アメリカの大学で始まる
・80年代から変化
 カナダ・ダルハウジー大学などで研修開始

○研究大学の成功:制度化されたTA
・大学ランキング上位に北米の大学
 「適切な人数のTAが教員と実り豊かな連携、、、知的刺激と成長に欠かせない教育の仕事」

●2.日本の大学のTA制度
○1992 「TA実施要領」(文部省)
 「学部教育」「処遇の改善」という文言
 1995 「TA実施要項」(文部省)

 →イメージ不在のまま量的拡大

○大学院生のための研修
・98年の北大、99年の広島大
・PFF(大学教員準備プログラム)の例
 2004年 京大「大学院生のための教育実践講座」など

・2011年3月の阪大シンポジウムの論点
 PFFはTA制度とは無関係という主張
 ~教育改革の戦略の違いを反映、と理解

・アメリカのTA制度の背景
 UCバークリー: 健康保険・授業料免除(1学期 $6,474)
         GSIⅣで $2,000/月
 ※院生は自活しなければならないという社会的常識
 ※契約業務の意識:キャリア教育の側面

●3.TA制度と専門主義
○「失敗」
・役割不明、生活支援の意識、専門科目が中心
  →研究室主義 →研究者エゴイズム
 Win-Winからゼロサムゲーム= 院生の研究時間をTAに割当て
・全学的ルールの必要性
 中途半端な状況に置かれている現状

●4.大阪大学の挑戦
○印象
 包括的;戦略的;データ重視;率直
○成果
 授業改善;達成感や充実感;トラブルの少なさ;キャリア教育の一環として認知

○現行制度の限界
・業務内容が授業によって違う(当然)
・部局によって違う(これが問題)
・制度への意識の低さ
・教育の場として機能しているか
 など

※制度の精密化
 特に、リクルート、待遇、役割分担。全学レベルで。

○報告書にある教員の意見
・研修の不足
・需給のアンバランス
・TA受入比率の傾向
※双方向的教育ではTAが必要に

●5.世界的な教育・学修戦略の転換
○知識伝達型 → 双方向型
 ※必然
○転換すべきだった時期はいつ?
 1980年頃、エリート→マス段階、情報革命
・大学入学者数と学習時間は逆相関

●6.少人数教育で対応しようとした戦略の失敗
○教員はますます多忙に

○大学生の生活実態
・UCバークリー化学3年生の1日
 (中村「米国の化学教育システム」現代化学 2008.10 p.52-57)◆
 コンパクトな授業と、主体的で多様な自己学習の組み合わせ
・文系授業の例「ディスカバリー講義」
 例:クレア・クラムッシュ教授「言語と権力」
  (宮本「カリフォルニア大学バークレー校視察報告書」vol.3, 筑波大学教養教育機構(2011))◆

●7.大型授業を双方向化しよう!
○論点を明らかに
○講義の骨格を明確に
○認知科学の応用
 (集中力は最初の20分、どんなにがんばっても50分)

○北大、基礎・教養科目に対するTAの重点的配分

○双方向化の例:筑波大学「現代人のための科学」
・北米型: スモールクラス型

・混合型:
 1)前半・後半型
 2)

・3点セット
 コースマネジメントシステム
 クリッカー
 TA、SAなどのフィードバック支援システム
 ※対面式授業を基本としたeラーニング環境。学生へのフィードバック

●8.TAの訓練
・制度趣旨の理解
 実地訓練
・授業補助への専念義務
・対人関係と守秘義務
・ハラスメントの禁止

●9.まとめ
・研究大学の成否は 制度化されたTA制度
・世界のTA制度は大きく変わりつつある
・研究者にも要求される高い教育能力
・教育倫理とシラバス
・教育力、コミュニケーション力を向上させるチャンス
 問題を整理する力、議論の根拠を明らかにする力、明快で適切な結論を導く力

●質疑
○「評価」については教員側の役割という考えもあるが?
 STA制度導入しても、教員側には評価は教員側という意識が強い。
 TAが評価するとしたら、基準の明確化やコミュニケーションが必要にもなる。

→評価の下データを分担。
 訓練するとTAの評価のぶれも狭まってくる。
 大事なのは、課題設定と評価の観点の設定。
 最初の1年は大変。

○工学部では、博士後期はすでにPBL的になっている。
 学部1-3回生での基礎教育の充実に対する手段。

→コースワークとラボワークの問題。
 一般的な大学では、4年分の単位を3年間に。実質化は無理。(4回生は就活)
 解決は、卒論を40単位、など。

○TAとPFFの理念的な違い
 
→日本では別物と考えられることが多い。
 UCで感じたのは、PFFもTA研修に近いという印象。
 理念的には、PFFは教授法と教育倫理。

○よき市民・よき社会人を作る大学では、TAの役割は?
→ふんだんに教員を提供。これは困難。
 TAを活用して、教育目的を実現に。

○学生が積極的に発言するには
→ディスカッションの内容をレポートにまとめさせるなど。

 ◆ちょうど苅谷剛彦「アメリカの大学・ニッポンの大学」P.77に、アメリカの大学でのTAミーティングに「議論が不活発な場合が問題になった」とあり。
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