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風刺画と文明の衝突・4

2006-02-24 19:07:03 | 日々のニュース
3度にわたって、ウダウダと言いたいことを言ってきたムハンマドの風刺画についての問題…

その1  その2  その3

とりあえず書きたいことは書いたのでひとまず静観しておりましたが、それ以降も色々な国に問題が飛び火しています。
さすが三大宗教開祖の中で個人としてはもっとも卓越したムハンマド、風刺されただけでこれだけの問題を引き起こすんですね。
これもある種の風刺だとしてあちこちから非難されそう…

まず、ここ数日一番荒れているのはナイジェリアですね。暴動が起き、100人以上の死者が出ているそうです。といっても、ここも単純に宗教タヴーの問題とは言い切れない問題があります。
発端が起きたのはナイジェリア北部のカツィナ州と北東部のカツィナ州。風刺画に反対するデモ隊が暴徒化し(本当か?)、教会などに放火してキリスト教系住民が16人ほど亡くなったそうです。すると、今度は南部のオニチェでキリスト教系住民が報復とムスリムを襲い、100人以上を虐殺したのだとか。
ナイジェリア北部ではイスラーム系が強く、オバサンジェ政権発足以降、急速にシャリーア(イスラーム法)が導入されているそうです。今までは軍政独裁下にあったのが民政移管したことでかえって秩序が崩壊し、地域部族が好き勝手に自己の方針を取り入れ始めた、ということのようですね。少し前には不倫をした女性が伝統の石打ちの刑で死刑になるということで「人道的でない」と揉めていたという話もありますし。
逆に南部はキリスト教が強いようで、このあたりの国内の宗教対立、加えてアフリカの宿命とも言うべき部族間の対立が加わっています。そのあたりの色々な問題に風刺画問題が火をつけたのかもしれませんが、ただ、部族間対立を煽る者については常に契機を求めているものですから、風刺画の問題だけを叩けば済むとも言いづらい気がします。
ついでにナイジェリアでは武装組織が南部の油田で爆破・誘拐など派手に活動を繰り広げています。国内の汚職も酷く、色々な部分で不満が渦巻いているといえるのでしょうね。

当事者でもないくせに何故か一番ノッている迷惑なフランス。
新たな風刺画を掲載して6倍の売上げをあげたという雑誌の編集長にインタヴューをしたという読売新聞の配信記事がありました。インタヴュー部分だけ全文掲載し、ちょっとした一言を加えました。
-何故掲載したのか。
「法治、民主主義の骨格を成す『表現の自由』が、中東イスラム諸国などの反発で危機に直面した。デンマーク紙のムハンマド風刺漫画を転載した独、伊など欧州マスコミと連帯し、表現の自由の重要性を訴えたかった」

ま、イスラーム自体のタヴー化に対する暗黙に対する挑戦としては正しいでしょう。
-イスラム教(ママ)侮辱との批判があるが。
「イスラム過激派は、欧州の法治、民主主義体制を壊すことに挑戦している。過激派の伸長は欧州に混乱をもたらし、イスラム教徒が欧州で同化する上で障害になる。欧州の民主主義を守るにはイスラム教の侮辱もやむを得ない。ただ、風刺は過激派の危険性を問題としたもので、イスラム全体への批判ではない」

ムハンマドについては母音に近い言葉ということで採用しているのに、いつまでもイスラム教という呼び方を使うのは何故(イスラームという言葉自体に「教え」という意味があるので、イスラム教だと「教えの教え」になり意味が重なってしまうのだそう。類似例にチゲ鍋)? これも表現の自由ということかな?
「民主主義を守るためにはイスラームへの侮辱も仕方ない」というのはさすがに自由を闘争と革命の末に手に入れたフランスならでは。一応、現実論としてはムスリムが多数派になれば、反対意見から許されなくなるという危機感などもあるでしょうし、是非については何とも言いづらいですね。
―キリスト教など他宗教だったら風刺しなかったのでは、との指摘がある。
「キリスト教やユダヤ教は欧州の民主主義を否定していない。もしイスラム教過激派と同様、民主主義のあり方に挑戦すれば、当然、風刺する。差別ではない」

