元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

「雨族」 断片22-焼却場Ⅵ~F・クラウネン③

2008-01-29 01:07:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
     断片22-焼却場Ⅵ~F・クラウネン③


僕は今し方、抱いた針の先ほどの好感を撤回し、唯一の肉親を撃ち殺し客観的で不敵な笑いを浮かべる、その神経に驚愕し嫌悪した。

こいつは蛇だ。

地の底の悪鬼に魅入られた蛇だ。

僕は、まじまじと蛇男F・クラウネンを観察した。いったい、どういう奴なのだ?

年齢不詳。

彼はD・クラウネンの双子の弟なのだから確実に三十三歳であるに違いないのだが彼から年齢を読み取るのはクラゲの年令を読み取る様なものなのだ。

彼の着ているメタリックなぴったりとしたブルーのスーツがまた訳のわからない異界的なスクランブルな印象を与えていた。

どうして僕は、この男の相棒にならなければならないのだろう。

できたら、それは避けたい。とても避けたい。

僕は視線をずらし、窓から細かい雨に打たれて小さく震える灰色の風景を眺めてから、落合さんに笑いかけた。

落合さんも優しく笑った。

そして小さな声で僕に言った。

「{えふ}ぼっちゃまの言うことは、気になされないように。{えふ}ぼっちゃまは、とても変わっていますから。{えふ}ぼっちゃまは自分の事をデウス・アブスコンディタスだと言っておるんです。そういう風に理解すれば良いのですよ」

デウス・アブスコンディタス。

神は愛を怒りの中に隠して表現する。

こいつは神か!

「それに{えふ}ぼっちゃまは三年間イスラエルの死海で一人で過ごしておりまして、ついこの間帰ってきたばかりなのです。まだ日本人社会の人間関係に馴染めないのです」

死海?

僕は、これ以上の混乱を避けたいので、とりあえず彼の性格をこう規定する事にした。

デタラメ。

彼は無神経で冷酷でデタラメなのだ。

とりあえず、そう思っておく事にした。

その方が彼を、デウス・アブスコンディタス的性格と考えるより、ずっと理解しやすい。

生後、すぐに政府のラボに隔離されたり、三年間、死海で過ごしたり、双子の兄を撃ち殺したりした謎が明らかにされていけば、それはまた変わってくるかもしれない。

僕はさっきから彼を完璧に嫌悪しながらも妙な魅力を感じていた。

ひょっとしたら彼は冷酷な運命の力によって、僕には想像もつかないような精神構造を形成してしまったのかもしれない。

でも、今はデタラメなんだ、と考えよう。

精神異常者だとだけは考えたくなかった。

F・クラウネン。デタラメな男。

彼はいつもデタラメな行動をして人を驚かす。

デタラメの為に死海で三年間一人で過ごし、デタラメの為に兄貴を撃ち殺した。

デタラメという目的のために。メチャクチャだ。

僕だって、デタラメなんだ。

皆、メチャクチャでデタラメで何もわからず、そうして、ある日突然、死んでいってしまうんだ。





断片22     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)


