珈琲ひらり

熱い珈琲、もしくは冷珈なんかを飲む片手間に読めるようなそんな文章をお楽しみください。

ま、の続きが気になります。

2005年02月22日 | 雑記
『ブラッド・ムーン』

 ドームの外の街では静かに異変が起きていた。
 例の男のチームの奴ら全員が消えたのだ。
 そしてそれに合わせたかのようにドームの中でも変化が起きた。
「今日からはここへお願いします」
 いつもと同じアタッシュケースと一緒に初めての時と同じようにメモ用紙を渡された。
「いつもと住所が違うんだな」
 僕がそう言うとかげろうのような男は薄く笑って「ええ」と頷いた。そしてこう付け加えた。「ああ、だけどがっかりすることはありませんからね」
 眉根を寄せた僕だったけど、そのメモ用紙に書かれた住所に行った時にその意味を理解した。
 ドームの建物はすべて統制されている。だから建物の高さも、形も色までまったく一緒。その場所だけは違う見慣れた建物はだけど二階の窓から僕を眺めるカナリアがいた。
「引っ越した?」
 インターホンを鳴らした。
『ああ、運び屋さんね。待っていてちょうだい。今、玄関の鍵を開けるから』
 玄関の鍵が開いた。
 中から出てきたのは中年の女性であった。
 そして中から聞こえてくるのはいつも聴くカナリアの声だった。

 外の街に帰った僕は廃車のボンネットに座って、分厚い紫の雲に覆われた空を眺めていた。
 数百年前の戦争でこの地上からは空は失われた。
 これより未来はどうなのかは知らないが、少なくとも数百年前からは空は失われていた。
 空を包み込む分厚い紫の雲を僕は見つめていた。
「あ、あの、AAA」
 掠れた声。それに含まれるのは恐怖だ。
 そちらに視線をやると、例の子どもがいた。
 ただ見つめるばかりで何も言おうとしない僕に彼はおどおどとしながら言った。
「あ、あの、ミーシャが病気なんだ。それで・・・」
「それで?」
「お、お金を・・・お薬を買う・・・お金を貸してください。か、必ず返しますから・・・」
 彼は言いにくそうにそう言った。
 そして僕はポケットにあったお金をすべて投げ渡した。
「返さなくっていいから」
 そう言った瞬間、彼はとても哀しそうな顔をした。
 思えば不思議な子どもだ。あの事件以来、他の子ども達は僕の周りから消えた。だけどこの子だけが変わらずに僕にくっついてくる。
「なんでそんな哀しそうな顔をする?」
「だってAAAが哀しい事を言うから」
「哀しい事? 何が」
「だって、借金でもそれはAAAと僕との繋がりだから・・・」
 おかしな事を言うと思った。
 ――繋がりなんかいらないじゃないか。
 そしてまた独りとなった。
 紫の空を見つめる。そこに何かを探すように…。
 そう言えば僕は月の光を求めなくなった。
 月の光を考えなくなった。
 ここに来るまで…いや、カナリアに出会うまでは死と同意語であった月の光。それを考えなくなったのは 僕が死を求めなくなったから? 
 違う。僕は相変わらず生に執着なんかしていない。
 じゃあ、どうして?

『月はもう見えないわよね、永遠に。だけどこの崩壊した世界のどこかにあるドームには月の光の結晶が住むという話を聞いたことがあるわ。月の光をこよなく愛する一族がいて、その一族は月の光が無いと生きていけないのよ。だから彼らはこの星のどこかに埋まっていた月の欠片からそれを作ったって。そして自分達が作った月の結晶の光に照らされ癒されながら生きているって。貴方も実はその一族だったりしてね。永遠に本当には癒される事の無い人。だってそれは本当の月じゃないんだから』

 探し求めていた答えを見つけたような気がした。
 次の週、僕は仕事をサボった。
 かげろうのような男との待ち合わせの時間となってもその場所には行かなかった。
 僕は月を求めていた。
 死ぬんだったら月の明かりに照らされながら死にたいと望んでいた。
 それに執着するあまりか僕はどのような死の局面に立たされても生き残った。生になんか執着していないくせに。
 だけど実はこうであったら?
 僕はこの街にカナリアがいることを無意識に知っていた。だからカナリアに出会うまでは死ねぬと、無意識に生存本能を発揮させてここまで生き残ってきた。ただ月を求めて。
 そして僕はここでとうとう月を見つけた。
 だからここに居着いた。
 あれだけ想った月の光を浴びる事―――それは毎週一回カナリアの歌声を聴く事。
 そう、僕はもう死ぬ環境を得ているんだ。
 あとは誰に殺されるか、だけ・・・。
 僕はそれを確認するために仕事をサボった。
 彼女の歌声を聞かなければ、また僕の心は月の光に飢えるのかを知りたくって。
 結果は地、獄だった。
 胸が苦しい。
 胸が張り裂けるようだ。
 ただカナリアの歌声を想った。
「やっぱり彼女が僕が求めていた月なんだ」
 それを確認した時、新たな疑問が生まれた。
 じゃあ、こんなにもカナリアを欲する僕は誰なんだろう?

『月はもう見えないわよね、永遠に。だけどこの崩壊した世界のどこかにあるドームには月の光の結晶が住むという話を聞いたことがあるわ。月の光をこよなく愛する一族がいて、その一族は月の光が無いと生きていけないのよ。だから彼らはこの星のどこかに埋まっていた月の欠片からそれを作ったって。そして自分達が作った月の結晶の光に照らされ癒されながら生きているって。貴方も実はその一族だったりしてね。永遠に本当には癒される事の無い人。だってそれは本当の月じゃないんだから』

 僕は本当にその一族なんだろうか?
 あのかげろうのような男なら、僕の知りたいその答えを知っていると想った。
 様々な理由で次の週の仕事の日が待ち遠しかった。
 僕はかげろうのような男と出会うためにいつもの場所に行った。先週仕事をサボったから、もう彼はそこには来ないのではないのかとは思わなかった。何の理由かは知らないが、ドームの中に入れるのは僕だけだと気づいていたから。
「やあ、やはり今週は君がちゃんと来てくれましたね、AAA君」
 君が?
「ああ、何も訝しむ必要もありませんし、何も君が気に病む必要もありません。では、仕事を。いつものこれと、それと今日からはここへお願いします」
 アタッシュケースと一緒にまた新しい住所をメモった紙を渡された。
「また、住所が変わったのか?」
「と、言うよりも相手が、ね。ちゃんとルールは守らねば。ああ、君が気に病む必要はありませんよ。私と君との間にあるルールに仕事をサボらないというルールはありませんから。そう、君も今回のサボりでそんな事をしても自分が苦しいだけだという事を理解したでしょうから」
「・・・」
 やはりこの男は知ってる。
「貴方は僕の知らない何を知っている?」
「君は君だ。今の君がすべてだろう?」
 男はそう言って笑うと、その場から消えた。

