「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

好転反応とは健康を取り戻すための一時的辛さ

2009年07月23日 | 分類なし
  ●本日は好転反応についてひとこと書いてみます。  
 
  慢性疾患が自然治癒力によって治る過程で、身体にさまざまな症状や感覚(痛みや違和感等)が現れることがあります。これを好転反応と呼びます。 
 慢性疾患で鈍っていた神経や細胞が活性化したために、それまで内に隠れて表に出なかったものが、呼び起こされて表面化するために起きるものです。症状としてはだるさ、眠さなどの倦怠感のほか、痛み、腫れ、便秘、下痢、胃痛、腹痛、吐き気、発汗、発熱、湿疹、かゆみ、目やに等、その他さまざまな症状が現れます。  

  しかし好転反応は薬の副作用とは違います。例えば抗生物質を飲むと胃を悪くすることがあります、このように健康なところを悪くするのが薬の副作用です。 
 それでは好転反応はどうなのでしょう。人は身体の悪くなったところが慢性化して、そのため痛みや違和感などをそれほど感じなくなってしまうことがあります。そこから以前の正常な状態に戻そうとするときに、症状が一時的にさらに悪くなったような、強く鮮やかなあらわれ方をすることがあるのです。これは麻痺していた神経が活発化してきた証拠、ともいえるようです。 
  たしかに辛いこともあるかもしれません、しかしこれは治癒へのステップであり、決して悪くなったのではありません。このことをしっかりと胸に刻み付けて下さい。反応は人によって千差万別です。  

 ところで身体に出てきた痛みや違和感が、果たして本当の悪い病気なのか、あるいは安心していてもいい好転反応なのか? 見分けることは非常にデリケートで難しいことです。そのため、しばしば健康食品や健康器具等のセールスや、またさまざまな治療の現場などで、その副作用や不適応をごまかすために好転反応という言葉が使われることも多いので、注意が必要です。  

 その点、基本指圧では、「前頸部」と「腹部」を必ず圧しますから、そこでキチンと見分けることができるのが本当にありがたいことです。前頸部はその人の身体のすべての情報が凝縮している箇所ですから、何より信頼のおける圧点なのです。身体状態悪化の場合では、前頸部は必ず張っています。その張り方の状況で判断できるのが、実にありがたいのです。  
 
 また好転反応の場合は、その辛さ(痛み、倦怠感、違和感等)で完全に動けなくなってしまうことは、絶対にありません。しかしあんまり辛い場合は、一時的に体を休めてください。生活のテンポを緩めることで、必ず乗り切ることができます。身体が改善にむかって良い変化をしていることが、まもなく実感できるはずです。 
 私自身、好転反応の辛さをいやというほど体験しています。圧す立場上、経験していてよかったと今は思いますが、それは結構辛いものでした。その間は仕事を減らしたり、休んだりして対応しました。一定期間が過ぎるとケロッと、まるでウソのように何でもなくなるから不思議です。そして以前よりはるかに体調が良くなっているのです。  

 今、チャレンジの子供達の中に、まさに好転反応の渦中の子供達がいます。頑張って欲しいと心から応援していますが、あまりにも辛すぎたら休んでも大丈夫です。休んだからといって、すぐに元に逆戻りしてしまう訳ではありません。一息ついてからまた始めるか、休み休み様子を見ながら続けるか、それでOKです。好転のリズムをゆるやかにするだけのことですから。十分良い変化をしていきます、心配は不要です。 
  歯をくいしばって、なにがなんでも休まず頑張る、と思わなくてもいいのです。圧す手にビンビン伝わってくるその辛さには、思わず「やめてもいいんだよ」と言ってしまいそうな気持になります。
 「いざとなったら休めば楽」そう考えれば、「今より少しは気楽」に頑張れるのではないでしょうか?

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ママの「乗り物酔い予防の指圧」は効果抜群

2009年07月21日 | 素晴らしい指圧効果
  7年前、基本指圧研究会メンバー9名と共に、初めて沖縄・西表島へ基本指圧を広めるために訪島しました。そのおり、島の人達のために自分でできる指圧をお土産に届けたいと考えました。 
  島民は、石垣島等他の島へ渡るためには、船以外の交通手段がないのです。そこで鈴木林三先生から教えていただいた、「乗り物酔い(船酔い)予防の自己指圧」をお土産にすることにしたのでした。  

  今回は、それをチャレンジの千春ちゃんのために役立てることができたのです。  
  彼女は、外見上はさほど大きな変化を見せている訳ではないのですが、身体内部で起きている変化の激しさには、本当に驚いてしまいます。その好転反応の1つとして、乗り物酔いが出てきました。 
  彼女の病気は、「脳性麻痺」です。身体中の感覚も本来あるべきものが、かなり隠れて(麻痺)いると考えて対応しています。麻痺が良くなる過程で、体験しなければならない好転反応が沢山あるだろうと想像してきました。  

  さっそくお母さんに、乗り物酔い予防の指圧を覚えてもらいました。登下校の際に乗らなければならないスクールバス。せめて登校時だけでも乗り物酔いを防げたら、とにかく楽に登校さえできれば、たとえ下校時が多少辛くても家に帰ればどうにかなるでしょう。 
 そんな思いで、毎朝スクールバスに乗る前に、乗り物酔い予防の指圧をして送り出すのが、千春ちゃんママの日課になったようです。必要にせまられて、大変上手に圧しているのを見てとても嬉しくなりました。千春ちゃんも、その指圧効果をとても喜んで受け入れています。指圧を受けることで「楽になる」ことを身体が覚えてくれたら、指圧に対する「信頼」がいっそう強くなります。そのさきにある、信頼感から増大する効果が期待でき、まことに楽しみです。 
  チャレンジ指圧教室での学習は、圧せることで生まれる信頼や安心を、母子共により多く実感してもらえるように前進していきたいと強く思っています。眼前の切実な必要にせまられると、上手い下手などといっている場合では、ありません。とにかくやるしかないのです。  

  千春ちゃんのお母さんの「乗り物酔い予防の指圧」は、効果抜群でした。辛い好転反応の1つを指圧で乗り切ってくれたのが、指圧を教える私にとってはなにより嬉しいことなのです。



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「指がすべてを教えてくれる」

2009年07月18日 | 指圧の活動
  浪越指圧の“技術上達への一番近道”として、師匠の鈴木林三先生から教えられている練習の基本は次の3つです。  

  1、指づくり(基本以前の基本) 
  2、伏臥位肩甲下部(基本中の基本) 
  3、前頸部と腹部(臨床での基本)  

  そして「指こそ最大一。指ができれば、すべてを指が教えてくれる」というのです。確かにそうだ、といま私は心底納得できるようになりました。 
  圧(お)す時の足の構えも、不思議なことにすべて指が誘導してくれるのです。しかし反面、こういう身体の感覚回路は、何かもっと効率のよい訓練方法があったらいいのに、とつくづく思います。今後の大きな課題です。 
 圧(あつ)の深さや方向、受け手の圧された時の様々な感覚や身体の状況。この指圧が「診断即治療」といわれるゆえんで、すべてが「指」にあるのです。“圧し手の指と、受け手の身体がお話しをする”というのですから、凄いことだと思います。それができたら超一流の「プロ」です。目指す価値は、じゅうぶんあります。  

  かつて日本指圧専門学校同窓会幹事長が、鈴木先生に質問したことが会報に掲載されていました。

「指ができるということは、どういうことなのですか? できたかどうか、どうして分かるのですか」
「指ができた人は、そういうことは聞かなくなるから分かります」 
 
  先生の答えはまるで茶化しているようだ、庇って、先生の立場で述べてもまるで禅問答だ、と誰もが感じたのではないでしょうか。しかし今はそれがよく分かります。決して茶化していたわけではなかったのです。  

 指ができたら、具体的にどこがどうなるのか? 誰もがみな興味があり、聞きたいことなのではないかと思いました。そこであるとき、「指作りができると“ここがこうなる”っていう具体的なはっきりした変化があるのヨ」、とスタッフ数人に言ってみました。でも誰も具体的にどこがどうなるのか? と聞いてくる気配がありません。 
  鈴木先生の指圧治療を受けながら、先生に私の指がどのようになったかを話してみました。すると「あっ! それは、甘手だからの変化だネ!」と。  

  指について話しても、誰も具体的な変化の様子には興味を持たないのが不思議で、鈴木先生に、ついでにそれも聞いてみました。

 「苦手の人に聞いたんじゃない?」 
  えーっ、まさにその通りでした。
 「試しに、甘手の人に言ってごらん、反応が違うかも」 
  さっそくスタッフのYさん(甘手)に話しかけました。
 「この前、鈴木先生とできた指がどうなるかの話をしたのヨ」
 「えーっ、指って、できたらどうなるんですか?」 
  即座に食い付いてきたのには、本当に驚きました。
 
