録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

このブログは

このブログは、PCでテレビ番組を快適に録画し、自由な形で好きなように活用するための実験結果報告をメインとしたものです。ですが、その自由を奪い、不自由を売りつけて無制限の利権を得ようとするものたちが、現在のテレビ界では勢力争いをしています。そういう連中とは断固戦い続けます。それが、ここのテーマです。
2011年7月24日まで続けることを目標にしていましたが、2011年いっぱいまで延期いたします。 ・・・の、予定でしたが、衛星放送の行く末が気になりますので、それまでは続けます。ああ、意志薄弱。



特殊なコンテンツ
・SpursEngine H.264エンコーダ 実験プログラムサポート&他ソフト紹介ページ
Lalfさんが作られている、SpursEngineで使えるエンコードソフトのリンク先の紹介などをしています。CUI版とAviUtlのプラグインの二種類があります。 また、それ以外に同じくLalfさんの作られたCodecSys Personal向け参照AVI、ravi2や、BOさんの開発されたLinux用HD PVRコントロールソフトのリンクもおいています。

※10/07/01 se_h264enc_auo ver 0.09、se_mpeg2enc_auo ver 0.05、Seche Technical Preview2 リリース

・スカパー!e2 各チャンネル解像度・ビットレート一覧表
独自の調査による、スカパー!e2とBSデジタル放送の解像度とビットレートの一覧表です。多少の間違いはご了承ください。

・意外とある、デジタル放送録画可能キャプチャーボード・ユニット
外部入力を用いて、デジタル放送のチューナーやレコーダーから出力される番組を、自由に扱える形式で録画可能なPC用のキャプチャーボードおよび外部ユニットの情報を集めたものです。

これがRyzenだ! 1700で6700を超える

2017-04-06 23:07:48 | 意味なしレビュー
AMDから新CPUであるRyzenが発表されていらい、そのことばかり書いてきましたが、わたしが当初から新アーキテクチャの最初のターゲットとしていた8コアの最下位モデル、1700は買いやすい、OCがしやすいと言ったメリットからか一番人気となり、これだけ在庫がないわ、Amazonでは高値で転売されているわとさんざん。基本ハイロークラスが組み立てPC向けCPUのボリュームゾーン、と考えていたわたしですが、ここまで来たらRyzenはRyzenでもミドルクラスの6コアモデルが出るまで待つかなぁと半分あきらめていたのですが、先日の休日、ブラリと立ち寄った地元量販店でなんと、そのRyzen7 1700が一個だけ売られているではないですか! 正確には1800xも1700xも全部一個ずつだけ入荷していたのですが、他は目に入りません。しかし、ご存じの方も多いと思いますが、量販店のPCパーツは専門店と比べて少々高いのです。ポイント還元分をあらかじめ値段に含んでいる値付けがされてるんですよね。しかし、ここで入荷したということはショップの通販でも在庫があるかもしれない、といくつかパーツ専門店の通販サイトを手持ちのスマートフォンで参照してみましたが、どこも在庫なし。今ここで買うのが、おそらくRyzen5発売前にRyzen7 1700のデータを調べてブログで公開できる最後にして唯一のチャンスです。ちょっとだけ葛藤しましたが、「それでも転売屋はもちろん上位の1700xを専門店から取り寄せるより安いし、ポイント還元を入れればそれほど変わらない」と自分を無理矢理納得させて購入に踏み切りました。マザーボードは手ごろな在庫がなかったのでメモリーと合わせて専門店の通販サイトより注文。今回選んだのはASUSのPRIME B350-PLUS。PCIもありますしSATAの数も比較的多い(まぁそれでも足りないのでボードで追加するんですが)、値段も手ごろとMicroでないマザーから選ぶのなら上等でしょう。メモリーはちょっと上を向いてDDR4-2666の16GB(8GBx2)にしてみました。ただ、マザーに挿してAUTOにすると2133動作になってしまいましたし、設定で2666に単純にすると「OC起動に失敗しました」とエラーが出てしまいます。2666で起動するよういろいろ突き詰めるべきだったのでしょうが、時間が惜しいので一通りの調査が終わるまで2133でいいや、と。また、ここ最近どのPCもメモリは8GBでばかり使っていたので、そろそろアップさせてみよおうかと16GBにしてみましたが、わたしのやるような動画エンコードはせいぜい4GB強くらいしか使わないので意味ありませんでした。まぁせっかくなので多めでいいでしょう。持て余すようならRAM DISK化する手もありますし。