 僕はいつものようにドームに入った。
 そして新しい住所にやはりカナリアはいた。
 彼女の声が月の光だと認識した僕は家の中から聞こえてくるそれにすべての感覚を向けた。
 どくん、と心臓が脈打った。
 ものすごく恋しくって、切ない・・・
 ―――欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。カナリアが欲しい。
 気が狂いそうだった。
 いや、もう壊れているんだと想った。
 僕は懐の拳銃に手を伸ばした。そこでふと左胸が痛んだ。痛んだのは心じゃない。古傷だ。
 その傷の痛みに僕は何の意味も無くすべてが怖くなった。
 僕は悲鳴を大きく開いた口から迸らせながら道を走った。
 その僕の前に小さな人影が立った。
 僕はその影にぶつかって、一緒に転んだ。
 冷たく硬い石畳に両手をついて体を起こすと、僕の下にいたのはあの子どもだった。
「AAA。助けてぇ。僕を助けてぇ」
 彼は泣きじゃくりながらそう言った。そしてそう言った彼の首筋には二つの小さな傷と、そして大きく開かれた口からは犬歯と言うには鋭すぎる八重歯が覗いていた。
「おま、え、どうしてここに?」
 彼は泣きじゃくるばかりで何も言おうとはしなかった。
 とにかく僕はここでは埒があかないので、彼の手を引っ張り、助けてと言う癖に外へ連れて行こうとするのを嫌がる彼を無理やりドームの外に連れ出した。
 瞬間、彼の全身が焼けるように崩れ出した。
「な・・・」
 彼の全身に広がっていくケロイドのような傷を僕は大きく見開いた両目でただ見つめる。
「早くドームの中に入れないと、彼、死んでしまいますよ」
 どこからか現れたかげろうのような男が子どもを抱きかかえて、ドームの中に入っていった。

 僕らは一番最初にカナリアがいた家に来た。
 家具も何もかも置き去りにされたそこで、僕はベッドに眠る瀕死の子どもを横に男を問いただした。
「先週、君、仕事サボったでしょう。それでその代わりこの子が来たんです。ほら、この子、いつも君の後を追っていたから行動パターンは把握していたんでしょうな。それで時間になっても現れぬ君に諦めて私が去ろうとしたら、この子がいつもの君の仕事を自分がやると言い出したのです。まあ、私の仕事はぶっちゃけアタッシュケースさえ届けばかまわないんですよね、それで。君を選んだのはただ面倒事が無いから選んだだけですから。だから彼に行ってもらった。ドームの中へ」
「面倒事・・・」
 僕に彼は最後まで言わせなかった。
 彼は僕の皺を刻んだ眉間に銃口を押し付けると、何の躊躇いも無くトリガーを引いた。
 そして本当なら僕はそれで死んでいるはずなのに、なぜか目を覚ました。

 ―――どうして?

「簡単な話ですよ。君が人間じゃないからだ。ここのドームに住む彼らと同じ闇の者。この子どもと同じで元々は人間であったんですけどね。ああ、不思議に思ったでしょう。だったらなぜ君も外の空気に触れた途端に死なないのかって。過程が違うから結果も違うんですよ。あの子は血を吸われて、ウイルスに汚染され、何千万分の一の確率によって闇の者になった。反対に闇の者であった君は人間の心臓を取り付けられたから、そうなった。普通は異種族の臓器など着床しないのですよ。君はすべてが規格外なんですよ」
 彼は僕に笑うと、続けた。
「仕事を続けなさい。そうすればドームに暮らせない紛い物の君でもカナリアの声を聴ける。あれの声は君らの生命エネルギーを高める効能を持っている。現に君もあれの声を聴くようになってからは心が満たされているはずだ。アタッシュケースを運び続ければ君はカナリアの声を聴ける。我々人間ではあの子どものように、そしてあの子どもを殺そうとした男の仲間達のようにドームの中の奴らに血を吸われて死んでしまうか同類になってしまうんだ。奴らは汚染された外の奴らの血を吸えば自分達も死ぬとわかっているのに、本能で人を襲い血を吸い死んでしまう馬鹿な奴らだから。ここに君がいなければ私もドームには入りませんよ、実際ね」
 ・・・。
「一つ、訊きたい・・・」
「なんです?」
「貴方らがカナリアを作った?」
「ああ。月の欠片から作り上げた。この地上で一番の美しき物だよ、あれは。だからあれもこのドームの中でしか生きられない。それに君ら闇の者に触れられただけでも死んでしまう。そしてその逆もしかり。君らには綺麗すぎるんだね」
「貴方ら人間は彼らに生命エネルギーを与える事のできるカナリアを提供することで何を得ている?」
「血、ですよ。奴らの血には魔力が流れている。その血に流れる魔力を使って、魔導科学を確立させようとしているのですよ。この未来の無い星から抜け出すために」
「前の僕は貴方を知っていた?」
「ええ。両方とも知っていましたよ。君の左胸にある心臓は月の結晶にされたカナリアの恋人の者だった。その彼はカナリアを救い出そうと、人間の癖に彼らに立ち向かい、殺された。それをうちのスタッフが回収して実験でその肉体に心臓を移植したんですよ。でも、失敗だった。いや、失敗だと誤信してしまった。廃棄所で廃棄されるぎりぎりに覚醒し、生き延びたんでしょうな、君は。で、君はいったいどっちなんですか体か心臓か」
 僕はすべてを思い出していた。
 そう、死ぬ間際に僕は願ったんだ。カナリアを助けたいと。
 そう、僕は彼女を殺し、殺されるためにここまでやって来たんだ。
 僕は相棒の旧式回転装飾拳銃を片手にその家を飛び出した。
 そしてカナリアがいる家を目指そうとした。
 だが、その僕の前に彼らが立ちはだかった。僕が人間であった時と同じように。だけど今は僕も同じ存在だ。そして純粋な闇よりも光と闇が混沌する僕の方が異形だったんだ。
 僕は彼らを皆殺しにした。
「カナリア」
 僕は彼女を呼んだ。
 窓から外を眺めながら歌を歌っていた彼女は静かに僕を振り返った。
「カフス。ようやく迎えに来てくれたのね」
 そう、それが僕の名前。
「ようやく見つけたよ。これでようやっと君を抱きしめられる」
 腕を大きく開くと彼女は僕の胸に飛び込んできた。
 ぎゅっと抱きしめる。
 体と体を・・・
 唇と唇を・・・
 そして心と心を重ね合わせた。
 その瞬間に彼女は光となって蒸発し、僕も僕の中に流れ込んだ許容量を超える力に崩壊していくのがわかった。
 床に仰向けに転がる僕の顔をかげろうのような男が覗き込む。
「ありがとう。計画通りだよ。君も知っての通りに私ら人間では闇の者は殺せない。ドームの天井を開閉してしまえば殺せるが、それでは大切な魔力を含んだ血までも蒸発してしまう。まったくのイレギュラーだった君が人間を救うんだ。ありがとう」
 笑う彼を眺めながら僕も笑った。
 彼は忘れているから。
 このドームにまだ・・・
「うぎゃ―――」
 かげろうのような男があげた断末魔の声を聞きながら僕は瞼を閉じた。

