村上春樹への酷評
大島商船高等専門学校の大久保健治講師は、講座のテーマに村上春樹文学を選んで私達に紹介した。
講義の内容は、春樹文学への賛辞にとれた。私は配布されたテキストの文字列の行間に先生の話された要点をみっちり書きこんでいた。テキストは持ち帰り執念深く電子辞書を傍らに読み返して反芻熟読した。気がついたことは、先生は彼の文学を賞賛したがアンチテーゼの態度に欠けていたことだった。
どこの書店の書棚を飾る特になんとかIQとい書物はベストセラーズであり海外では評判だったという。しかしわが国では彼ほどの大きな文学者が芥川賞候補に挙げられながら送られた理由は何だろうかという疑問がある。
そこで上野千鶴子、小倉千加子、富岡妙子などの女性評論家、さらには小谷野敦などが彼の人気の裏に次のように酷評をしていることも知った。
ノルウエイの森では、あのワタナベ君というものは気持ちが悪い。「やれやれ」と言いながら舌なめずりをしている。渡辺えみ子は「語りえぬ村上春樹の女性表象にはレスビアン少女の描き方だ」と酷評。小野敦にいたっては、美人ばかり 「喪失」だの「孤独」など そんなことはどうでもよい。美人ばかり、あるいは主人公の好みの女ばかりが出てきて、それも簡単に主人公と「寝て」くれて、しかも20代の間に「10人の女と寝た」などという。やった、どうして感情移入ができるのか春樹とその女性観に共感をもてない。私とて興味本位で彼の小説のさわりを読んだが性器の名称が、動きがあからさまに表現され気味悪い気もした。家庭像の崩壊願望さえ見え隠れする小説である。彼は自身の評価は世界がするものだ。狭い日本の評論家やるものではないとする思いあがった心の持ち主ではないかと推察する。
彼はナルシストだ。だから己の虚像にうぬぼれているのだ。
学校教師の父を持ち、同じく教師である母は大阪船場のいとはん。人も羨む阪神間の高級住宅地の西宮市夙川に住み、県立神戸高校から早稲田に進み、在学中にジャズ喫茶店(夜はバー)を開きながら作家をめざしたというサラブレット系のDNAをもつ。彼には挫折の経験がない。病苦、貧困に縁がなく順風満帆の文学界での生活、他人は彼の実像を評論する。
ジェンダー学者達の評論があながち的を外れたものとではないと思い出したのが受講から3日目の感想である。
2011.10.25