goo

●映画&小説・・ 「ゼロの焦点」..(3)

Photo

 劇場映画版の「ゼロの焦点」は2009年11月のロードショー公開で、僕がDVDで見たのが2010年の11月頃ですね。この映画が地上波初で放映されたのが2011年3月6日です。僕はDVDで見たので、TV放映は見ていません。あ、そうか。僕はこの2011年3月は目を悪くして入院していたんだ。そして入院中に、あの忌まわしき未曾有の大震災が起きてしまった。まあ、僕自身は入院中は、ただただTVで、信じられないような悲惨この上ない光景を、画面で見ているばかりでしたが。右目は普通に見えてましたからね。でも、実際には、2011年3月11日からそれ以降の数日は、まだ手術後の経過中で、安静中で、TVは見ていないですね。大部屋だったから、周囲の人たちの話から聞いたのでしょう。「ゼロの焦点」の地上波TV放映はもう一度やってますね。いつ頃のことかは記憶してないけど、TV放送の最後のところのシーンを見た覚えがあります。勿論、もう退院してしばらく経ってからのコトですが。まあ、僕は広末涼子さんはそれ程は好みの女優さんじゃありませんが、どちらかと言うと、中谷美紀さんの方が女優さんとしてはずっと好みですけど、中谷美紀さん、魅力的で素敵な女優さんですね。ちょっと痩せ過ぎな感も持ちますが、上品で綺麗です。良いなあ、中谷美紀。ええ~と、日本一、不幸な女の役が似合う女優さん、木村多江さんは申し訳ないけど、全くタイプじゃない。まあ、おまえ如きが言うな、ですけど。

Photo_2

 僕が原作である小説の「ゼロの焦点」を読んだのは16歳のときで、読んだ季節は真冬で、物語の背景にピッタリでした。当時、非常に面白く読んでいるのですが、この後再読はしておらず、だいたいのお話の外郭は覚えていましたけど、細部はすっかり忘れてしまっていました。ただ、あの独特の寂寥としたムード、これだけは覚えていました。雪の能登半島の断崖絶壁。強風と雪、荒涼とした能登の風景。面白い物語でもあったけど、重たいお話でもあった。そういう雰囲気的なものは覚えていました。能登の断崖絶壁が最初から自殺の名所だったのか、この物語、「ゼロの焦点」の原作の小説と、1961年公開版の映画作品で、自殺の名所になってしまったのか、16歳でこの小説を読んで以降、僕の頭には「能登の断崖は自殺の名所」というのが焼き付きました。09年の映画作品をDVDで見て、ああ、そうか、こういうストーリーだったんだな、と思ったものでした。

Photo_3

 僕の読書生活は16歳から始まりました。僕自身はもともと頭の出来そのものが悪いし、読書はメチャメチャ「遅読」なんですけど、高二の春、転向して来たクラスメートのM君から借りた、松本清張と五木寛之の文庫本で、当時の中間小説とか娯楽小説に嵌まり、その後、M君から清張と五木の作品の文庫本を幾度か借り、ついには自分で本屋で両小説家の文庫本を捜し、買い求めるようになりました。「遅読」といえど、ここからが僕の読書生活の始まりです。松本清張も五木寛之も当時のベストセラー作家ですけどね。当時の第一線の流行作家。その後、遠藤周作とか野坂昭如に嵌まって行く。野坂昭如には僕は明らかに影響を受けました。松本清張を読んでいたのは、ほとんどが高校生時代です。大人になって読んだ清張作品はわずか二冊くらい。高校生時代に深夜、勉強しているふりして読み耽っていて、一番面白かった松本清張の作品は、僕の好みで、第1位が「影の地帯」。これは本当に面白かった。もう、スリリングな謎解きサスペンス。第2位は双璧で、「蒼い描点」と「ゼロの焦点」ですね。第4位に「黒い樹海」とか来るのだろうか。僕は「再読」はほとんどしない人なので、無論、数十年前の読んだ本のことなんてどれも、細部はすっかり忘れてますけどね。「蒼い描点」はもともとが女性週刊誌の連載小説ですから、若い男女のロマンチック味も全体を覆うムード的にありますね。謎解き探偵役の主人公が若い女性の、雑誌編集者だし。それを助けるカッコイイ若い男、というか先輩編集者。あ、「蒼い描点」初出は「週間明星」だ。それで、若い女性読者好みな趣向のロマンチック風味で、読みやすく面白かったんですね。