 闇の中でただ青白い蒼銀色の光に包まれているカナリアが笑っていた。

 【END】


 OMCの試験で提出したお話だったりします。^^;
 だから約1年と半年ぐらい前のお話でしょうか。^^;


 それにしてもデスノート、すごい展開だったですね。(><
 本当にま、の後が気になります!
 これが判るのは最終回なんでしょうね。^^; もうラストも近いのかな?
 ディー・グレイマン、ナルト、銀魂、21、武装蓮金も面白かったので満足です。でも子どもの頃はジャンプって買ったら全部読んでたんですけどね。^^; なんとなく読まない漫画もあるのに買うのはもったいない気もしないでもありません。^^;

 ガンダム、第二のナグモさんのカキコが面白くって笑えます。なんとなく最近は第一のカキコで笑って、テレビを見てそれを確認して楽しむというなんとなく変な見方です。^^;
 でもきっとメイリンが裏切るのではなくって、Vの時のカテジナみたいにルナマリアが裏切るのだと想う。そして結構土曜日のブログってガンダム関連の記事が多くって笑えます。

 ツバサの新刊も読めて満足でした。^^ 今回は敵の事が少し知れて、おおーという驚きがあって。
 小狼がどうなるのか楽しみです。^^


 それでは読んでくださりありがとうございました。^^

『恋文』(見習い天使の天ちゃん改めて、こばとちゃん)

2005年02月12日 | 雑記
『恋文』

「まあ、あの方何をしているんですの? ずぅ~~っと殿方の後をおつけになられて? …………はわぁ、まさかあれが世に言うストーカーって奴なんですの!?」
「こ、ここは天使………見習いとして注意した方がいいですわね。うん」
「ちょっとちょっと、あなた、先ほどからずぅ~~とあの殿方の後をおつけになられて。あなた、世に言うストーカーなんですの? おやめになりなさい、そういうの。好きだからって何でも許される訳じゃないんですのよ!!!」
「はあ? あんた、何? 虫???」
「む、むむむむむ虫とは何ですの。わたくしは天使見習いのこばとですわ♪」
「天使、見習い?」
「何ですの! あなたも見習いじゃ有り難味が無いとかって言うんですの!!!」
「と、とんでもない。会いたかったわ、天使さん」
「ちょ、ちょっと、何するんですの! は、離してくださいですわぁ! きゃぁー。この天使見習い攫いぃーーーー」


「はい。プリンにワッフル、鯛焼き、大判焼き、あんまきにたこ焼き、お好み焼き、カップアイスでどうだ!」
「な、何ですの? こんなにもたくさんの美味しい物を持ってきて! はわぁ、まさかわたくしを飼う気ですの!?」
「違う。違う。飼うんじゃなくって、ば・い・しゅ・う。買収よ♪ うーん、やっぱりカップアイスは爽よね」
「って、それはあなたがわたくしにくれたんじゃなかったんですの?」
「ほらほら、泣かないの。たこ焼き美味しいよ、こばとちゃん。タコが大きいんだから♪」
「そうそう。タコの入ってないたこ焼きはたこ焼きじゃありませんですわよね。そしてタコが小さいたこ焼きもあの黒い奴みたいに大嫌いですわ! うーん、美味しいですわ♪」
「あ、食べたね!」
「ほぇ?」
「食べたからにはあたしの言う事を聞いてもらうよ?」
「ほぇー!」
「だから言ったでしょう♪ 買収するって」
「はわぁー。天使見習いのわたくしを買収するなんて~~。んー、ではもうしょうがないのでこの際、全部食べさせていただきますわ!」
「ダメぇー」
「はわぁ。わたくしのプリンちゃんにワッフル、鯛焼き、大判焼きあんまきにたこ焼き、お好み焼きちゃんがぁー」
「これはあたしの言う事を聞いてくれたらあげるわ」
「んま、あなた本気ですわね?」
「ええ。恋する乙女はね、強いのよ」
「鯉?」
「じゃなくって、恋」
「ああ、そっちですのね」
「けっ。だから見習いなのよ。このほっぺったぽちゃぽちゃ天使見習い」
「何か言いましたですの?」
「いえいえ、何も。それよりもさ、お願い。天使のパワーで彼をあたしにメロメロにして」
「め、メロメロって。でもでしたら、告白したらどうですの? 恋したら即行ですわ。さくさくと告白しなければ!」
「…や、えっとね、あのね、あたしも何度も告白しようとは想ったのよ。だけど勇気が無くって………」
「まあではあれは、ストーキングではなくって告白しようとしていたんですの?」
「え、や、はい。って、何を笑ってんのよ?」
「いえ、あまりにもかわいかったもので。でもわかりましたですわ。わたくしも天使見習い! 見事に成就させてみせましょうこの恋を♪」
「ほんとに!」
「ええ、本当に」
「じゃあ、さっそく彼をあたしにメロメロにさせて告白してくれるようにして!」
「ほぇ、それはダメですわよ。あなたが勇気を出して告白しなくちゃ」
「こ、このほっぺったぽちゃぽちゃ天使見習い、人の説明聞いてたの? 告白できる勇気があったら見習いなんかに頼まないわよ!」
「んま」
「もういいわ」
「諦めるんですの? 口で言う事ができないなら手紙で言えばいいんですわ。手書きで心を込めれば喜んでもらえますですわよ」
「……そうかな?」
「そうですわよ! 天使………見習いのわたくしがちゃんとサポートしますから、ですから勇気を出しましょうですわ」
「うん。がんばる」


