Der Barenhauter

あるところに３人の兄弟がいました。
この３人、上の二人がいつも一番下を仲間はずれにしていました。成長した３人が世の中に出て行くときも上の二人は「おまえはいらないよ」と末っ子は置いていってしまいました。
さて、末っ子は一人で寂しく街へと歩いていました。すると悪魔が現れました。
「どうしておまえは一人なんだ？」
「兄さん達が僕を除け者にしたからです。どうすることもできません」
「…よし、ならば俺が力を貸してやろう」
悪魔はそう言って、弟に緑の毛皮を渡しました。
「それがあればいくらでもお金がでてくる。ただし条件がある。おまえさんは向こう７年間体を洗ってはいけないし、髪をといてもいけない。お祈りをしてもいけない。その状況でおまえさんが７年生きていれば、おまえは自由の身だ。ただし、７年経つまでに死ねば、お前の魂は俺のものだ」
悪魔の持ちかけた条件を、末っ子は聞き入れるしかありませんでした。

さて、末っ子は上着から出てくるお金で生活を始めました。１年目はまだまともな人間ではありましたが、２年３年が経つと髭も髪もぼうぼうになり、まるで熊のようになりました。そのため、誰からも相手にされなくなりましたが、長生きをしたいのでみんなに出来る限り恵んでやるなどしておりました。
４年経過したある日、末っ子は町外れの宿を借りました。宿の主はもちろん嫌がるのですが、大金を積んでどうにか泊めてもらいます。さて、ベッドに横になっていると、隣の部屋から泣き声が聞こえてきました。行ってみると、一人のお爺さんが泣いています。訳を聴くと、
「わしは借金をこしらえてしもうたんじゃ。

ハリー・ポッター翻訳者の松岡さん、３６億申告漏れ(読売新聞)
多額の申告漏れを指摘されて、追徴されてしもうたんじゃ」
末っ子は自業自得だろうと思いましたが、お爺さんはスイスで納税したとも主張していますし、いくらでもお金がでてくるので、肩代わりしてやることにしました。男は大層喜びました。
「ありがたや。お礼にわしの娘と結婚してくれ」
そう言うので、末っ子はお爺さんについていくことにしました。
さて、おじいさんには３人の娘がいたのですが、上の二人は、
「何であんな熊みたいなのと結婚しなければいけないのさ」
とあっさり逃げていってしまいました。しかし、残った末の娘は
「お父様を助けてくれ、そういう約束をしたのでしたら私は従います」
と了承しました。こうして二人は結婚することになりました。

しかし、熊のような自分と一緒にいさせるのは気が引けます。末っ子はたまたま見つけた珍しいトマトを半分に割りました。

雑記帳　恐ろしい顔の“人面トマト”、畑で収穫　京都（毎日新聞）
「これを持っていて三年待っていてください。三年経って私が戻ってこなければあなたは自由です。私は死んでいますから。神様が私を守ってくれるように、どうか祈っていてください」
末っ子はそう言って自分の持つトマトに娘の名前を娘のトマトに自分の名前を書いて冷凍庫に保管するように言い、娘と別れました。
上の二人の娘は、「あんな熊みたいなのと結婚して」と末の娘を笑いますが、末の娘は「それも運命だから」となるようになれと思っていました。

さて、末っ子は娘と別れた後も行く先々で施しをし、自分のために祈ってくれるように頼みました。正しい行いのみをしていたので、神様も末っ子を「偉い」と思い、恵みを与えてくれました。その結果、７年経っても末っ子は生きていました。
突然、ゴーという轟音がしたかと思うと、悪魔が現れました。
「くっそー、上着を返してやるよ。俺のも返せ！」
悔しそうに悪魔は言いました。これで末っ子は永遠にお金持ちのままでいられるようになったのです。

さて、末っ子はすぐに服を買い込み、体を洗って髪もととのえると花嫁のところへと急ぎました。まず父親と会ったのですが、末っ子だと分かりません。続いて娘に会いに行っても、娘も言うことを信じようとはしませんでした。
そこで末っ子はトマトの話をして、自分のと娘のとを合わせてみました。これがピッタリ合ったので、娘もついに信じ、また花婿が熊のような人間ではなく素晴らしい若者だと分かって喜びました。
逆に上二人の娘は愕然とし、幸運を取り逃がしたことに腹をたててショック死してしまいました。

さて、悪魔が再び末っ子の前に現れました。
「お前の魂は取り逃がしたけれど、替わりに二つ手に入ったからしめしめだ」
めでたし、めでたし？

末っ子の持っていた方のトマトが何故腐らなかったのかという質問は却下(笑)。