「キートン妄想」:kipple

2008-01-20 00:39:00 | kipple小説

     「キートン妄想」


真夜中のキートンを通して、世界が見える・・・

“お前はオギャーと生まれ出でて、ナビゲーター号に乗っている!ナビゲーター号は、もちろん、お前の人生だぁ!お前は、ナビゲーター号の操り方なんて何にも知らねぇ!全然だぁ!しかし!動かさなきゃならねぇ!お前の人生と言うナビゲーター号をなぁ!ナビゲーター号は誰もナビゲートしてくれやしねぇ!ナビゲート号をナビゲートするのはお前だぁー!お前以外にいねぇんだぁ!お前の人生をナビゲートするのは、お前しかいねぇ!さぁ!どうする!お前は何も分からねぇまま、この世界に放り出されたぁ!愛する女は幻だぁ!気休めだぁ!分かったかあ?ナビゲーター号には、お前しかいねぇんだぁ!お前が!ナビゲーターなんだぁ!だから、何のナビゲーターかってぇ?え?ええっ!?まだ分からねぇのかぁ!お前は!お前のナビゲーターだぁ!お前は、お前の人生のナビゲーターだぁ!他にはいねぇ!お前が決めるんだぁぁああ~っ!お前の人生を!お前がナビゲートするんだぁあああ~っ!お前の人生を決めるのは、お前以外にいない!お前の人生と言う巨大な幽霊船ナビゲーター号のナビゲーターは、お前しかいねぇんだぁぁあああ~っ!さぁ全てを決めるんだぁー!行け!そして、やれ!何にも分かんねぇまんま、手さぐりで!さぁ!人生号出航~!ヨーソロ~!”

・・・そして、人生のある一日。

真っ昼間!あっしは新宿東口を出て、いつものように歌舞伎町をブラブラだぁ~!

んが!何だぁ!違うぞ!何かが違うぞぉぉお~!

っと感じるやいなや!突然!


そこらのオバチャンや、オッサンや、ネェちゃんや、ニイちゃんや、ジジババ、女子中高生、ガキんちょだの、よ~するに道行く全ての人びとが!猛スピードの猛牛走りで!
あっしに向かって突進して来やがったぁ!


あっちからも!そっちからも!こっちからも!怒涛の勢いで迫ってくるぅぅう~!

いったい何千人いやがるんだぁ!牛人間の群れだ!いや、鬼の顔した牛人間どもだぁ!
だっ!考えてる暇なんかねぇっ!

あっしは、もちろん速攻ダッシュだ!ダァァ~~~ーッシュ!

怖ぇ~よー!猛スピードで逃げざるをえねぇよぉ!走るんだ!光より速く!脱兎だ!まさに脱兎!光速ダットの速さで駆けるんだぁ!

光速ダットで死にもの狂いで駆けながら、一瞬、チラッと振り返って見ると!増えてやがらぁ!何千人なんてもんじゃねぇ!すでに数万人規模の老若男女が、凄まじき鬼牛の形相で、あっし目がけて爆走してくらぁ!


あっしが西口に向かって高架線下から激走し、高層ビル群に近づいた頃!すでに、背後に数十万規模の鬼牛大群激走!迫り来る気配を感じたぜぇ!地響きがするんだぁ!

振り向いちゃいけねぇ!すぐ後ろに鬼牛面した数十万人が迫ってんだ!いや、すでに数百万人を感じる!振り向いた時!その一瞬の間に、あっしは鬼牛づらの数百万人の群れに呑み込まれちまう!あっしは一瞬にして灰塵に帰すだろう!

振り向くな!考えるな!兎に角!ひたすら全力で逃げるんだぁぁああ~っ!

ズダダダダダダダダダダーシュ!
ズドドドドドドドドドドドドドドォォォオオッー!

おっと!気づけば高層ビルどもの谷間だ!

気を抜くな!死んでも逃げろ!諦めちゃいけねぇ!ダーシュ!

ん?風景が雨に濡れたように歪んだ気が・・・


あ!っと思った次の瞬間!都庁も含め全ての高層ビルどもが、あっしの脳天めがけてブッ倒れてきやがったぁ!


ズズ~ン!ド~ン!ドンガラド~ン!ズズズゥゥウウィィィ~ンッ!


ズドドドドドドドォォォォォオ~~ォン!

と!鼓膜がつんざけるような轟音をたてて、全ての高層ビルどもが、あっし目がけて倒れてきやがったんだぁ!

だがよぉ、ちょうどあっしの脳天から身体全体がギリギリでスッポリ入る小さな窓が何故だか一つだけ、どの高層ビルどもも開いていやがってよぉっ!