「でもさ、こばとちゃん。どういう風に書けばいいの?」
「自分の気持ちを正直に書けばいいんですわ」
「えっと、橘瑞樹というそん所そこ等のアイドルなんかよりもものすごくかわいい女の子がいます。今すぐにその子に告白しないと、あなたは死にます!」
「あなた、バカですの?」
「ひ、ひどい。こばとちゃんが自分の気持ちを書けって言ったんじゃない!」
「ですから……うーん。では、この国語の便覧に載ってる歌をそのまま書いたらどうですの?」
「あ、それいいわね♪ 頂き」
「嘆きつつ ひとり寝る夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる なんてどうかな?」
「恋する前はこんな夜を過ごすなんて想像もしなかった。昼間はまだまし。あれこれすることがあって気が紛れるから。でも、夜になると…あなたがそばにいない、それだけでこんなに胸が痛い。寝てしまえばいい、と想う。でも、眠れない。夜明けまでの時間がこんなに長いなんて知らなかった。ですわね。でもこれって、愚痴ですわよね? 夫の帰りに待ちくたびれた妻が送った?」
「そうなの。でもわかんないわよ。彼、古文の成績は悪いから♪」
「あの、でしたら、この歌を送っても無駄なんじゃないですの?」
「あっ…」
「もうダメよ。やっぱりダメ」
「ばかー、ですわ。諦めたら可能性はゼロ。でも諦めなければ可能性はゼロではないですわ! 0と0.1って、すごく差があると想いますですわよ?」



「あ、なぁー」
「ん?」
「橘瑞樹とおまえって、同じクラスだったよな?」
「おう」
「あのさ、どんな子?」
「はい? 何だよ、真っ赤な顔をして」
「や、手紙もらって告白されてさ、で、気になちゃって……」
「おっー。天下の石田彰を落としたか! で、どんな内容だったんだよ?」
「言えるか、吉良。ばか」
 ―――石田君、好きです。付き合ってください

「世の中、やっぱりシンプルが一番ですわね♪」



 年賀状を除くのなら手紙は書いてませんね、久しく。^^;
 最後に手紙を書いてもらったのは教育実習の時です。^^
 実習最後の日に生徒たちがお別れ会をやってくれて、色紙と花束、手紙をくれて。^^
(ちなみに実習最終日の近くに日記で好きな花の色や名前、歌手なんかの質問攻めで、給食の時にはぎりぎりまで教室に入れてもらえなくって(クス玉を作ってました。^^)、なんとなくお別れ会をやってくれるのかしら? とバレバレでしたが、知らないふりをしてました。(笑い
 その実習最後の一日前の夜は大学の担当教授や実習先の先生たちの前でやる大切な授業があるので早く寝るように、と言われていたのですが朝方の4時くらいまでかかって生徒全員に手紙を書いてました。^^
 それで生徒40人ひとりひとりに手紙を最後の日に配って、その時にちゃーんと先生は皆の顔と名前を覚えましたよ、というのを証明できて、よかったな、と。^^ こういうのは生徒は嬉しいですものね。^^
 面白かったのは男の子のひとりと内容が被った事。うちの県は中学は若あゆ日記があって、実習中は僕が赤ペンで感想を書いてたのですが、最初の二日間は汚い字ですごく投げやりに書いてた子が居て、だけど二日目に担当クラスの先生が陸上大会の引率でいらっしゃらなくって、僕がその日一日のクラスのすべての雑務をまかされて、その日にちょうどレクリエーションの時間があって、ゲームをやって、それでも余った時間に日記に書いてあった皆の質問に答えて、そしたら偶然にもその男の子と大好きなモノが一緒な事が判明して、その日からは2行で終わっていた日記が上に切り取ったノートを貼り付けるぐらいに長くなって。^^
 それで手紙に○○君と語り合った事は忘れません! と書いたら、その子も同じ事を書いていて。本当にあれは大爆笑でした。^^
 僕は若あゆ日記は書いてなかったのですが、本当にそれに感想をつけるのはすごく楽しかったです。掃除とか給食の時間に喋りかけても恥かしがってもじもじとしてた子が日記はすごく長く書いてくれて。でもすごく答えづらい質問をしてくる子もいましたけど。(笑い
 嬉しかったのは登校拒否になりそうな子を笑わせる事ができて、担当の先生と一緒に喜び合った事かな。これは本当にすごく嬉しかったです。(拳


 ちなみに教育実習生って授業中に何をやってるんだろう?って想った事はありませんか?
 あれは1時間目9時50分から授業が始まる。9時55分 教師がまずは前回の授業についての復讐の質問をする。9時57分 生徒が答える。前回の授業目標は達成されているようだ。10時00分 教師が光合成についての説明を始める。10時10分 校庭に移動。葉にアルミホイルを巻く
 という具合に最初から最後まで授業の流れを細かく書いていくんです。そうやって授業の進め方の勉強をしてるんです。^^
 書類はすごい量があって、車の免許みたいに見学、実習の時間を何時間するか決められていて、その書類作り、学習指導要領と睨めっこしながら授業計画書を3枚作って、それから大学に出す冊子の書き込みなど等。
 実習中は最初と最後以外はすべて12時まで学校に残ってました。^^;
 真っ暗な中、職員室から帰るのはちと怖かったです。^^;
 ちなみに中高どちらでも実習に行けたんですが、高校を選ぶと高校生の妹がいたので、迷わずに中学の実習を選びました。^^;