さて、せっかく手に入ったRyzen7 1700ですから、早速動画エンコードの能力を試してみましょう。PCのCPUの能力の基準と言えば動画エンコード、異議は認めません!!!比較対象としては、現状手持ちのPCで最速の、Intel Core i7 6700搭載のPCを使います。現行のKabylakeではなく一世代前のSkylakeですが、両者の違いは、CPU部分で言えば製造プロセスの改良により消費電力を上げずににクロックを上昇させたことくらいです。6700は現行の7700KはもちろんSkylake世代の6700Kと比べてもクロックはだいぶ落ちますが、まぁそれでも傾向は同じですから参考にはなるでしょう。また、過去のデータとの比較のしやすさからそれ以前の最速だったHaswell、i7 4770も比較対象に加えます。6700と4700はいずれも内蔵GPUを使い、メモリは8GB、OSはWindows10 PRO 64bitです。Ryzen7 1700はGPUを内蔵していませんのでRADEON R7 250XEを使い、メモリは前述の通り16GB、OSはWindows10 64bitですがPROではなくHOMEです。グラボが別になっているのでV-RAMをメインメモリから拝借する内蔵GPUよりその分動作には有利ではないか、と思われるかもしれませんが、過去の検証からメモリ4GBで収まる程度のエンコード作業なら内蔵GPUで足を引っ張ることはない、と判断しています。なお、全機種CPUクーラーは付属のものです。過去のAMD製CPUに付属しているクーラーはそこそこ冷えるのですが、動作音が掃除機か? と思うほどけたたましく、とても常用には耐えられないもので、いつも別CPUクーラーを買って使っていました。最近搭載されるようになったレイスクーラーは初めての使用でしたが音は過去のものと比べれば非常に静かで、体感ではIntel付属のクーラーよりも静かに思えました。OCなどをしないのなら十分ではないかと。なお、装着はねじ止め方式で少々手間がかかりましたが、純正のねじ止めはバックパネルを交換する必要がない設計になっており、ケースの裏を外したりマザーボードをケースから外したりしなくても取り外しが可能となっていて、好印象です。なお、マザーのマニュアルによれば従来型のレバー方式のクーラーも出るようですが、それはRyzen3やAPUで採用されるものと思われます。

まずはエンコード元は毎回使っている1440x1080、約48分のMPEG2-TSファイルを、個人的に一番よく使うエンコードソフトであるMediaCoderの、32ビット版と64ビット版の両方を使い、今まで通りのx264を使ったH.264/AVCへの変換のほか、今回からx265を使ったH.265/HEVCもデータを取ることにしました。MediaCoderは32・64ともバージョンは調査時点最新の0.8.48.5888。前に入っていたバージョンはアンインストールしたうえでこのバージョンをインストールし、基本デフォルト重視で、x264x265とも速度はMedium、ビットレートはABR、 1Passの4000Kbpsとしています。まぁVBRでもなんでも同じでしょうが、過去からこれでやっているので統一したほうがいいだろうと。エンコード終了時に出る数値をそのままデータとして採用し、以下に記載します。

まずはH.264/AVCから

i7 4770(Haswell)
32bit
1.3x 39.2fps 2297.2sec(38分17.2秒)
64bit
1.4X 41.3fps 2193.7sec(36分33.7秒)

i7 6700(Skylake)
32bit
1.6x 46.3fps 1943.3sec(32分23.3秒)
64bit
1.6x 48.4fps 1877.1sec(31分17.1秒)

R7 1700(Zen)
32bit
2.2x 67.0fps 1335.8sec(22分15.8秒)
64bit
2.2x 65.9fps 1354.0sec(22分39.9秒)

正直、わたしはRyzenを買うまで、Skylakeを非常に高速なCPUと考えていました。あのFX8350や8370を全面的に超えた速度を見せたHaswellをさらに1割以上も上回る圧倒的速度に、いくらZenが最新型と言ってもそれほど変わらない速度しか出ないのではないか?と思っていたのです。ところが、実際に試してみるとまさに「次元が違う」としかいいようがないRyzenの速度に開いた口がふさがりませんでした。ほぼ6700の2/3の時間でエンコードが終わってしまっているのです! Intel勢が64bitを使うと32bitより若干速く終わるのに対し、32bitの方が逆に速いと言ったところにCPUの違いが浮き出てはいますが、それ以前に基本部分がまるで違う・・・これがZenの8コア16スレッドの破壊力ですか。6700を買ったのはだいたい一年ほど前ですし、ぞの時点での価格も1700より安かったと思いますので、その分の差が出た、ということはできます。が、仮に最新であり、価格も近い7700Kをと6700と置き換えて定格クロックを引き上げたとしても、絶対にそれだけでは追いつかない性能差と断言できます。