Photo

 「ゼロの焦点」のキーワードの一つに、「パンパン」というのがあります。今の人たちに「パンパン」とか聞いても、何のことやらさっぱりでしょう。「パンパン」の意味を知っているのは、もうけっこう年配の方たちになるでしょうね。少なくとも僕くらいの世代よりも上の方々なんじゃないかな。僕は昭和30年代初頭の生まれになるんですけど、多分、言葉自体は小学生の頃から耳にして知ってたんじゃないかなあ。ただ、意味までとなると、中学生くらいにならないと解らなかったと思う。特に僕は、子供の頃から、シモネタ言葉をくっちゃべって人を笑わすことはよくやってたけど、僕自身の実態は臆病で“ウブ”そのものだったし。これは太平洋戦争後に焦土と化し荒廃した日本で、極貧・赤貧の中で生き抜いて行くために、何よりもとにかく、食べるために「パンパン」になるしかなかった、という日本の国の悲しい過去の裏歴史の一面ですね。僕は現代、今のアダルトビデオ産業に於ける“本番”を見せているAV嬢も、あれは職業としては「売春」の一種だと思っていますけど、今の時代にほいほい「AV嬢」になるのと、戦後に「パンパン」になるのとは随分意味が違うと思います。もっとも僕自身は、生きて行くことが第一優先と考える人間なので、それで食べて生きれるのなら「売春」だって良い、と思っている者なのですけど。「売春」を生業にするのは、それは、あまり褒められたことではありませんけど、「売春」という仕事をして、食べることが出来て、とにかく生きて行けて、子供を育てて子供が立派に育ったのなら、それに越したことはないし。まあ、やらないに越したコトはない仕事だとは思うけど、生きるための最終手段としては‥、と思います。しかし、ハイソな世界でも「売春」やってる人もけっこう居るんでしょうけど。「枕営業」って言葉もあるくらいだし。援助交際とかっていうのもあるし。まあ、だから、この「ゼロの焦点」のキーワードの一つ、「パンパン」は、時代が時代なだけに、日本の悲惨な過去の歴史の裏面が生んだ、悲しい言葉ですね。しかしある意味、生き抜こうという生命力。「ゼロの焦点」は悲しい物語でもあります。謎解きミステリーだし、メチャ面白い小説だけど、けっこう重くもある。

Photo_2

 「パンパン」の話をもう少し続けると、今の人たちには、フジTV・局アナのアイドルアナが、「~パン」とパン付けで呼ばれていますけど、「パンパン」とかいう言葉の音を聞くと、このフジTVのアイドル女子アナを想起してしまうんではないでしょうか。代表的なのが「アヤパン」で、以前には「チノパン」が居たり、今では「ショーパン」とか「カトパン」とかの、フジ第一線のA級人気アナが居る。比較的新しいフジ・アイドルアナには「ヤマサキパン」とか「ミタパン」とかも居るのかな。カトパンは現在のフジのエースですね。僕は小学生の頃、自分の生活の周囲で大人たちがよくこの言葉を口にしていたので、まあ、「よく」は聞いてもいなかったでしょうが、下世話な大人たちの俗っぽい会話の中に入ってて、自然と耳に残ったんでしょう。まあ、よくは解んないけど。「パンパン」からの発展形語で「パンスケ」とかありましたね。多分、中学生頃にはある程度、意味も解っていたろうし、戦後20年経ってもこの言葉はまだ残っていて、戦後に使われた本来の意味ではなく、何というか、異性間の肉体関係におおらかな女の人と言いますか、尻軽な人、性にだらしない女の人、男付き合いの派手な人、水商売の女性でモテて割とあっさりと肉体関係に入る女性とかに、蔑称の意味で「パンスケ」とか呼んだりしてましたね。いわゆる「立ちんぼ」と呼ばれる街娼なんかも、まだ「パンパン」と呼ばれたりもしてました。だから僕がけっこうイイ歳になって来て、比較的よくTV番組を、特にTVバラエティーを見るようになって、フジのアイドルアナを「~パン」とパン付けで呼んでいるのには、違和感がありました。まあ、TVの東京キー局の女子アナというのはいろいろとゴシップも多いし、週刊誌ネタにされてスキャンダルの上がる女子アナも多い。まあ、真面目で身持ちの固い女子アナさんも居るんでしょうけど、何か、ハイソな尻軽、セレブ尻軽、というイメージがある。だから、戦後に、卑猥な隠語的意味で影の流行語となった「パンパン」という言葉と、現代のアイドル女子アナのパン付け呼びは、何だかちょっとイメージ的に交錯する部分もあるようで、皮肉にイメージ被るなあ~、と思ったものでした。はい。まあ、知れたら、フジTVアナウンス室、激怒ものですね。※(終戦直後の“パンパン”とフジテレビ女子アナとは全く関係はありません。)

 清張作品の多くは、大衆娯楽小説寄りな作風といえど、優れた知的エンタティンメントで、日本文学史に名を残す現代文学の代表的作家、だといっても過言ではない、と思える昭和の文豪、松本清張の、戦後社会派推理小説群ですが、それら山ほどの傑作の中の一つ、「ゼロの焦点」の中の重要なキーワードの一つ、「パンパン」とは、戦後焼け跡の、ただ何かを口に入れて食べて生きて行くだけで必死の極貧の状況下で、進駐軍の米兵相手にその身体を売って、糊口を凌いだ悲しい女性たちに対する、冷酷な蔑称ですが、もともと売春自体は、売春とは世界で最も古くからある職業である、という言葉を昔、聞いた覚えがありますけど、古今東西どの時代にも、合法違法を問わず、とにかく存在した仕事ですよね。何年か前に、ドイツで売春が合法化され、その代わりに税金がエラい高い税率を課せられる、というニュースを聞いた覚えがあるんですけど、調べてみたら、ドイツの売春の合法化は2002年ですね。あれはどういうニュースだったんだろう? 済みません、そのニュースの詳細は忘れてますが、確か、税率が半端なく高い、という話でした。だいたい、ヨーロッパの国々は、現代ではほとんどが売春は合法化されているみたいですね。世界の売春事情は、良いことか悪いことか、まあ、メジャー宗教的には悪いことなんでしょうが、倫理観や道徳的にもどうなのか、世界的にも流れは合法化の方向へ行っている、ということみたいです。職業としての売春も自由主義の一環かなあ。ただ、特にヨーロッパ諸国など、売春の斡旋や営業行為、客引きなどを禁じている国もあるようですね。仲介業者が入ることを禁じている、とかですね。売春婦との客との極力1対1のシンプルな交渉ならOKだけど、ここに中間業者が入って斡旋や営業などなどをやって手数料等のお金を取って商売にしてはならない、ということなんでしょうね。管理売春はともすれば人身売買に繋がりますからね。現在でもあるのでしょうけど、昔から売春商売目的で人身売買が行われて来た悲しく暗い歴史は、これも古今東西何処の地域でもあった、あることです。僕も、売春する女性とそれを正当な対価金銭を払って買う男という、シンプルな関係なら良いけど、間に男や業者が入って、中間搾取的に金儲けするのは許せませんね。