 で、話がそれました。手紙ってその書き手さんの心が素直に出ますよね。
 嬉しい内容はその書き手さんが嬉しいから。
 悲しい時は哀しいから。
 ひどい文面だったら、やっぱりそういう気持ちになってるんでしょうね。
 人が人を傷つけてやる、って思う時はやっぱり自分への想いで一杯なんだと想います。
 裏切られた、と想ってしまったら、そしたら恥かしさや怒り、そういうので一杯になって傷つけてやれって。自分への自分がかわいそう、っていう気持ちで一杯になってしまっているんです。受け取った人の事を思いやる気持ちの余裕は無いんです。
 受け取った人は悲しいですよね。
 でも受け取った人がそれでもその出した人に優しさを見せれるのなら、それは救いだな、と想うのです。
 いつか人を傷つける手紙を出した人は目が覚めて、冷静になれる時が来ます。その時に傷ついて後悔するのは誰よりもその人。謝りたくても謝れない。でもどんなに自分の想いで一杯になっていても、受け取った人が優しさとか誠意を見せてくれていたら、それはそれでもちゃんと覚えているから、冷静になれた時にいかに自分がそれでも大切にしてもらっていたかわかって、救われると想います。
 何も言えなくっても、本当にいつか理解してもらえます。
 やっぱり時間が必要かな。人って決して馬鹿じゃないから、本当にいつかふとした切欠で自分がどれだけ酷い事をしていたかわかるんですよね。同じ事をされてしまったりして。
 んー、でも僕も偉そうな事を言ってるけど、結構知らずに人の想いを踏み躙って傷つけていたり、酷い事してたりします。
 中途半端な優しさで、せっかく色んな想いを込めて言ってくれた事を無下に切り捨てるような事。後から考えて、しまった、って後悔して。;
 本当に馬鹿ですね。


 ちなみに最近困る手紙っていうかメールは、ワンクリック詐欺メールです。一日6件ぐらい来ます。; 


 それでは読んでくださり、ありがとうございました。^^

牛丼

2005年02月11日 | 雑記
『ブラッドムーン2』

 瞼を閉じて生まれた闇。
 だけどその闇は完全なる死の漆黒の闇とは違う。
 どうやらまた僕は死ねなかったらしい。
 いるのかいないのか知らないけど、どうやら僕は相当に神様と言う奴に嫌われているようだ。それともそんなにも月の光に照らされながら死ぬ事にこだわっているのか…。
 瞼を開くとそこには男がいた。髪も瞳も白く、肌も血管が浮いて見えるほどに白い男が。どこかそれは僕にかげろうを思い起こさせた。
「貴方が僕を?」
 そう聞くと、彼はその真っ白な顔にしかし夜の闇よりも昏いどろりとした笑みを浮かべた。
「君の生命力さ」
「生命力、ね」
 皮肉な話だ。
「それよりも派手にやったね。店にいたマフィア全員を殺して」
「・・・」
 全員を殺した? 確かに血と硝煙の香りに何も感じないままに多くの人間を撃ち殺した覚えはあったが、全員を殺した覚えは僕には無かった。だけどまあ、どうでもいい話だ。
「そうか、マフィアか。なら、報復も当然あるだろうね。貴方が何のつもりかは知らないが、早くここから退散した方がいいんじゃないか?」
「おいおい、冷たい事言うなよ。これでも君の面倒を看たんだぜ、今更引けるかよ。それにマフィアの報復は無いさ。私が話をつけたからね」
 僕は眉根を寄せた。
 そんな僕の表情に彼は笑った。
「よい表情だ。だけど本当の事さ。私は君のような者を探していたんだ。君にしかできない仕事があるのでね」
 そういう事か。
「僕は別に生に執着してるわけじゃない。マフィアにつけ狙われようが、今ここで貴方に殺されようがどうでもいいんだ。だから平穏と引き換えに貴方の奴隷になるつもりはない」
「いやいや、勘違いせんでくれ。私は君を奴隷にしようなど思ってはいない。ただ配達屋をしてもらいたいだけなのだよ。週一回ドームにとある物を運んでもらいたいんだ」

 男はそのとある物が何なのかを結局、僕に説明しなかった。
 ただ、一度だけやってみろと言われた。
 気乗りはしなかったが、しかし一応看護という世話を受けたのだからこのまま彼と別れるのもあれであったので、しょうがなく一度だけその配達屋をする事にした。
 配達する物は小さなアルミのアタッシュケース一つであった。
 その報酬として前金で外の街では充分すぎるぐらいに暮らしていけるだけの金額を渡された。
 そして仕事を終えればその倍額が払われる事になっている。
 どうにもきな臭い話だ。
 だけど別に生に執着しない僕はだから何でも出来るわけで、それをこなした。
 外の街からドームに行き、ドームの外にいる門番に渡された身分証を見せる。すると胡乱げな目で僕を見ていたその門番は急に低姿勢になり、僕をドームに通した。
 ――あの男、本当に何者なんだ?
 ドーム。
 そこは崩壊した世界に作られた箱庭。
 統制された街並みに、
 遠い昔に失われた空を天井に映し、
 そして小奇麗な身なりをした人々が歩き回る場所。
 そこには飢えも、病気も、争いも無かった。
 だからこそすべてが無機質に思えた。
 浄化された空気すらも。
 男に渡されたのはアタッシュケースと一枚のメモだった。
 そのメモに住所が書かれていた。
 僕は誰もがみな同じ顔に見える道行く人々に混じり、道路に設置された標識を頼りにそこへと辿り着いた。
 そこは一軒の瀟洒な屋敷だった。
 インターホンを鳴らす。
『AAA(ノーネーム)様ですね』
「ああ」
 もう話がついている。楽な事だと僕は思った。
 中から出てきたのは老紳士だった。
 彼からは何の臭いもしなかった。そしてそれに相応しい笑みを浮かべて彼はアタッシュケースを受け取ると、僕に報酬を払った。
 さあ、帰ろう、そう想った僕の耳に少女の歌声が届いた。
「カナリア」
 老紳士が驚いたように呟いた。
 そして僕の後ろにある道を歩いていた人たちが足を止めたのが気配でわかった。それだけでなく彼らはずかずかと僕を押しのけて、その家へと入っていった。次から次へと。
 僕は何が何だかわからないまま閉められた扉を眺める。
 カナリア、それがこの歌を歌う少女の名前。
 その歌声も歌の歌詞も記憶にある物じゃない。
 だいたいから僕は昔の僕を知らない。
 知ってるのは今の僕になってからの僕と、時折感じる昔の僕の残り香・・・。
 屋敷の敷地から前を走る道に出る。
 ふと視線を感じて見上げると瀟洒な屋敷の二階にある小さな窓から君が僕を見ていた。