続いてH.265/HEVCでの検証を

4770
32bit
0.3x 8.4fps 10583.4sec(2時間56分23.4秒)
64bit
0.6x 17.7fps 5023.0sec(1時間23分43.0秒)

6700
32bit
0.4 9.5fps 9297.4sec(2時間34分57.4秒)
64bit
0.7x 20.7fps 4306.8sec(1時間11分46.8秒)

1700
32bit
0.4x 11.8fps 7503.3sec(2時間5分3.3秒)
64bit
0.8x 21.3fps 4149.4sec(1時間9分9.4秒)

32bitはどれも非常に遅い速度しか出ていません。これはx265が64bitに最適化されているためと思われますので、参考程度にみてください。ZenはAVX2を間接的にしかサポートしていないため、AVX2を活用するx265では性能を発揮しづらい、という話は聞いていますが、実際に見てみるとx264と比べて1700と6700の差は小さいものとなっています。特に64bit版の差はかなり接近しているのは、それを裏付ける、と言っていいでしょう。


ここからはもう比較対象にする意味のないだろう4770を外し、エンコード元データを1920x1080、約30分のMPEG2-TSに変更したうえで両者の比較を行います。これは以前、IntelのCoreとAMDのFXをエンコードで比較する際に商業サイトで頑なに絶対条件として行われていた、「エンコードの際に縮小リサイズする」を検証条件に加えるためです。1440x1080→1280x720より、1920x1080→1280x720の方がリサイズの幅が大きくなり、よりリサイズの影響が出やすくなるからです。また、ソフトは引き続きMediaCoder、バージョンはx264は32bit、x265は64bitのみ使用しました。単純に時間だけでなく、リサイズなしとの速度差もみてください。

6700
H.264 リサイズなし
1.4x 41.9fps 1324.6fps(22分4.6秒)
1280x720リサイズ
1.8x 50.4fps 1032.2fps(17分12.2秒)
H.265 リサイズなし
0.7x 20.3fps 2693.3sec(44分53.3秒)
1280x720リサイズ
1.3x 37.4fps 1480.5sec(24分40.5秒)

1700
H.264 リサイズなし
2x 59.3fps 928.8sec(15分28.8秒)
1280x720リサイズ
2.2x 65.7fps 838.9sec(13分58.9秒)
H.265 リサイズなし
0.8x 22.7fps 2400.7sec(40分0.7秒)
1280x720リサイズ
1.1x 30.9fps 1768.8sec(29分28.8秒)

サイズを小さくリサイズすればエンコード時間は基本的に短くなります。それはIntelのCoreもAMDのRyzenも変わりはありませんが、H.264の場合6700と比べると1700のリサイズに伴う時間の短縮は大幅に少ないものになっています。それでも、元が圧倒的速度だけにリサイズ後だけを比較すればRyzen圧勝に変わりはありませんが、だいぶ差は縮んでいます。FXの時もこの傾向は出ましたが、Ryzenも引き続きリサイズはCore比ではありますが苦手なようです。H.265に至ってはそれがさらに顕著で、なんとリサイズすると6700にかなりの差をつけられて逆に敗北しています! 「AVX2苦手」x「縮小リサイズ苦手」の相乗効果がこの結果を生んでしまったと思われます。いや、まさか負けるとは思ってませんでしたが。従来のBulldozer系から刷新したZenを採用したRyzenではありますが、そのAMD特有のクセは良くも悪くもしっかり受け継いでいるようです。


MediaCoderからソフトを、おそらく市販ソフトでもっとも使われていると思われますTMPGEnc Video Mastering Works 6に変更し、引き続き同じテストを行います。x264とx265を使い、速度は"標準"を使用しました。

6700
264 1920x1080 31分48秒
264 1280x720 18分16秒
265 1920x1080 49分48秒
265 1280x720 23分42秒

1700
264 1920x1080 23分35秒
264 1280x720 18分30秒
265 1920x1080 44分57秒
265 1280x720 27分06秒

これはMediaCoder以上に縮小リサイズの苦手さが際立っていて、x264利用時ですら逆転現象が起こっています。あくまで爆速なのは264を使ったH.264/AVCのリサイズなしの場合のみ、となっていますね。
また、噂ですがRyzenはAVX2利用が苦手なため、AVX2を使用しないほうが速い、という話もありますのでこれも試しましょう。TMPGはそうした命令を個別に実行させないようにすることができるのも、今回これを利用した理由の一つです。AVX2を使わないx264は省略してx265のみ、リサイズも行い、かつ同じ条件で6700でもAVX2無効にして比較対象とします。

