怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

有川浩「倒れるときは前のめり「有川ひろ「倒れるときは前のめり ふたたび」

2021-07-15 15:39:38 | 
私の大好きな有川浩さんのエッセイ集です。
因みに最初のエッセイが出てから、「ふたたび」を出す間に、ペンネームを有川浩から有川ひろと改名しています。
ですから「倒れるときは前のめり ふたたび」のペンネームは有川ひろです。

ところでこのエッセイ集の題名ですが、高知県人らしく土佐の英雄坂本龍馬の言葉からとったもの。でも本当に龍馬が言っていたかどうかはよく分からなくて一説には司馬遼太郎の創作ではとか。私個人の思い出としてはこの言葉は確か「巨人の星」の中で紹介されていて、「俺が死ぬ時は、例えドブの中でも前のめりになって死にたい」だったような。ちょうどNHKの大河ドラマでも「竜馬がゆく」を放送していたころでしょうが、北大路欣也が主演という以外は記憶はなくて、やっぱり「巨人の星」ですね。巨人ファンではなかったのですが、漫画もアニメを真剣に見ていました。
閑話休題。エッセイ集では有川さんの高知で育った頃の思い出とか大学で関西に出てから作家デビューするまでのこと、それぞれの作品の出来上がるまでの背景とかモデルが語られていてファンにとっては読むべき一冊、もとい2冊です。雑誌とか新聞に書いたものを集めているのですが、それぞれに「振り返って一言」という一言ではないけど短い振り返りの文が書いてあって、後日談としても面白い。
それにしても有川さん、「図書館戦争」という本を出してるだけでもわかるのですが、どんだけ本好きなんでしょうか。本そのものだけではなくて、出版業界、本屋さん、ホンを取りまくもろもろの人たちにも愛情があふれています。ちゃんと経済的にも業界が成り立つように気配り目配りも行き届いています。職業作家としての矜持と権利もきちんと主張しています。
青春時代に高知では雑誌も新刊も遅れて発売されるのがもどかしい日々を送っていたというのをエネルギーにしているのでしょうか、この2冊の本の中にも、出版業界への熱い思いとエールがあふれていますし、たくさんの本の紹介と言うか書評が出ています。
ところがそこに出てくる本を私はほとんど知らない。題名を聞いたこともないものも多くて、作家も初めて聞く名前がある。本好きで最近はめったに買うことはしないでもっぱら図書館で借りているのですが、それなりに本は読んできている自負はあったはずなのに、どうしたことか。有川さんが本に目覚め青春時代に夢中で読んでいた本は、いわゆるライトノベル。世代が違うこともあって私の視野には入っていない本ばかり。中には作家の名前とか題名くらいは知っている本もあるのですが、これには参った。新井素子は名前ぐらいは知っていますが、読んだことはないと言う記憶。浅田次郎の「草原からの使者」が出てきた時にはホッとしました。
そう思うと青春時代に心酔しきった本なり著者というのは、結構レンジが狭いかもしれません。私はというと北杜夫のどくとるマンボシリーズとか遠藤周作のぐうたらシリーズのエッセイとか星新一のショートショートとかは単行本を買うお金もなくて図書館で借りる以外は文庫本になってからか古本で読んでいましたけど、今の大学生に北杜夫とか遠藤周作とか星新一と言っても「誰それ?」と言われるだけかも。ちょっと寂しい。大江健三郎ぐらいならわかるのかな。そう思うと時代を超えて読まれている太宰治は本当にすごい。
有川さんの本は原作として映像化されることも多いのですが、それに対する毀誉褒貶も多いとか。原作者としては「面白くなるなら何をどう変えていただいても構いません」というスタンスです。でも最近はネットでの映像者に対する行き過ぎた誹謗中傷も多くて一部読者の「自覚なき加害者」に対しては強く批判をしている。匿名性に隠れて関係者を傷つけているに再考を促している。ネットでの発言に対してもまだまだ言いたいことがあって、結構なページを割いています。現在ネットでは「有川ひろと覚しき人」と名乗っているそうですが、「有川ひろ」のアカウントの発信を裏取りも本人の了解も得ずに無断引用してネット発のニュースにしていることが頻発したからだとか。本当に本人が書いたかどうかも分からないものをたれ流すネットニュースの特性で、松本人志も自分の発言を勝手にネットニュースに流され、しかもその見出しと内容が無茶苦茶だと怒っていたのですが、仕入れコストゼロで売れればいいと記事にしてしまうと言うことが跋扈しているのが現状です。でもまたそれを読んでいるので、どうもすいません。
ネットでの発言は公のものとなるだけに呪詛がまん延する世界ではなく言祝ぎに満ちている世界を望み「嫌いの主張ではなくて好きの主張を」と言うことです。匿名性に隠れて相手を目の前にしても同じ言葉が言えるか」と言うことを考えなければいけないのですが、多分酔っていれば相手を目の前にしてもっと辛辣なことを言っているかも。そうなるとネット云々という前に酒癖が悪いとなるのですが、ネットでの発言には改めて細心の注意をしなければと言うことを自戒している次第です。
ところでエッセイだからでしょうけど割合ストレートにいろいろな批判を展開しているのですが、小説ではそれを上手くソフィストケースして物語を展開しています。ノンフィクションではなく物語として自然な流れで主張された方が説得力があると言うのは感情移入しやすいだからなのでしょうか。そういうところが有川ひろという作家の筆力なのでしょうけど小説というものの力と可能性を感じます。


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