全ての高層ビルどもが、幾重にも重なって倒壊してきた時に、あっしの身体がギリギリ抜ける小さな窓が、全てのビルで、たまたま開いていたがため!スポ!スポ!スポ!スポ!スポ!と幾重も窓を通りぬけ、助かり!あっしを追いかけていた鬼牛の老若男女数百万人は倒れてきた高層ビル群の直撃をくらい、又、倒壊したビルから飛んできた瓦礫を喰らい!全員即死!あっしだけ無傷!

コンクリ埃煙もうもう立ち込める中、頭は潰れ脳みそグチャグチャ手足はバラバラに飛び千切れ、内臓グニョグニョ飛び散らかし、辺り一帯色とりどりのチギレ肉片が埋め尽くし、都会の珊瑚礁出現だ!

一人、全ての高層ビルに開いてた小さなたった一つの窓のおかげで生き残り、
“いやぁ~!絶景かな~!絶景かな~!”
と、すでにかつて、それが何であったか定かではない数百万人分の赤いチギレ肉の珊瑚礁海を、
“綺麗だなぁ~♪”
なぁんて余裕ぶっこいて悦に入ってる暇もなく!気づけば足元は血の海だ!

真っ赤な真っ赤な血の海だぁ!血の水位はみるみるうちに、あっしの身長を越え、ぶげぇっ!げぼぉっ!

あっぷぅ!あぷぅ!ぬるぬるした赤い海に、あっしは沈んでくぅ~!ぅぅう溺れるぅぅぅ!せっかく助かったのによぉ!

ああ、もうダメだ・・・このレッドバレー西口高層ビル群流血のサルガッソ~キートン・魔のトライアングル海域にて、いよいよ、あっしは溺死かあ?♪!

と!観念し、真っ赤な新宿西口血の深海のモクズとなるもよしかぁ!ヌルヌルズブズブヌルズブヌルズブ・・・と、深く深く沈んでゆくと!

突然!グイッ!と両脇に何か固い感触だぁ!

ズザザザザザザ~!っと鉄製クレーンでサルベージだぁ!

って、引き揚げられて、またもや助かっちまったんで、気を取り直し!えいっ!っと、飯田橋の帯屋のキャサリンに渋谷の「闇の店」で売ってると、今時のヤングに話題の人肉入り中国製中華まんじゅうをプレゼントしよう~♪

キャサリンは、それであっしのモノだぁ~♪

とぉっ!原宿側から渋谷駅に向って降りてくと、アレ?

あっしの前を、バスター・キートンが歩いてるぜぇぇええっ!

んでよぉ!すぐさま、あっしは探偵になり、キートンを尾行だァ!生きていたかァ!キートン!アンタが死ぬわきゃねぇかぁ!こうなりゃ何処までも何処までも尾行してアンタの心臓抜いてやる!アンタの秘密を暴いたるぅぅうううっ!

人肌一枚
(注:人肌一枚とは、人の皮一枚より仄かに遙かに薄く儚げで色っぽい感じの微粒子単位極小距離空間を表すキップル造語だ)

あっしの尾行は完璧なんだぁぁああああ~っ!

ピッタリと相手の後ろに人肌一枚の空隙を開けてつけるんだ!

絶対に気付かれねぇ!キートンの背後、人肌一枚離れてピッタリつけてるあっしには、絶対に!気付かねぇんだぁ!


物理的には完璧に離れているのだが、限りなく密着している!


これぞ人肌一枚尾行術!


「探偵学入門」秘伝・その5を凌ぐ「キップルの探偵学入門」秘伝・その500000-「影より近くピッタリと微粒子単位の間隔で尾行せよ・・・」

キートンが上向きゃ人肌一枚の背後であっしも上を向く!下向きゃ人肌一枚の背後で下!右!人肌一枚の背後で右!左!人肌一枚の背後で左!
キートンが走れば、あっしはキートンの背後に人肌一枚の間隔で、ピッタリくっついて走るぜぇ!

