ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代
「雨族」
断片67- ぷーたろー
13年後~⑨
7月下旬の平日は予想以上に混雑していた。
高速に入った時には、ターボーは、すでにビールを片手にラリっていた。
ターボーが僕に 「マリファナもあるぜぃ」 と言った。 コージとチカが吸っていた。
マユミとクロエは淋しげに窓から入る風に髪をなびかせていた。
僕も、ビールを少し飲んだ。
運転手のユウちゃんは、ぶつぶつ文句を言っていた。
午後3時頃、そのホテルについた。ホテル中島という、くだらない名前だった。まあ、ホテルと言うより国民宿舎という感じだった。
すぐにチェックインし、我々は二部屋に別れた。男組と女組。和室。
部屋に入るなり、ターボーは、すっぱだかになり寝そべってしまった。僕らが水着に着替えていると、スースーと寝息が聞こえてきた。タービーは勃起したまま寝てしまった。
コージがケラケラ笑った。ターボーを置いて、女たちの部屋に行くと、まだ準備ができないというので、僕らは更衣室のロッカーにジーパンとTシャツを入れて海辺に出た。
手頃な場所を確保し、ビーチマットをひいて寝そべった。浜には意外と人がいなくて、しん としていた。
僕たちはタバコを吸いながら、しばらく、ぼんやりと海や空やポツンポツンと点在する砂浜の人々を眺めていた。
上空で、ぶ厚く固まった光が、パラパラと細かく降りそそいでいた。
ユウちゃんが、ビールを買って来て、皆で寝そべって飲んでいるうちに少し眠ってしまった。
又、夢を見た。
僕は海の上に立っていた。水死体の上に乗って。水死体は、6体あって、それが、いかだのように組まれていた。水死体の顔は白く溶けて、男女の区別もつかなかった。
そこで、僕は何故か泣いているのだ。延々と泣き続けて空を見上げている。
そのうちに光り輝くピカピカの青空が、じわじわと降りて来た。僕の涙は、青空が手の届くところに来た頃にはカチンカチンに凍っていた。
そして、僕は青空を食べはじめた。片っ端から食べはじめた。青空に、どんどん僕によって喰いちぎられた穴が広がってゆき、その向こうに何かが見えた。
それは、巨大な、冷静な目だった。それは、僕の事を、じっと見ていた。
そこで夢が終わり、あたりを見回すと、クロエもマユミも来て、ビールを飲んでいた。
「眠ってたわね。ぐぶぐぶと、うめいてたわよ。夢見たんでしょ、こわいやつ」
とチカが言った。
「そう、チカが僕の静脈から血を吸いとろうとしてる夢だよ」
と僕は言って、立ち上がり大きく伸びをすると、海に向かって歩いて行った。
足を海水につけた瞬間、地の底へのめり込んでゆくような感覚と、心にシャワーを浴びせたような清涼感が同時にやってきた。
僕はくらくらした。
しばらく、そうして波遊びをしていると、隣にクロエとユウちゃんがやってきて、同じ事をはじめた。
「人生は続く。夏は去らない。永久に」
とユウちゃんが言った。
「人生は続くわ。でも夏は終わったのよ。皆、甘いわ」
とクロエが言った。
「永遠は瞬間の中にある。それを信じよ」
と僕が言った。
そして、3人で駆け出し、ドップンと海に飛び込んだ。すかさず、3人は大きな波に呑み込まれ、ひっくり返って塩水の中でもがいた。
そして、ユウちゃんが、コンタクトレンズをなくした。
「何も見えない。どうしよう」
「バカ」
とクロエが言った。
断片67 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます