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禅 ZEN

2009-01-17 03:44:44 | 映画2009
 小浜饅頭もいいけど、やっぱり“すりこぎ饅頭”。今年は福井県がアツい!

 何度か行ったことのある永平寺。曹洞宗大本山といえば、石原裕次郎の墓もある総持寺も有名だけど、道元禅師によって開かれたこの永平寺。触ると料理が上手くなると言われる巨大なすりこぎがなぜか印象に残ってしまうのですが、道元という人物の詳細さえ知らなかった・・・

 時は乱世の鎌倉時代。比叡山の坊主ってのはヤクザなの?と、六波羅探題が何なのかも知らない日本史オンチなので、映し出される事象がなぜか目新しい史実に思えてしまう。薙刀を持ってるところを見ると、さては弁慶の末裔だな・・・と、すでに無知の極みで頭の中で勝手に悟りを開いてしまいました。異教という理由で賛同者が増える道元(中村勘太郎)は迫害を受け続け、やがては山の寺を焼き払われ、波多野義重(勝村政信)の助けで越前国志比庄へと移り住むことになったのです。

 原作者・大谷哲夫氏の解説によると、750年前の乱世は現代に通ずるものがあるという。相次ぐ戦争と貧困。町の様子も腐敗した世相が反映され、行き倒れの人々が犬に食われている。極めつけは北条時頼(藤原竜也)が戦で殺めた人の怨霊に悩まされるシーンで、生首が海岸に並べられているカットは夢にも現れてくるんじゃないかと思うほどショッキング。

 空海、最澄、親鸞などの仏教者とは違い、世俗や戦乱から隔絶した孤高の人、道元。仏は人がみな心の中に持っているもので、死んでから仏になるのはおかしいと疑問を持ったことから始まり、“只管打坐(しかんたざ)”の精神を貫き、ひたすら座ることを主張するに至る。「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」と日本の四季を良きも悪きそのまま受け入れる自然体から悟りが開けるのだ。

 中国パートもなかなか良くて、出会った老典座(笹野高史)と道元の中国語でのやりとりも印象に残る。そして、遊女おりんを演じる内田有紀やその夫でる哀川翔もいい演技を見せてくれるのです。残念なのは弟子の一人高良健吾だけ。

 地味だけど、とてもよく練り込んである映画なのですが、、言葉が難解だったりもするので、ちょっとは予習していったほうがいいかもしれません。単なる伝記ものかと思っていたけど、意外にも溶け込んでくる心象世界。日本人のDNAに潜んでいる仏教の心を揺さぶられたためかもしれない・・・

★★★★・

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5 コメント

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 (シネマ大好き娘)
2009-01-17 05:53:01
こっちにきてないよ~~

今日は007ミルデ~~~
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今年の開幕作品として鑑賞しました (PGM21)
2009-01-18 13:24:11
何時もお世話になっております。

今年の開幕作品に選びましたが、時代を作り、今の仏教の礎となる日本曹洞宗などが広まったのがこの時代ですからね。
宗教は詳しくありませんでしたが、あの絶望の時代において人々が救いを求めたのが仏だったという事を描けたのは良かったと思います。
この映画に撮影協力した何時もお世話になっているブロガーさまではその撮影秘話が綴られていたので曹洞宗に携わる方々にはこの日の公開が違った意味で迎えたようです。
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道元 (turtoone)
2009-01-18 17:39:59
私は期待が高かっただけに掠りました。

曹洞宗は600万を越える檀家を持つ、単立仏教系では最高の檀家数(仏教系新宗教は除く)を誇る仏教組織ですが(真言、天台などは多数分派していますので・・・)
すべての檀家がそんなに道元の生涯を詳しい訳ではなく、この作品のための下地が薄かったと思います。

それと、勘太郎の主役は「日蓮」とか「道鏡」のように何か力強さを感じる僧侶ではないので間違っていないと思いますが、脇の僧侶にもう少しビッグネームを持ってくるべきだったと思います。

またクライアント色が出すぎたののも残念。僧侶の托鉢シーンは粋な計らいをしている一方で、とってつけたの様な執権時頼との絡みも、関係者の意図が出すぎてしまいました。

おりんの心の変化や、典座の深い意味合いをもっと訴求した方が作品としてメリハリが出来たのだと思います。

そういえば、永平寺はkossyさまのお近くでしたよね。
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悟り (たいむ)
2009-01-19 21:52:22
kossyさん、こんにちは。
こういうのは裏話を知らない方が、素直に心揺さぶられますよね。・・というか、雑念を入れたくない感じ(笑)

私も思いのほか沁み入ってしまった作品でした。
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永平寺 (kossy)
2009-01-25 10:44:40
>シネマ大好き娘様
多分、日本全国托鉢中だと思いますので、修行僧を見かけたらお布施を・・・そしたら招待券をもらえるかと思います。

>PGM21様
今まで曹洞宗とは縁が薄かった俺ですが、この映画を観て宗教を決めました!とは言いつつ、家では誰も亡くなってなくて・・・
国の政策でもなく、自然発生的に信者が増えていく様子も納得ですよね。もっと予算があれば、臨場感ある乱世を表現できたのかもしれませんね。
天真和尚のブログ記事も読ませていただきました。大変参考になりましたぁ。

>turtoone様
そうだったのですか!
一番は浄土真宗だと思ってたほど俺は宗教について無知でした・・・
人物像に関してはこれも無知だったためすべて新鮮に映りましたよ。死んでから極楽に行っても意味がないというところだけでも感動的だったし。

永平寺は車を飛ばしても2時間かかります。でもドライブコースにぴったりくる場所なんです。遠方から訪ねてくる友人で、金沢巡りを遠慮する人にはつい連れていく・・・といったところ。
宗教に疎い者ほど感銘を受ける映画だったのかもしれませんね。

>たいむ様
いつも雑念だらけのkossyなので、一度坐禅を経験したほうがいいのかもしれません。教えのひとつひとつが心に沁み入る、いい話。もっと聴きたくなりますよね。
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