原題:THE WHITE RIBBON (英題) (G)
2009年・ドイツ/オーストリア/フランス/イタリア(145分)
製作総指揮:ミヒャエル・カッツ
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
脚本協力:ジャン=クロード・カリエール
出演:ウルリッヒ・トゥクール、ブルクハルト・クラウスナー、ヨーゼフ・ビアビヒラー、
ライナー・ボック、スザンヌ・ロタール、ブランコ・サマロフスキー ほか
鑑賞日:2010年12月22日 (銀座)
鑑賞前の期待度:★★★★
先週、クリスマス前に心がしんしんと冷えていく作品を観てしまいました。
モノクロで、BGMもなく、静かで、
しかも145分と尺の長い作品。
(本編上映前の予告を加えると160分。)
話が進むに連れ、
陰鬱で、抑圧された空気感に息が詰まりそうになりながらも、
観終わるまで、終始スクリーンに釘付けでした。
時は、1913年。第1次世界大戦前夜。
舞台は、北ドイツの小さな村。
村医者の落馬をきっかけに、
転落死、火事、荒らされる畑、子供の失踪・・・と、次々に起きる事件。
しかし、
原因の解明も犯人の逮捕もないまま、
偽りの平穏な時が淡々と流れていく。
ただ、
出口のない抑圧された負のエネルギーは、暗い情念となって、
強者から弱者へと向かう。
そして、子供たちの心底には、憎しみが澱のように溜まっていく。
この閉塞的で抑圧された村社会で育った子供たちが、
やがて大人となった時、どんな社会を作っていくのか?
作品の中では語られないが、
歴史が出した答えは、
第1次世界大戦を経た後のナチスの台頭。
男爵家の納屋を燃やした紅蓮の炎は、
やがてヨーロッパ全土を燃やす炎へと変貌していくことになると思うと・・・。
いやはや、ミヒャエル・ハネケ監督、恐るべし。
そして、なによりも怖ろしいのは、
捌け口のないひどく抑圧された空気感は、
日本にも漂っている気がしてならないこと。
もしかすると、また歴史は繰り返してしまうのだろうか・・・。
観終わって、あれこれと考え、
そして、もう一度観たくなる作品でした。
モノクロの陰影の美しさ度:★★★★★★★★
心に刺さる怖さ度:★★★★★★★★★★★★★★★★
湖に隠された謎:★★★★★★★★★★★★
鑑賞後の総合評価:★★★★
この作品、そんなに人気があると思っていなかったのですが、
どうしてどうして、館内は満席でした。