 「あのね、ここがこうなって、こうなって、こうなるのヨ」
 「へぇ~、面白い!」 
  キャッキャッと笑って大喜びでした。まか不思議です。もう一人の甘手スタッフD君に同じ試みをしてみました。
 「えっ! それって聞いてもいいですか?」 
  これも即食い付いてきたから本当に不思議です。  

  先生曰く。
 「自分に関係ないことに興味を持つことはない」 
  鈴木先生は、ご自身で「コチコチの苦手」であると言われています。ちなみに私には関係のない、興味もない、苦手の指ができた様子を先生に聞いてみました。 
  へぇーっそうなんだ! 
  拇指の指節間関節は、甘手・苦手共に(過伸展)ではありますが、基節骨が垂直か否かが、分かれ目でした。結果、拇指に圧が集まることには、かわりはないのでしょうが、見た目の形は、基節骨の角度でハッキリ苦手・甘手が、違うわけです。  
  しかし人って面白い! 人の言動や発想は、やはり身体状態からなのだとつくづく思いました。  

  我が治療所の、浪越指圧をヒョウボウする“苦手”スタッフは、鈴木先生が伏臥位肩甲下部を圧している時の手指の形が「カッコイイ」と目を輝かせます。甘手の私には「不思議な形」に見えるだけなのですが……。

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感動の二分脊椎研究会、各先生の献身に胸打たれる

2009年07月08日 | 素晴らしい指圧効果
  7月4日、順天堂大学医学部小児外科主催の学会に基本指圧を紹介できました。感無量です。 
 二分脊椎症を研究している全国のドクターが、一堂に会して、患者のためによりよい医療を研究している報告には感動し、頭が下がる思いでもありました。発表者が大勢のため、それぞれ短時間でまとめなければならなかったのですが、的を絞り的確な内容でまとめてあり、どの報告も分かりやすく大変興味深かいものでした。  

  私の治療例は、「看護・その他」に含まれ、10時5分から約1時間でした。発表はそのトップでしたが、「洗腸6年のあと、排便の自立を得た1例」と題して藤原一枝先生(心身障害児総合医療センター脳神経外科)が登壇してくださいました。 
  発表が早く終わりましたので、初めは、12時30分から1時間のランチョンセミナーで、最新の遺伝子についての講義を聴いてから帰ろうと思っていたのですが、どうしても最後まで聞きたいと思うようになり、結局ほとんどの報告を聞くかたちになりました。 
  とても勉強になりました、参加できたことに感謝しています。ありがとうございました。  

  基本指圧における、「二分脊椎症の自力排便に関する効果」を報告した今回の藤原先生の発表が、画期的なものであったことは、限られた時間内ではあるものの、質問者の言葉に表れていました。
 
「洗腸を奨めている者としては、とてもショッキンギな報告です。云々」(星ヶ丘厚生年金病院・泌尿器科の医師)。
 「非常に興味深かったのですが今の話ですと云々」(神奈川県立こども病院の医師)。  

 二分脊椎症は、歩行と排泄に関わる部分が生まれつき欠損している先天異常ですから、はなから、自力で排泄できない、と考えられてしまうのは仕方のないことです。ですから、いかに社会生活に支障なく順応できるようにできるか、様々な研究がなされているのをまのあたりにしました。 
  ここに参加されている先生方は、大変熱心な方達なのだとよく分かり、日々患者と向き合いながら悪戦苦闘されているさまが、手に取るような気がしました。  

  興味深い報告が肩を並べる中に、神奈川リハビリテーション病院の先生方の、患者さんに対する誠意溢れる報告には、大変感動いたしました。 
 昏迷状態で排泄物にまみれ自宅で発見された二分脊椎症の28歳男性を、社会復帰させたという内容でした。短時間の報告の中に、携わった方々の情熱がひしひしと伝わってきました。この報告の中に「長年最大の苦労の元であった『臭いの処理』について模索」云々と、いう部分がありました。普通、「臭いの処理」となると外的な工夫になりがちですが、基本指圧では、身体内部から根本的に解決できます。  

  人1人のためにもやりぬきたいのが、私の性格です。臭いの計測は可能でしょうか? すでに達也君では、クリアーできている課題です。 
  かなり気になる課題です。双方の都合があえば、ぜひ手掛けてみたいと思っています。一段落したら動いてみようと思っています。  

  基本指圧ならではの効果が期待できると考えています。ちなみにこの日、出されたお弁当が、とても豪華で美味しかったのも嬉しいことでした。ありがとうございました。

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瞼に蘇る緊張の日々、二分脊椎症施術の記録

2009年07月02日 | 指圧の活動
  6月29日午後、錦糸町の藤原QOL研究所に藤原一枝先生を訪ねました。7月4日に開催される、順天堂大学医学部小児外科主催の学会報告の最終打ち合わせのためです。 
  報告用のスライドがみごとな出来上がりで感動的で、飛び上がらんばかりの気分です。当日が本当に楽しみです、さすが藤原先生、です。  

  スライドを見るうちに、二分脊椎症のタツヤくん施術の苦労が、まざまざと思い起こされました。片時も油断できない緊張に張りつめた日々、今でも決して忘れることはできません。 
 過ぎてみれば、中でもあのときがいちばん大変で、いちばん大事な1カ月半(2008年2月19日~4月5日までの47日間)であったと思います。「いざとなったら救急車を頼めば大丈夫だから、命に及ぶことは、絶対にないから」と、連日出ない便への不安におしつぶされそうになりながら、お母さんになんどもなんども言い聞かせました。また時を惜しまず、納得のゆくまで話し合いもしました。

 「今我慢ができなければ、自力排便は夢のまた夢になってしまう! とにかく頑張るべきは、今しかない」と、まるで天の声が聞こえたように感じたのです。連日タツヤくんの身体を圧し続けていたからこそ持てた、「100%大丈夫!」という確信でした。
  この「確信」の裏付けとなっている、「基本指圧ができる」ということが、本当にありがたいとつくづく思ったものです。 
 だからこそ不安に惑わされるお母さんに、洗腸をさせずに最後まで頑張れたのです。彼女もまた私の言葉を信じてよく頑張ってくれました。連日の緊張と不安の中にクモの糸ほどにつながる信頼は、いったいどこから生まれたのでしょうか? まことに不思議な気がします。この時の体験から現在のチャレンジ指圧教室が生まれました。  

  今回、藤原先生からも指摘されましたが、とにかくガムシャラにやったことは確かです。そのために当院スタッフにも、結構迷惑をかけたと反省、申し訳なくまたありがたく思い、心から感謝しています。確かに皆の協力なくしては、決してできなかったことですから。 
  ただ言えるのは、ガムシャラであったからこそできた奇跡だと言うのも、本当のところだと思っています  

 ひたすら色々な思いが交錯します。ただ単純に、身体のここをこうすればこうなる、などというような問題ではないこと、をしっかり理解して欲しいと強く思います。私自身そういう考え方では、「チャレンジ」と正面から向き合うことは、決してできないと心新たにしています。 
  親子の複雑な結び付きから、どうやってこんがらかった糸をほどいていくか? わずかな言葉のやりとり、体調の変化の中にも、そのヒントを逃さずにつかまなくてはなりません。 
  指圧法・運動法などという、方法論だけでは解決できるものではない、とつくづく感じています。魂レベルの触れ合いというか、信頼とでも表現するしか言葉が見付からないのです。 
 現在、二分脊椎症患者は、日本に約6000名ほどいると聞いています。当たり前のことですが、いかにチャレンジしても、そのすべての方々が自力で排便できるようになどなるわけではありません。色々な条件が揃って、初めてそこから「可能性」が生まれるのです。しかし自力排便ができることで、生活上のさまざまなことが好転することは確かです。実際、寿命すらかなり違ってくるはずです。  

  基本指圧を通して、たまにこのような奇跡ともいうべき治療効果を体験することがあります。(興味のある方は、ブログ左下方に電子書籍の欄があります。ダウンロードしてみてください。)

  これを生み出す原動力はいったいなに?  鈴木林三先生に聞いてみました。
 「生命力だよ」 なるほど「圧せば命の泉湧く」か。圧すことで、その人に具わる生命力を呼び起こすお手伝いをしているわけなのです。生命力があればこそ、受け手と術者が強い信頼で向き合えるのだと納得できました。  

  7月4日は参加費1,500円(ランチ付き)で、興味のある方はどなたでも参加できます。東京国際フォーラム(東京・千代田区丸の内、最寄り駅「有楽町駅」ほか多数)の7階・Dホールに直接おこしください。ちなみに藤原先生の報告は、10時から10分間ほどです。

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