作家の戸井十月氏死去
時事通信 7月29日(月)12時26分配信
戸井 十月氏(とい・じゅうがつ=作家)28日午後0時20分、がんのため東京都内の病院で死去、64歳。葬儀は近親者で行う。東京都出身。
著書に「ゲバラ最期の時」「植木等伝『わかっちゃいるけど、やめられない! 』」などの他、オートバイで五大陸を走破した記録「道、果てるまで」がある。映像ディレクターとしても活躍。05年放送のNHK番組「生き抜く 小野田寛郎」で第23回ATP賞ドキュメンタリー部門優秀賞。
最後ぐらいの全共闘世代であり、彼自身も武蔵野美術大学で運動に傾倒し、中退をしている。
僕が最初に彼の本を手に取ったのは、『旗とポスター/戸井十月デザインノート』(晶文社78年)だった。
「民衆のためのデザイン」とはなにか?
学生運動のビラや旗や看板やヘルメットや・・・そういう資料をもとにして、イラストレーターでもあった彼のデザイン論であった。
その頃、ほとんど無名であった戸井十月は、NHKの「若い広場」の司会をしていたことがある。
その数年あとに、なぜか僕のところに司会をやらないかという話がディレクターを通じてきた。
お義理のように、1回だけ番組に出たことはあるが、僕にはそんな能力もないし、向いてはいない。
彼はその後は暴走族などのルポなどがあり、自らバイクの免許を取った後は、世界中をバイクで走りながら彼らしいテーマを追い続けた。
沢木耕太郎なども同じく世界を旅して、彼なりの「深夜特急」を文章にしていたが、戸井十月は沢木の取材手法とはずいぶん異なっている。
沢木の場合は、いくつかの自分の関心事と旅のテーマが余り目的論ではなく重なって発酵してくる「時間」を意味づける作業を重視している。
センチメンタルといえばそうもいえる私小説風ノンフィクションとなる。
戸井十月の場合は、まず移動することに目的を置く。
もちろん生涯にわたって愛したチェ・ゲバラなど、あるいは少数民族などへの愛惜はある。
けれどもほとんどは、自分が行くことでしか証言できないようなマイノリティの世界にまず飛び込んでいくと言う風に、彼の人生は成立している・・・合掌!
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