んで、渋谷駅でキートンがケータイかざして改札抜けりゃ、人肌一枚の背後にピッタリついてるあっしにはキートンも誰も気づかないので、そのまま無賃乗車だぁ!

どこだぁ?何処へ向かってんだ?キートン!

あっしは、こうして、つり革につかまってるアンタのピッタリ背後、人肌一枚の間隔で絶対にバレない完璧な尾行をしてる!あっしは完璧な名探偵だからだ!

キートン!あっしは絶対にアンタの秘密を突き止めてやる!何故?何故だ?何故、アンタ、キートンは、あっしの全細胞を犯すんだぁ?


ここんとこ、毎晩、真夜中になると、あっしはキートンまみれで、ついに、朝から晩まで、この世の全てがキートン・ワールドに見えるようになっちまったんだよ!何故だ!何故だ!何故だ!何故なんだぁぁあああ~っ!


何故だ?キートン!何故、アンタは、あっしの頭をキートンにするんだぁあ?その余りにも強力なキートン妄想感染力は何なんだぁぁあああ~!


つ・突き止めてやる・・・絶対にだ!・・・キートン・・・アンタの真実を・・・だいたい何故まだ生きてる?もう21世紀なんだぜ、何処まで謎めいてりゃ気がすむんだぁ?


一度でいい、笑顔が見てぇ!あっしの目の前で笑ってみせてくれぇ!


そして・・・キートンは京王井の頭線の井の頭公園駅で降り、人肌一枚ピッタリ背後について、あっしも降り、そのまま三鷹台方面の商店街を人肌一枚ピッタリ尾行し、抜け、あれ?ああ、もう日が暮れてらぁ乾物屋の裸電球がヤケに眩しいや・・・あ、キャサリンに人肉入り中国製中華まんじゅうを買うのを忘れたなぁ・・・おっと人肌一枚!尾行!尾行!


へへっ!あっしが人肌一枚ピッタリ背後に尾行している事には、さすがのキートンも気がついてねぇ!ふふふ!けけけけけ~だぁっ!

あれ?キートン、木造アパートに入ったぞ!ピッタリ人肌一枚背後で尾行!

カツ!カツ!カツッ!と鉄製の錆びた階段を上がり二階の奥の突き当たりだ!

205号室、別名「音楽室5号」・・・記憶の彼方の何処かで、そんな名前が浮んだ・・・

そして、あっしが背後に人肌一枚の距離でピッタリとくっついてると、キートンがチャチな金色の鍵で薄い木の扉を開けた。

あっしはついにアジトを見つけたと、ピッタリ背後でニヤニヤしていた。

キートンは部屋に入り、裸電球に付けてある紐を引いて電気を付けた。


あっしもピッタリ人肌一枚の隙間で尾行を継続、キートンが電気を付ける手の背後にもピッタリ人肌一枚、あっしの手が付いているんだ。この六畳くらいの密室でも気付かれないぜぇ!あっしの尾行は完璧サァ~!


で、キートンが電気を付けると電球が金色に激しく輝いて、あっしは何だかとても眩しくて、思わず小さく“あっ”と言って目をつむっちまって、ゲ!・・・バレちまったか?!(☆o☆)

と、思い、眩しい金色の電球の激光の中で涙混じりに薄く目を開けると、あっしの真っ正面に鏡があった。

か・鏡だ・・・あれ?あっしが映ってるよ・・・あっしだ・・・まごうことなく、あっしだぁぁあああぁあ!

そうなんです!そこにハッキリ映っていたのは!

バスター・キートン本人でありました!

あは!あはは!なぁんだ、あっしがバスター・キートンだったのかぁ~!わざわざ尾行して損したぁ!


そうなんです!あっしがバスター・キートンだったのです!


明日は忘れずに飯田橋のキャサリンのために、渋谷の「闇の店」で人肉入り中国製中華まんじゅうを買ってリボンを付けてもらって、ちゃんとプレゼントするのであります!




                  


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)