『ここにあるのは心臓さ。心はただの脳みその活動の総称だろう?』
『あら、だけど人を好きになったり、哀しかったりすると、左胸が痛いじゃない』
『わからないよ、そんなのは』
『あたしの心はとても熱いわ』

 カナリアを見た瞬間に左胸に感じた何かは今の僕にはまったく覚えの無い古傷がただ痛んだだけなのか、それとも・・・。

 僕はそのドームのすぐ傍にある外の街に居着いた。
 だけど相変わらず生には執着は無い。だから僕は報酬のほとんどすべてをその街の子どもらに分け与えていた。
 この街では奪うか奪われるか、だ。
 子どもらにあげた金はそれよりも力を持った者達に奪われる。
 だけど僕は別段それを知っても何もやろうとはしなかった。別に他人に興味は無いから。
 子どもらも学習するようで、金をもらう代わりに僕の周りにいついて、僕の食事を要求するようになった。
 他人に興味は無いけど、同じぐらいに自分の生にも興味が無い僕は子どもらにそれをあげた。
「はん。いいご身分だな、AAA。何やってんのか知んねーけどたんまり金もらって、それをばらまいて子どもらをはべらかしてって。おまえ、有名だぜ。ガキとやってるとかって」
 どこの街にもこういう馬鹿はいる。
 僕は相手をしない。
 だけどこういう馬鹿は総じて自己顕示欲が強くってプライドもひね曲がっている。それを代表して宣言するかのようにそいつは子どもの一人を担ぎ上げて、その子の首筋にナイフを突き立てた。
「すかしやがって! 何を無視してやがる。はん、いいのかよぉ? てめえの大事な玩具が壊れちまうぜ」
 白い首を飾った血のビーズに僕は目眩を覚えた。そして手は勝手に懐に伸びて、その手は旧式回転装飾拳銃を握ると、その銃口を男の眉間に照準し何の躊躇いも無くトリガーを引いた。

『ここにあるのは心臓さ。心はただの脳みその活動の総称だろう?』
『あら、だけど人を好きになったり、哀しかったりすると、左胸が痛いじゃない』
『わからないよ、そんなのは』
『あたしの心はとても熱いわ』
 
 僕は泣きじゃくるその子を抱きしめた。その子の白い肌を飾った血のビーズを見た時、左胸がぎゅっと痛んだんだ。
 そう、心が痛かったんだ。
 
「先ほどの諍い、見てましたよ」
 かげろうのような男は笑いながら言った。
「初めて出会った時の君はまったく他人には興味なんて持ってなかったのに、その君が、ね。驚きましたよ、本当に」
 吊りあがる口元。鼓膜に絡みつくようなどろりとした声。なぜかその時、僕はこの男と前にどこかで出会ったような気がしてならなかった。

 どこで?

 いつものように道に立った僕は窓から僕を見るカナリアを見上げていた。
 窓の向こうに見える彼女は蒼銀色の髪と瞳をした少女。その髪の下にある顔にはいつも哀しそうな表情しかなかった。
 カナリアという鳥と同じ名前を持った少女。
 ひょっとして彼女はそうやって僕に訴えかけているのかもしれない。外に連れて行って、と。
 だけど籠の外にいる鳥と籠の中にいる鳥とがどちらが幸せかなんて判らない。
 空を自由に飛べればそれは幸せ?
 だけどそれにはリスクがある。
 自分よりも力の強い何かに襲われるリスク。
 餌が取れないリスク。
 休む樹の枝が無いリスク。
 リスク・・・
 リスク・・・
 リスク・・・
 だけどこのドームという箱庭にいればたとえそれが偽りでも真の世界の汚さを知らないで済む。
 そう、何も今の満ち足りた生活を捨てていっきにどん底に落ちなくともいい。
 僕はそう思って、外を見つめるカナリアを見つめていた。

 ― つづく ―

 すんごい田舎の我が地区にも牛丼屋さんがあって、15時を過ぎても店の外まで行列ができていました。^^;
 でも美味しいですものね、牛丼。^^
 や、でも外で食べるんだったらラーメンがいいです。
 とんこつスープの油ぎとぎとのラーメンが好きです。(><
 大学の近くにあったラーメン屋さんが大好きで、よく食べにいっていました。^^
 すごく美味しいとんこつスープで、麺もすごく美味しかったですし、からあげもぴりっとしていて。^^
 土曜日や午後の講義なんかが無い時はそのお店に行ってレイブや一歩、奪還屋なんかを読みながら食べていたもんです。

 あとは教職の方のゼミは先生が騒ぐのが大好きでよく飲み会があったんですが、そのゼミの飲み会の幹事役はいつも同じ子がやっていたのですね。それで絶対にその会場となるお店は毎回同じお店で。その理由が幹事役の子が片想いしていた女の子がバイトで働いていたからで。(笑い
 だから先生や皆でその子をからかって、その女の子指名で注文を取りに来てもらったり。(酷い
 ちなみにそこのお店は大学の卒業生がやってるお店で、レジの所には創作料理の大会優勝の賞状なんかが貼られていたりしてすごく美味しくって。^^
 お酒は飲んでも酔わないし、性格もテンションも変わらないのでつまらないので、僕は食べるの専門で、色んな料理を注文して食べていました。そこのお店の焼きおにぎりはめさめさ大きくって、すごく美味しくって。いつも最後はその焼きおにぎりを注文していました。(じゅるり。いかん、よだれが。)
 でも居酒屋の王様はやっぱりイカリングだと。^^

 ちなみに手羽先の骨だけを上手に抜く方法を地元の友達との飲み会で教えてもらったのですが、未だにマスターできません。(--;
 そうそう。今はキャベツ、きゅうり、トマトが鬼のように高いからあれですが、トマトをちょい厚く切って、皿に綺麗に並べて、そのトマトの上にチーズを乗せて、レンジでチンすると美味しいですよ。^^
 