このあたりは怪しいな~。西欧人のタブルスタンダードについてブーブー批判している人の批判なんか浴びせてみたいところ。
-風刺の精神とは。
「正義だ。欧州各国は政教分離のために長年、闘ってきた。宗教が国家より高い位置を占めれば、この原則が崩れてしまう。歴史認識が正しいと思えば、たとえ批判を受けても、風刺で堂々と主張しなくてはならない」

そんな崇高なものだったんですね。
私は「風刺」とは正義を気取る人達を揶揄したり馬鹿にしたりするものだと思ってましたよ(笑)。
-中東などのイスラム諸国で反発が強いが。
「各国政府がこの問題を政治的に利用して混乱を拡大させている。事前届け出が必要なシリアやイランなどでデモが起きているのが証拠だ。デンマークの過激派がより挑発的な風刺漫画を中東で配布し、問題を複雑化させている」

その通りだが、貴方達も問題を複雑化させていると思うのですが…
しかし、文句を言うのも重要ですが、売上げが6倍になったという事実自体も興味深いですね。何故風刺画掲載の雑誌を買ったのか。潜在的なイスラーム系移民に対する反感か、単に怖いもの見たさか、過激なタイトルに誘われたからなのか…

預言者戯画事件2(プチソ連)
配信記事などにはあまり出ていませんが、旧ソ連各国(特にイスラーム系の中央アジアなど)の状況を記事にされています。なお、ロシアでは風刺画を掲載した新聞が政府によって発行停止に追い込まれたそうです
これまた、風刺画を利用した違う問題になっているように思います。

また、発端となったデンマークでは首相の「謝らない」発言に国民の多くが支持しているのだそうですね。支持は反対の3倍近くあったそうです。どちらともいえないも多かったそうですが。

なお、国連の人権理事会創設に向けての総会の中でも、イスラーム諸国は「宗教に対する中傷禁止」など三つの文案を入れるよう主張していたそうです。が、議長案では「特殊事情、歴史的、文化的、宗教的背景は留意されるべきだと再確認する」としており、結局「表現の自由」とのバランスに配慮した表現でまとめらたそうです。

今後も色々な世界の問題点を露呈されてくれそうなこの問題。
これも神の与えた一つの大きな試練ということなんですかね。

神の意識を伝えるのも表現、神を風刺するのも表現…さてはて。
これって風刺文? 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
・・・。 (ゼシカ)
2006-02-24 22:07:25
宗教問題は難しいデス・・・



表現の自由とはどこまで自由なのかも疑問ですが、宗教は・・・
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>ゼシカ様 (川の果て)
2006-02-24 22:17:26
素朴な信仰心は確かに難しいです。ナイジェリアの話は部族の信仰心によるところもあるのかもしれませんし。



ただ、信仰心を利用してその実、経済、政治的利益を得ようとしている動きも多いのが残念です。これは宗教だけでなく、表現の自由の方にも言える話だと思いますけれど。
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遅いレスで申し訳ないです (ぺり公)
2006-03-01 15:23:54
この雑誌編集者のインタビューは興味深いですね。理想を貫いて収益も上げたという奇跡のような話ですしね。

それはさておき編集者の話からは、自分らの価値観を守るためにはケンカも辞さずという態度も見えるような気がして、感心すると同時にそういう絶対的な価値観同士のぶつかりに解決はないかもな、とウツな気分にもなります。



相手と意見を同じくできないことを知る、という理解の仕方もあると思うのですが、そうも言ってられない事態でしょうし。
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>ぺり公様 (川の果て)
2006-03-01 19:04:19
価値観を守ることについて、私はそこまで絶対的なものか疑問もあります。

価値観自体を大切にするというよりかは、それを守ることによって得られる利益というのに大きなウェートがあるようにも思うわけです。少なくとも雑誌などの商業活動については。



となると、それを求める購買側の意識を突き詰めてみたいとも思うのです。

市民の潜在的意思にマッチしたからなのか、「買ってはいけない」系の見てみたいからという意欲にかられたのか。そのあたりにも興味があります。前者であれば、根本的な解決は難しいでしょうね。



理解できないことを理解する。大切なことのように思いますが、中々難しいですね。
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