ーファミリー・ツリーーTHE DESCENDANTS
2011年 アメリカ
アレクサンダー・ペイン監督 ジョージ・クルーニー(マット・キング)シャイリーン・ウッドリー(アレクサンドラ・キング)アマラ・ミラー(スコッティ・キング)ニック・クラウス(シド)ボー・ブリッジス(従兄弟のヒュー)ロバート・フォスター(スコット・ソーソン)ジュディ・グリア(ジュリー・スピアー)マシュー・リラード(ブライアン・スピアー)メアリー・バードソング(カイ・ミッチェル)ロブ・ヒューベル(マーク・ミッチェル)パトリシア・ヘイスティ(エリザベス・キング)
【解説】
『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督と、『オーシャンズ』シリーズのジョージ・クルーニーがタッグを組んだ感動作。ハワイを舞台に、家族崩壊の危機に直面したある一家の再生のドラマをユーモアを交えて映し出す。クルーニーが父親役で新境地を開拓し、シャイリーン・ウッドリーとアマラ・ミラーという期待の若手女優たちが彼の娘を好演。独特のハワイ文化を背景に、さまざまな要素が入り混じったドラマが共感を呼ぶ。
【あらすじ】
マット(ジョージ・クルーニー)は、妻と2人の娘と共にハワイで暮らしていた。ところがある日、妻がボートの事故に遭い、そのまま昏睡状態となってしまう。それをきっかけに、妻が彼と離婚するつもりだったことや、そのことを長女(シャイリーン・ウッドリー)だけでなく友人たちも知っていたことが判明しショックを受ける。(シネマトゥデイ)
【感想】
原題は「THE DESCENDANTS」、末裔という意味だそうです。
そう、マット(ジョージ・クルーニー)はカメハメハ大王の娘と結婚したイギリス宣教師の末裔なのです。
マットは、ハワイのオアフ島在住で、不動産専門の弁護士です。
先祖から残されたカウアイ島にある広大な土地を島内外のリゾート会社数社が買いにきていて、親族会議を開き、権限のあるマットが決定を下さなければならない日も近づいています。
そんなある日、ボートレースに出場していた妻エリザベスが事故にあって、頭を強打、植物状態に。
家庭はエリザベスに任せていたマットは、二人の娘の扱いに戸惑います。
長女のアレックスは思春期の反抗期、次女のスコティは単純なわがままでマットを苛立たせます。
☆ネタバレ
でも、アレックスの不機嫌の原因は、他にありました。
母の浮気を知ってしまったこと。
ママを許せないという思い。
マットとアレックスは、エリザベスの浮気相手を捜し始めます。
そして、カウアイ島のリゾート用のコテージでとうとう見つけました。
浮気相手のブライアンには美しい妻とかわいい子供たちがいて、「エリザベスとは遊びだった」と言いました。
他人の不幸は面白い、そんな意地悪な見方もできるこの作品。
ジョージ・クルーニーが妻に浮気された中年男を、実に自然に演じています。
よたよたと走り回る姿は実に滑稽です。
全編ハワイアン。
全編アレクサンダー・ペインワールドです。
でも、よく考えたら、マットばかりが不幸なんじゃありません。
この映画を見ている人全部が、なんらかの不幸を抱えています。
人間も人生も完璧ではあり得ません。
そういうことを、深く胸に刻む作品でした。
エリザベスの父親は、事故の原因が仕事に没頭して、お金にはケチなマットのせいだと責め続けます。
口答えをしないで、じっと耐えるマット。
アレックスとそのボーイフレンドのシドがマットをかばってくれるシーンがとても良かったです。
マットには、義父のぶつけるところのないエリザベスへの愛情の裏返しだということがよくわかっていましたから。
父より先に逝く子供の親不孝。
こんな悲しいことはないですからね。
浮気相手のブライアンに、エリザベスを見舞うように言っておいたのですが、現れたのはブライアンの妻のジュリー。
夫を問いつめて真相を知り、お見舞いにやってきました。
「エリザベス、初めてお会いするけど、あなたを許します」
夫が愛していたのは、エリザベスではなく私なんだから許すわ、ということです。
家庭を捨ててブライアンと一緒になろうとしていた妻は、マンガやなあと、マットは情けなかったでしょうね。
先祖の土地は、エリザベスや子供たちとの思い出がいっぱい詰まった場所でした。
マットには妻に逝かれた後、この土地を手放ことなんてできなくなっていました。
数々の試練に耐えて迎えたラストシーン、娘たちと、エリザベスを包んでいたハワイアンキルトにくるまって、テレビを見ているマット。
これが彼の日常であり、至福の時間です。
あたりまえにあるもの、それがかけがえのない幸せだと、気づかせてくれる作品でした。
妻は結局亡くなるのですね。
自分がヒロインになった気持ちのまま逝けるなら、彼女にとっては幸せだったのかもと思ってしまいました。(もし目覚めたら身の置き所が無く感じてしまいそう)
遺された家族の絆の再生を何気なく、でもしっかりと描いているようですね。
事故というのは、どこで待っているかわからないからね。
この場合、マットの妻に降りかかったのですね。
彼女の身になれば、これで良かったともいえるかな?
残された家族は、かなり辛いけど、これも絆を強くさせる出来事となれば、乗り越えられるかなあ。
現実には、この傷はなかなか癒えないでしょうね。
この映画も、コメディなんだと思います。
深刻な出来事をコメディとして表現できるのは、いい映画の証拠だと思っています。
この作品は、かなりよかったです。
あのボーイフレンドは、いいアクセントになっていましたね。
いい子でしたね。