長州大工の心と技 その5 永田三島神社、川崎神社

                                           
                                                   
永田三島神社

この神社は仁徳天皇の時代(5世紀前期)九州より来て伊予の国永田の里を造ったと言われる長田連(ながたのむらじ)を祭るために建てられたのがその始まりと伝えられます。
元禄6年(1693)伊福城主直系の仙波氏によって今に見る神社の原型が造られます。明治に入り、東に山一つ越え流通も盛んであった砥部の総津に総森三島神社が落成したとの噂を聞き、長年の宿願であった本殿、拝殿を備えた神社の普請を実現すべく門井宗吉、友祐の兄弟が招かれた・・といった経緯であったと想像されています。
神社沿革誌には「明治25年6月本殿斧始、明治26年9月上棟式、遷宮式、明治27年9月拝殿屋根(草葺きを瓦葺きに改築)10月上棟式、大工棟梁、本殿、拝殿とも山口県周防大島郡家室西方村字本郷 門井宗吉門井友祐の両人」と記されているといいます。門井宗吉は大工棟梁として、また門井友祐は彫刻師としての役割分担が明確になりつつある時代と見られています。
拝殿は屋根の改築とともに前拝部の改築も行われたものと思われます。木鼻の獅子や獏は永徳寺大師堂で見られた門井家特有の表情を有するものですが、水引虹梁上の蟇股は「二見ヶ浦の夫婦岩」夫婦円満、家内安全、海上安全などを願う伝統的な図柄で、他の神社にはあまり見られないものとなっています。
本殿の木鼻の龍や獅子についても門井家特有のものと見られますが、本殿で特に注目されるのは縁の下部の腰板に彫刻が施されていることです。それは各面3枚、3面に及んでいます。題材は中国の仙人の説話や「牛若丸と弁慶」など当時ポピュラーであったと思われるものが選ばれています。その図案の大胆さと彫りの巧みさは唖然とさせられるほどです。この彫刻はこの後、炷森三島神社など多くの神社の装飾に影響を及ぼしたものと言われます。
この他本殿側面は猿や獅子などの動物が躍動していますし脇障子も「加藤清正の虎退治」など迫力のあるもの。
この本堂は、まさに彫刻に満ち満ちているのです。これらは彫刻師の提案を住人が承認すると形式で為されたようで、住人にとっても心躍る楽しい過程であったと思われます。

中山の街は近接した二つの神社のお祭りで何やら賑わった雰囲気。仕事に忙しそうなおじさんに道を聞いてはいけません。「そんな神社、なんかそんへんにあったのー・・」。年かさのおばさんに道を聞くべきです。車の置場まで親切に教えてもらえます。

拝殿


拝殿水引虹梁上の「二見ヶ浦の夫婦岩」


拝殿木鼻の獅子


本殿


本殿木鼻の龍、虹梁、手挟


本殿脇障子の「加藤清正の虎退治」


本殿脇障子の彫刻


本殿腰板の彫刻「弁慶」


本殿腰板の彫刻「牛若丸」


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


本殿腰板の彫刻


中山の街





川崎神社

川崎神社は中山町の町中、永田三島神社の南400mほどにあります。永田三島神社が平地であるのに対し小高い丘の上。
社伝によると第53代淳和天皇の天長元年(824)の創立と伝えます。祭神は孝霊天皇、後に菅原道真を合祀して社号を天満宮とします。江戸時代には大洲藩主の崇拝篤く加藤泰候の自書した「天満宮」の扁額が拝殿奥に掲げられています。
川崎という社号は、中山川、栗田川が合流している崎ある社であるという意味と伝えられます。
今にある社殿(本殿、拝殿)は明治27年に建てられたもの。棟札には、本殿棟梁 門井宗吉、拝殿棟梁 吉金庄次郎の他長州それ以外を含む多くの大工が名を連ねているといいます。一か所の神社の普請では珍しいことであると言われます。それらの大工の中に門井友祐も含まれます。門井友祐はここでも彫刻師としての参加であったと考えられています。
中山の街中に「神清」「智明」と刻まれた注連柱。そこから始まる石段が神社の入口です。やがて杉林の中、素朴な手水舎も好ましい。拝殿は永田三島神社に似た形式。前拝、水引虹梁上の龍、木鼻の獅子。獅子の口は赤い。まさに門井の獅子と思わせられます。
本殿の木鼻の龍は永徳寺大師堂のそれを思わせる巨大なもの。本殿の周りは暗く狭く足場も悪い。脇障子の彫刻(「神功皇后」「武内宿祢」とおもわれますが)は迫力ある優れたものと感じさせられますが、カメラのピント合わせには苦労します。(やはりピンボケ)

注連柱、鳥居


手水舎


拝殿


拝殿前拝木鼻の獅子


拝殿前拝木鼻の獅子


拝殿前拝水引虹梁上の龍


本殿

本殿


本殿木鼻の龍


本殿脇障子の彫刻


本殿脇障子の彫刻





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