Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】Last Kitten Heart friends 第61話

2020年07月22日 06時07分32秒 | 小説(きとぅん・はーと情報)
vol.61『誰かを想って、眠れない夜』

「もし、可能性が高いのは……北地区」
 本当に北地区にいるとしたら、早く連れ戻さないと夏実ちゃんが危ない!
 北地区と言えば、極寒の銀世界。あんな軽装で北地区に行ってしまったら、凍死してしまう。
「留恵ちゃん、どうやって連れ帰すの?」
 不安そうにナナが聞く。
「キャパの超能力で飛んでいったから、キャパで連れ帰さないと……」
 数匹いるキャパの方を見た。抱き上げていたキャパも私の腕から離れて混ざり合った。
「ねえ、夏実ちゃんの場所を掴める?」
 キャパたちは、なにやら相談のような仕草を始めるが、厳しい表情を見せる。
「そうだよね……。遠いから見つけ出すのに時間が掛かるか……」
 そばにあったソファに倒れるように腰を下ろして、天井を見上げた。
「どう考えてもキャパに頼るしかない。ここから北地区に行ったら、頑張っても三日はかかる。その間に凍死は確実……」
 しかし、キャパたちには活気があった。
「そう、なんとか探せそう? お願いね」
 今日は動き回って疲れた。
「もう遅いから、寝よう……」
 みんなにはそう伝え、自室へ吸い込まれていった。

 ベッドの上に転がり込んで、どれくらい時間が経ったのだろう……。一時間以上は使っているはず。眠くて目蓋も重いのに、なかなか寝付けない。
 こうしている間にも、夏実の体力が奪われているのだろう。
 もっと、しっかりとした作戦と立てていれば、こうはならなかった。
 施設から脱出して、夏実を悪党から引き離したが、こういうことに巻き込みたくなかった。
 そして、一緒になのかも飛ばされたはず。
 なにか奇跡が起きて、なのかが助けてくれたらいいけど。
 そうなれば、なのかには感謝しかない。
 私は、すごくなのかに対して、悪いことをしてきたかもしれない。
「私さえ、ちゃんとしていれば……」
 夏実でもなく、なのかでもなく、私が凍死すれば良かったんだと思う。

「おはよ……」
 頭が重く、足枷のように眠気がつきまとい、体が思うように動かせない。
「大丈夫? かなり眠そうだけど」
「うん……。大丈夫よ」
 由樹と陽介が、あきらかに疑いの目で私を見つめる。
 朝食を食べて少しは眠気が収まり、外の光を浴びてようやく落ち着いてきた。
「でも、なのかはどうやって助けるの?」
「……それなんだよね」
 由樹の余計な一言のせいで、眠気が再び訪ねてきた。
 夏実は、なにかの生き物と入れ替えで戻せるけど、なのかは当該キャパに触れていないから連れ戻せない。この問題を考えて、思いつかないまま寝落ちした気がした。
 夏実が入れ替えの瞬間、なのかを掴んでいれば一緒につれて帰れるのかと考えていたが、これはできないとキャパからも聞いている。それができるのであれば、中央地区の時にやっていた。第一に夏実にモバイルフォンを持たせていないから、連絡しようもないし、タイミングも掴めない。
「泣かれること覚悟で、正直に言おう。なのかは助けられなかったと……」

「キャパが夏実ちゃんを見つけたって!」
 夕方まで掛かってしまったが、ようやく見つけられた。まわりは歓喜していたが、どうも私は喜べなかった。
「留恵ちゃん、いい? 入れ替えてもらうよ」
「そうね。そうして」
 キャパの能力が発動した瞬間、身代わりの生物が雪を被った夏実と入れ替わった。
 その姿を見た瞬間、申し訳なさで涙が出そうだったが、我慢してこらえた。
 そして、体が冷えていそうな夏実に近寄った。
「……ごめん。なのか……なんだけどね……」
 また、夏実が泣くと思って、恐る恐る覗き込んだ。
「あのね。なのか……」
 なにかを言いかけたかと思ったら、急に泣き出してしまった。
 怖がらせないように、手を出したが、振り払われしまった。
 そして、自分の部屋に逃げて行ってしまった。
「予想通りの反応だって分かっていても、ショックだね……」
 こらえていたはずの涙が、一気に溢れ出した。


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※56話から全文掲載することにいたしました。1話から読みたい人はこちらへ。

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