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さすらい少女2004夏 3

2021-07-30 07:00:23 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-3-


 ゴトゴト発車してから思ったよ。人間どうしのさり気無い触れ合いってのは、なぁーんて気持ちが良いのだろ~♪って、えへへ。人間どうし、見ず知らずの他人どうし、見ず知らずだからこそ、一瞬にして相手どうし気分良く気持ちを通わせることができるのかいな?でも、それが少しでも人間関係、長くなり、相手の性格やら知るよーになっちゃうと、壊れるんだよ。相手の嫌なとことか知っちゃったりして、つい心の中で難癖つけちゃったりして素直になれないっていうか、どうしてかなぁ、人は、人を批判せずには生きられないのかなぁ。影で悪く言うの楽しいもんね。関係、濃くなると、すぐにそーなるね。だからメール来てるかとか掲示板で評判落ちて無いかとか気になるんだね。そう思うと、一瞬の見ず知らずの他人との触れ合いってすんごく大切なことだったりして。仲良くなったり付き合いが長くなると、どうしても相手に対して疑いの心が首、もたげるんだよね。だから不安なの?じゃ、疑いの心が首をもたげる前に別れちゃえばいっかぁ~、なぁんて訳にもいかないし、あー人間関係かぁ。

 などと私は普段、考えたことも無い事を考えながら、そういう自分を何だか健気だなんて、ちらっと思いながら、各駅停車の奈良ゆきでゴトゴト揺れて、ビックリするほど綺麗な夕暮れの山々を窓から見つめつつ、実は、とーっても、い~い気持ちなんだよ、これがねぇ。電車は、ずっと川沿いに走ってるのよ、なんちゅー素晴らしい景色だろぅ、こんなの海外旅行でも行かなきゃ味わえないと思い込んでいた自分がショック!思えば日本を旅するほうが、ずっと自由かもしんないね。外国だと、やれパスポートだ、どこが危険だ、言葉通じないし、文化違うし、思えば不自由だ。げ、何で気づかないかね、そんな簡単なこと。

 お?川で泳いでる人たちが見えるよ。つい私は窓から頭と両腕を突き出して、清々しい空気を思いっきり吸い込んだ。ふぁー涼しいーいい気持ちー!ちらっと柳生の里って書いてある看板が見えたよ、忍者の里だったの!驚くべきさすらい一人旅、へーん、キャプテン、君は結局、1人じゃ旅に出られなかったんじゃないのー?本当は淋しがり屋さん?うふふ。

 とかなんとかやってるうちに、あっと言う間に奈良に着いたよ。駅を出ると、ふぁ~暑い暑いまだ暑い、でもまだまだ、さっきの川の空気の清涼感が私の身体にたんまし詰まってるもんねー。なんのなんの。それより、駅から、ずっとそうだったけどさ、なんちゅー人の多さよ!まだ明るいし、さすがに夏休みだ、夜はこれからってかな?

 でもねー、私も繊細で心清らかな乙女じゃん?さっきまでの人っ子1人いないピカピカ田んぼ世界から、電車降りるといきなりこれだもんなー。ちょっとね、気分が暗くなって落ち込んでるのを感じるんだよ、実際。何でだろう?やっぱメールで連絡したりできないし孤立無援のさすらい旅のせいかな。ここには味方になってくれるダチも親もケータイも無いんだ。でも、その代わり自由だから全部、自分で判断して決めて何とか気合で乗り切ればいいのだー!できるわよ!私なら、絶対!え?変に自信がついてきたのは何故?うふふ、独りぼっちのさすらいの旅が自分に、そこらの下々の雑踏のつるんでる皆様より、どーんと優越感を与えてくれてるんだよ、私は偉い!自分で決めて生きてるんだぞってね!しかし、さすがにさすらいの一人旅とはいえ1日目だわな。私って、かなり単純?っつーか、軽いんじゃ?うぅ、ちょいと考えるの置いておこうっと!

 さて、どうしよう。よし決めたわ。そこに案内所って書いてあるから窓口のお姉さんに今宵の宿を探してもらおう、そうしましょうそうしましょう。でも、こういうのも初めてなんだなぁ。案内所ってそういう事してくれるのかなぁって考えてると不安になってきて、ちょっとへっぴり腰してしまいそうなので頭カラッポにして顔をニカッとさっきの駅員さんモードで「今晩泊まれるトコありますかー!」って元気印で聞いてみたら、チョー事務的に値段も手頃の「えんらく旅館」というトコを紹介してくれたよ。プロだね、この人。微笑が、欲しいトコだねぇ~なぁんて贅沢言ってらんないっつぅーの。お姉さん、あんがと、と明るく礼を言って、さっそく教えてくれた通り、まず、さっきの三条通りに戻ったよ。