6700
1920 1時間03分54秒
1280 31分00秒

1700
1920 43分49秒
1280 25分28秒

大きな差とは言えませんが、実際にAVX2無効の時の方が速くなっていました。おそらくRyzenにおけるAVX2は他の実行ユニットを使った、互換性のためのエミュレート仕様で、使わなくてもソフトの実行ができるのならその分他の処理をさせた方が速くなる、ということなのでしょう。6700の方はAVX2を無効化すると大幅に速度ダウンしますから、Intel系におけるH.265/HEVC処理にはAVX2が深くかかわっていることがうかがえます。逆を言えば、RyzenはAVX2の改良次第ではH.265/HEVCに関しては大きく伸びる可能性がある、ということです。

さらについではありますが、来たるべきRyzen5に向け、コアを6コア/スレッドおよび4コア/8スレッドに落としたエンコード速度も見てみましょう。本当はSMTを無効化して4コア/4スレッドの性能も見てみたかったのですが、無効化の仕方がわからなかったので見送りました。比較用として6700のHTを無効化した4コア/4スレッドでも計測します。ソフトは再びMediaCoder、1920x1080x30分をリサイズなしのみで。

6700(HT無効)
1.1x 31.7fps 1750.4sec 29分10.4秒

1700
4コア
1.1x 31.9fps 1713.2sec 28分33.2秒
6コア
1.6x 48.0fps 1144.5sec 19分04.5秒

6コアまで落としても6700を上回ります。実際のRyzen5はクロックも上がるでしょうから、おそらく7700Kよりも上でしょう。4コアはHTなしの6700とがっぷり四つ。クロックが上がればi5 7600Kと同等くらいにはなるでしょうか。


かくして、Ryzen7 1700をi7 6700と比較した上でCPUの動画エンコード性能を見てきました。思ったより得意不得意があり、条件によってはIntelを下回ることもあります。性能はFXと比べて明らかに上がっていますが、仮にコア/スレッドを同一にしたとすると、まだIntelを超えていないのも確かなようです。もっとも、コアもSMTもパフォーマンスを上げるための手段にすぎません。我々としては買いやすい値段で重い処理が早く終わり、通常処理が快適に動けばそれでいいのです。Intelで同等のパフォーマンスを出すには、CPUはもちろんマザーボードも高価なものを使わなければならないのに対し、AMDのRyzenは手ごろな値段のマザーでも十分パフォーマンスを出すことができます。APUからCPUまで同じソケットにした方針の勝利でしょう。
H.265のリサイズ処理では確かに価格にして同等以下のCoreにも敗北します。ですが、現実問題としてH.265をフォーマットに採用するような人がリサイズ処理を常用するでしょうか? 実際商業サイトでもx265をエンコードテストのエンジンに利用するようになってからはリサイズは行わなくなっています(Ryzenをキッカケに再びリサイズを絶対条件にしてきたら笑いますが)。また、こうしたリサイズはひょっとしたらAMDが悪いのではなく、各ソフトの処理と合ってないだけかもしれません。TMPGにはx265以外にDivXのHEVCエンジンも搭載しており、こちらを使ったH.265/HEVC動画(コンテナはmkv)を作ることもできるのですが、試してみると

6700
1920 31分02秒
1280 19分25秒

1700
1920 22分17秒
1280 14分39秒

おおよそHEVCと思えないほど早く終わっていますがそれはおいといて。Ryzenでもリサイズによる速度のアップ効果が高く、Coreと比べてもそのパーセンテージは同等です。おそらくDivXは独自のフィルターを使ってリサイズしているのでしょう。つまり、ソフトの対応次第でRyzenのパフォーマンスは現行のまま、十分上がる可能性があるということです。Ryzenを買うにあたって不安な点があるとしたら、Zenの次世代が出たとき、AM4+のような上位互換の新ソケットでないと搭載できないものになること、でしょう。AVX2などに改良の余地はありますし、おそらく次世代はそこを弄ってくると思います。H.265を第一に考える人、近い将来フォーマットをH.265に完全乗り換えしたい人などは少し待ってもいいかもしれませんね。とはいえ、現行でまだまだもっとも使われるパターンであるH.264/AVCでリサイズなし、という条件での速さは本当に驚異的であり、現在IntelCPUを使っている人でも、Kabylakeはまだ出たばかりでもったいないですが、Skylakeユーザーなら検討の余地あり、Haswell以前なら間違いなく買い、です。AMDユーザーの場合はFXやいまだにPhenomを使っている人は乗り換えの甲斐はありますが、APUユーザーはZenのAPUが出るまで待つべきでしょうね。どちらかと言えばGPUの強化を待つべきでしょうから。
コメント (10)
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