 まあ、別に「売春」の話に、僕もあんまりこだわらなくてもいいんですけど、少なくとも僕が、男娼として売春して来た訳でも、売春に関わって来た訳でもなし。これはどっちかっつうと女性側の問題でしょうからね。買う男が居ることが悪いんだ、と言えばそれまでなんですけど。でも、モラル的に考えてどうなんかなあ。現代では成人女性の200人に一人の割合でAV出演している、という世の中だし。今のAVは九割以上が本番作品でしょ。「中出し」とか倫理的にどうなんかな。自由主義世界の自由恋愛なんだから、自分の性は自分がどうしようが自由だ、というのもどうなんだろうなあ。それほど、愛情とかいうものが介在しなくとも、快感や(国内法的には違法ですが)金銭が得られるなら、避妊さえちゃんとして病気さえ気を付ければ、自分の性はどうしようが勝手で、不特定多数と寝ようがそれは自由だ、というのはどうなんだろう。性のモラルなんてなくてもいいものなのか。まあ、これは大きく女性側の問題なのでしょうけど、私も古い昭和の人間なので、現代の性の自由には何か釈然としないものも持つ訳であります。「ゼロの焦点」の一つのキーワード、「パンパン」から、話が名作物語の本題から大きくずれてしまって、申し訳ないのですけど。どうなんだろう、女の性を自由にさせない、という考え方は、「男側の価値観」「男の支配性」から来てるものなんだろうか。抽象的になりそうだけど、これも難しい問題だな。この先、性は何処へ行くのか。まだまだ、「不倫は許されない」とかいう常識的認識は一般的にけっこう固くあるし、「恋人は一人でなくてはいけない」という考え方は崩壊してますね。眉を顰められたり後ろ指差されたり、というのはありますけど、何又とかセフレとか、ほぼ許されてるのではないですかね。それもある面、英雄視・豪傑視される部分もなきにしもあらずだし。まあ、いいか、「性のモラル」のことは。「ゼロの焦点」から大きく外れた。

 それでもまだ、「パンパン」のことを書くと、「パンパン」の語呂の音が比較的、可愛く聞こえるので、その語呂音から、例えば赤ちゃん紙おむつの「パンパース」とか連想しちゃうし、小学生の頃からアリナミンA25を常用していたという薬フェチの僕としては、昔お世話になっていたタケダの総合ビタミン錠、「パンビタン」の歌とかをつい思い出しちゃいます。♪パンパンパンビのパンビタン‥、というCMの歌。これも連想しちゃって、イメージとして、何だかパンパンのお姉さんが、現代では立ちんぼやコールガールのお姉さんやおばちゃんが、出勤前にパンビタン飲んで、「よーし、今夜は、はりきって5人は客取ってやるぞーっ!」と、元気良く出掛けてるみたいで。あと、「ピーターパン」とかも似た語呂音から、ピーターパンは男の子だから、ウェンディーあたりが、夜中に彼女の出来ない独身男性のもとに訪れて、恋人ボランティアとして相手してくれる、とかつい連想しちゃいます。ピーターパン(ピーターパンパン)も可愛い男の子だから、彼氏の出来ないHOMOの男性とかの下に行くのもアリですね。「パンパン」って意味を聞くと、とんでもないことですけど、意味を知らないで語呂音だけ聞くと可愛いイメージもありますからね。だから今のフジTVの有望アイドル局アナに番組で、「~パン」とパン付けしたんでしょうね。決して、フジの誰かプロデューサーが、「こいつら清楚で可愛いふりしやがって、局の有力上司やIT成金とか有名タレントとか、プロの野球やサッカー第一線選手とかと、見境なくバンバン寝やがって、このセレブ尻軽が!」ということで、ルックスの良い局アナに「~パン」と、パン付けで呼ぶようにした、という訳ではないでしょうからね。済みません。悪ノリし過ぎました。「ゼロの焦点」タイトルで、こんなこと書いてると松本清張ファンにぶん殴られますね。「パンパン」は一つのキーワードですけど、名作でメチャ面白い小説です。お勧めです、「ゼロの焦点」。映画作品も良いです、面白いです。

※ (2010-11/19) 「ゼロの焦点」..(1)

※ (2010-12/16) 「ゼロの焦点」..(2) 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする