一身二生 「65年の人生と、これからの20年の人生をべつの形で生きてみたい。」

「一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」

環世界とアフォーダンス

2014年10月21日 | 現代思想

環世界とアフォーダンス

生物自身が何を認識できるかどうかによって世界が変わってくるという考えが、ユクスキュルの「環世界」の核心です。またユクスキュルは、世界認識が生物それぞれに異なることを言っただけでなく、生物のおこなう行動が単なる外からの刺激に対する反応ではなく、生物の側の主体的な知覚が生み出す「環世界」との相互作用であるということで、世界認識に知覚と行為の両方が深く結びついていることを指摘しました。

主体が知覚するものはすべてその知覚世界になり、作用するものはすべてその作用世界になるからである。知覚世界と作用世界が連れだって環世界という1つの完結した世界を作りあげているのだ。

 ヤーコブ・フォン・ユクスキュル『生物から見た世界』

「知覚世界と作用世界が連れだって環世界という1つの完結した世界を作りあげている」。これは後のアフォーダンス理論の考えにも通じるような視点です。アフォーダンス理論では、情報というものを人間の外部にあるものでもなければ、人間がその内部で作り出すものでもなく、人と外部環境の相互作用のなかで発見されるものだとしています。

例えば、日本におけるアフォーダンス理論の第一人者といえる佐々木正人さんは『アフォーダンス-新しい認知の理論』のなかで次のように書いています。

私たちが認識のためにしていることは、自身を包囲している環境に情報を「探索する」ことなのである。環境は、加工されなければ意味をもたない「刺激」のあるところではなく、それ自体が意味をもつ「持続と変化」という「情報」の存在するところとして書き換えることができる。 

佐々木正人『アフォーダンス-新しい認知の理論』