 うげぇ、やっぱ人がスゲー多いし、この車どもが強引に人ごみに割り込んで来る厚かましさは何?東京と違うね。それと、良く見ると何だかガラの悪い人が多いような気がするよー。嫌だ嫌だ。こんなとこで襲われたら絶体絶命だ。そーろそろと目立たぬように旅館を目指した私なのでした。でも何故か、夜の渋谷なんかとは全然違うスリルがあってちょっとワクワクしちゃう自分が笑えるわ。あはは。

 てな訳で無事に紹介された旅館に着きまして、ガラッと大きなガラス戸を開けると、今にも倒れそうな感じのお爺さんが“いらっしゃい、お待ちしてました”とロビーで待ち構えていてビックリ。完璧じゃん。案内所が凄いのか、この旅館が凄いのか、とにかく偉い!連絡がバシっと行き届いて、バシッと旅館がプロフェッショナルなのだー!お爺さんは私に丁寧にお辞儀をすると先払いですと言うので、げ?ぼったくりじゃ?って思ったけど、まさかね、で、記帳して、部屋に案内してくれたよ。色々、お風呂のこととか説明してくれて最後にニカッて笑って去って行ったんだけど、その時のお爺さんのニカッの笑顔が、スンゲー可愛いの!今日は例の駅員さんといい、ここのお爺さんといい、ニカッの一瞬のふれあいでハッピー2個ゲットしたよ。こりゃ幸先よさそーだわ。うふふふふ。胸が何だか、ジンときちゃった。あら、涙が少し流れてんの。変な私、やっぱさすらいの一人旅は小さな事にも感動をもたらすもんなのかねぇ。倍増されんのかな?ひょっとして私、淋しいのかなぁ、だから人の優しさにすぐに胸ジンジンしてまうのかな?

 まいっか。取り合えず、部屋でゆっくりだ。ふぅ~、お、冷たい麦茶ね。ゴクゴク。おいしー!って急に宿が確保できて安心したせいか、まったり眠くなってきたけど、おっと、夕食まだじゃん。そーいえば、さっきお爺さんがもう夕食は終わったから外で食べてくださいってなこと言ってたわ。うーん、すっかり尻が畳にくっついちゃって引き剥がすのに気合がいるけど、えいっ!と私はガッツで立ちあがり、もう1度麦茶をゴクゴク飲んで、勢いつけて外出したよ。

 で、さー、外に出るとき、向かいの部屋から赤いシャツ着たチョーイケテル感じの男の子がばったり出てきて私を見て、ハッとしたように白い歯出して笑ったようで、それも又、ニカッと凄く感じの良い笑いなもんで、ポッ、何だか私、ドキドキしちゃって、結局、近所のマックでビッグマック食べて、又、帰った時に会えるかなぁ~なんて乙女心を弾ませてたんだけど、いなかったよ。旅のアバンチュールってんだっけ?恋の予感?えへへ、ちょっとおいおい私は、かなり軽薄になっていやしませんか!と。だめだめ私はさすらいの一人旅、そんな男探してうろついてるわけじゃないんだ。キャプテンに怒られるぞ。私はキャプテンが時計を捨てたように、ケータイと掲示板やらをポ~ンって捨てて自己解放してスッキリするために旅してるんじゃなかったっけ?プチだけどね、プチ。

 去れ!気になってしょうがないストレスよ!ってなとこか。生命力充填、いつもメールを気にして書き込みを気にしてウイルス気にして若い身空で神経精神ボロボロで、イライライライラ不安でしょうがなくて、そのうちすぐキレる凶暴な少女になっちゃう前に、それらを捨ててみて、そんなものいらなくても大丈夫だよって不安から解放されるための再生の旅!なーんちゃってカッコいーン!とにかく、さすらいの旅して年がら年中の繋がり普通状態から溜まったドロドロを溜まる前の状態にリセットしてリフレッシュね。そんなとこだ。

 考えてるうちに自分でも混乱してきて良くわかんなくなってきて説明できないけど、そーいう時はお風呂に入って寝てしまおう!明日は旅の2日目だ、もっともっとメールや掲示板の呪縛に負けないようなたくましい私にきっとなっていくんだ!ほら、もう、けっこうメールも掲示板も気にして無いじゃん、げ!けっこう今、気づいて驚いた。こりゃ、いけるかもねぇ。ああ、しかし、さっきのイケテル男の子、また思い出しちゃって、何だかもぞもぞ、やだ性欲を少しおぼえてるわ。きっとテンション上がって、こっちの方が解放されてきちゃったのね。やれやれ、あぶねーや、こんなとこで、注意注意赤信号だぞ。頭に気合入れて気を引き締めよう。

 ふあーさすがに今日は色々ドキドキしたせいか身体が眠りを猛烈に欲してるみたいだぁ、さてお風呂入って寝ようっと!
 





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