 読んでいただきありがとうございました。^^

『ブラッドムーン』

2005年02月10日 | Weblog
『ブラッドムーン』


彼女の知っている外の世界は部屋の小さな窓から見える世界だけ。
それはドームという箱庭の偽りの世界。
だけど僕は別にそれでいいと思っていた。
ドームの外の晴れる事の無い分厚い紫の雲の下にある世界は無慈悲で汚いだけだから。
僕が住む外の世界とは違うドームの中の高級住宅街にある瀟洒な一軒家に暮らす彼女の窓から見える世界は清潔で統制された街並みで、偽りでも天井には遠い昔に永久に失われたいつも透けるような青い空と、茜色の夕焼け空と月と星々が輝く夜空があるから。
だから箱庭に住める彼女は知らなくっていい・・・
―本当の世界なんて
―真実の空の色なんて
 そう、僕はそう想っていた。たとえ籠の鳥でも満ち足りた空間に住める彼女の方がずっと幸せだと。その籠がどんな異常な世界かも知らずに・・・。

 名前の無い僕はドームからドーム、薄汚れた外の街から外の街へとさ迷っていた。懐に忍ばせた旧式回転装飾拳銃を相棒に。
 だけど僕はその牙を使うけど、別に生きたかったわけじゃない。生になんて執着はしていなかった。矛盾した話、だから僕はこれまでの命のやり取りに打ち勝ってきたのかもしれない。本当に僕はそれを望んではいなかったのだけど。
「じゃあ、貴方は何を望んでこれまでの時を…無駄に過ごしてきたの? その拳銃だったらこめかみを撃ち抜くには充分でしょうに」
 見知らぬ街の見知らぬバーで客引きをしていたその見知らぬ娼婦はかすかな笑みをその美貌に浮かべながら、僕にそう訊いた。
 僕は手の中のグラスを揺らす。グラスと氷とがぶつかって奏でる音を聴きながらしばし考えて僕は言った。
「無意識に死に方を選んでいるんだ、僕は。僕は生きる事には無頓着だけど、死に方にはこだわっているんだよ」
「どういう死に方ならいいの? 腹上死とか?」
 娼婦らしい冗談を口にした彼女に僕は肩をすくめる。
 そしてもう一度グラスとその中の氷とを楽器にしてメロディーを奏でながら、それに合わせて謳うように言った。
「月の光に抱かれながら死にたい」
「月?」
「そう、月」
 きょとんとした彼女は、「月・・・」と呟きながら頷く僕をまじまじと見つめると、頬杖ついていた手をそのままスライドさせて額の上の前髪に赤いマニキュアを塗った指を埋めさせながらけたけたと声をあげて笑った。そしてようやく落ち着いたかと思うと、また僕を上目遣いに見ながら笑い出す。
 向こうのカウンターに座っている男達がこちらを怪訝そうに睨んでいるが、僕はそれを無視した。
 彼女はラジオから聞こえてくる旧世紀のノイズ混じりの音楽にあわせながら月の歌を歌った。
 僕がその歌の名前を訊くと、彼女は即興で作った歌だと咲いた花のように笑った。
 そして頬杖をつきながら彼女は僕が奢ったブランデーを口にしながら、僕に聞かせてくれた。
「月はもう見えないわよね、永遠に。だけどこの崩壊した世界のどこかにあるドームには月の光の結晶が住むという話を聞いたことがあるわ。月の光をこよなく愛する一族がいて、その一族は月の光が無いと生きていけないのよ。だから彼らはこの星のどこかに埋まっていた月の欠片からそれを作ったって。そして自分達が作った月の結晶の光に照らされ癒されながら生きているって。貴方も実はその一族だったりしてね。永遠に本当には癒される事の無い人。だってそれは本当の月じゃないんだから」
 わずかに小首を傾げた彼女の揺れた前髪の奥にある蒼い瞳は僕を憐れんでくれているように感じた。
「ねえ、あたしが貴方を癒してあげましょうか? 昔話に聞く夜空に輝く蒼い月の光は誰にも平等に注がれて優しい眠りに導いたって。あたしが貴方を抱きしめて、あたしの温もりで貴方を優しい眠りに導いてあげるわ。どっちも自慰じゃ寂しすぎるじゃない?」
 僕は別に他人の温もりなんか欲してはいなかった。僕の乾いた心はそんな事じゃ潤わないから。
 徹底的に乾ききった僕。
 その僕の浮かべた笑みを見て、彼女は微笑んだ。
「このいたるところに砂漠が広がった星にコップ一杯の水を零しても無駄なように、あたしじゃあ無駄って感じね?」
 僕は何も言わずにグラスのブランデーを空けた。そして席から立ち上がろうとする。と、彼女が僕の片腕に両腕を絡めてきた。そして僕を上目遣いに見つめる。
「貴方に月の光が必要なようにあたしも貴方の温もりが必要なのと素直に言ったら抱いてくれるかしら?」
「最高の口説き文句かもね」
 どうしてそう口にしたのかはわからない。ただ僕の腕に絡みつく彼女の両腕が温かかったからかもしれない。
 狭いベッドの上で彼女と唇と体を重ねた。だけど最後まで僕らは心を重ね合わせる事は無かった。
「心が空っぽなのね。きっとこの左胸の大きな傷は心を抉り出した時にできたのだわ」
 彼女は僕の上に乗りながら左胸の古傷をそっと指先でなぞりながら微笑んだ。
「ここにあるのは心臓さ。心はただの脳みその活動の総称だろう?」
「あら、だけど人を好きになったり、哀しかったりすると、左胸が痛いじゃない」
「わからないよ、そんなのは」
「あたしの心はとても熱いわ」
 彼女は乱れた髪に半分隠れた美貌に嫣然とした微笑みを浮かばせながら僕の手を自分の左の大きな乳房に触れさせて、唇を重ね合わせた。
 部屋の片隅に置かれたタンスの上の古いラジオからはただノイズ混じりの音楽が延々と流れていた。
 それはただ空虚な僕の中を流れていくだけだった。
 目を覚ますと、ベッドの上には僕だけだった。
 あれだけ小さかったベッドの広さはちょうどよかった。薄汚れた天井を見つめる僕はただそんな事を考えていた。

 見知らぬ街はノイズだらけ。
 嗅ぎ慣れた血と性の香りを鼻腔に感じながら、僕は昨日彼女と出会ったバーに来ていた。
「ブランデーを」
 カウンターに座り無愛想なバーテンにそう言うと、彼は数秒で僕の前にグラスに入ったブランデーを出した。
 別段やる事も無いし、舌の上で転がすブランデーも美味しいというわけでもないから、僕はそれを喉に流しながらカウンターの向こうでグラスを拭いているバーテンを眺めていた。
 店内に流れるノイズだらけの音楽に重なって澱んだ空気を震わせたのは扉につけられた小さなベルの音だった。
 横目にちらりと視線をやればそれは昨日の男たちだった。
「で、殺しちまったのか?」
「ああ、あまりにも聞き分けのねー事を言いやがるからよ」
「でも、いいのかよ、せっかくの商売道具をよ?」
「はん。薬や明日の生欲しさに体を売る女なんて吐いて捨てるほどいるさ、この腐った街にはな」

『ここにあるのは心臓さ。心はただの脳みその活動の総称だろう?』
『あら、だけど人を好きになったり、哀しかったりすると、左胸が痛いじゃない』
『わからないよ、そんなのは』
『あたしの心はとても熱いわ』

 やっぱり僕の左胸はどうともならない。
 痛むこともないし、熱くもならない。
 だけど僕の体は自然に動いていた。
 立ち上がって懐から旧式回転装飾拳銃を抜く。
 そして銃口をそこにいる男の頭部に照準して、撃鉄を上げると何の躊躇いも無しにトリガーを引いた。
 ノイズ混じりのラジオの声を掻き消したのはやっぱりノイズにしか聞こえない悲鳴と無機質な銃声。
 鼻腔をくすぐる血と硝煙の香りにも僕は何も思わずにただトリガーを引いた。
 僕には名前も記憶も無いのだけど、ただああ、僕はずっと昔からこうやって人を殺してきたんだと思った。
 だから僕は誰でも優しく光に包み込んでくれる月を探しているんだろうか?
 店はあっという間に血と硝煙の香りが飽和しきれぬほどに漂う修羅場となった。
 胸を撃たれて動きを止めた僕の体に次々と銃弾が撃ちこまれていく。流れ出る血と一緒に命も流れ出ていくような気だるさと冷たさを感じた。
 薄汚れた天井にあるライトから零れる明度の低い光を眺めながらそれは僕の求めていた光とは違うと思ったのだけど、その一方で僕にはおあつらえ向きだとも思った。
 そして僕は瞼を閉じて、闇に落ちた。

 ― つづく ―


 そうそう、空澄というのは、からすみ、と読みます。^^
 これは小説の主人公の名前で、字と響きが良かったので、使わせていただいているんですよ。^^
 ちなみに七姫物語という小説です。

 それでOMCの方は好きな漫画の登場人物の名前を合体させて使っています。
 ちなみにちゃーんと生年月日と名前を書き込んで調べる姓名判断で調べてから、決めました。^^
 占いは結構好きだったりします。^^
 新聞の十二支の運命判断も毎朝チェックしていたり。(笑い
 ちなみに気が早いせいなのか、自分の生まれ年よりも一年早い干支の占いの方が当たっています。
 でも占いって良い事は当たらないのに、悪い事はあたりますよね。^^;

 一度、香港辺りで占いしてみたいです。
 あと香港といったらタイガーバーム園ですか?
 
 香港などの道のほうまで看板が出ているあの混沌とした風景がすごく好きだったりします。^^

 でもその前に鎌倉、沖縄、北海道、屋久島ですよね。いつか一度行ってみたいです。^^

 スピカのライオン、てっきり前回で成仏したのかと想ったらちゃんといたので、ほっとしました。^^
 やっぱり子安さんのあの軽い口調は好きです。^^

 読んでいただきありがとうございました。^^

がんばれ、キャンチョメ。強いぞ、キャンチョメ。カッコいいぞ、キャンチョメ。(><

2005年02月09日 | 雑記
「こんにちわ、ですわ♪」
「………なにあんた?」
「天使の天ちゃんですわ♪」
「………あっそ」
「きゃぁー。あっそじゃなくって、他に言う事は無いんですのですわ?」
「だってあたし、天使なんて信じちゃいないし」
「むむ。何でしょう、その言い草。決めましたですわ。わたくし、あなたを幸せにいたしますですわ」
「はあ?」
「わたくし、見習い天使ですの♪ ですから正式な天使になるために良い事をしなくっちゃいけないんですの。ですからわたくしがあなたを幸せにしてあげますですわ♪」
「あー、はいはい。他の人でがんばってちょうだい。じゃあね」
「待ってくださいですわ!!! だからわたくしがあなたを幸せにしますですわ」
「正式な天使になってから来てちょうだい」
「………むむ。本当に口の減らないお嬢さんですわね」
「お褒めのお言葉ありがとう。じゃあね。はい、さようなら。バイバイ」


「まあ、美味しそうなご飯。やっぱり冬は鍋物ですわよね」
「はあ? なにあんた、食べる気満々なのよ? これはあたしの分だけ」
「むむ。わたくしだって鍋を食べたいですわ!!!」
「じゃあ、はい」
「……なんですの、その手は?」
「お・か・ね」
「まぁー。まぁー。まぁー。何てお嬢さんでしょう! 恐れ多くも天使からお金を取るんですの?」
「天使見習いでしょう? それじゃあ、ありがたみが無い」
「………」
「いただきまーす。まあ、美味しそうな鍋。うーん、美味ぃしーい。さすがはあたし。あー、わー、すごくお・い・し・い」
「ふふん。そんなに食べると太りますですわよ」
「残念でした。鳥の腿肉は太らないのよ。それに栄養満点で胸も育つ。あんたは、あーら、かわいそうに。胸も見習いサイズなのね」
「まあ、失礼な。わたくしはまだ発展途上なんですわよ」
「って、なにドサクサに紛れて鶏肉を食べているのよ? あんたなんかこれとこれとこれとこれで充分よ」
「って、全部白菜ですわ! って、いいんですの?」
「残すんだったらあんたにあげた方がまだマシなだけよ」
「ありがとうございますですわ♪ でも、それにしても随分と作りましたのね」
「母さんの分も作ったんだけど、母さん、取引先の人と外食になっちゃったのよ。しょうがないでしょう。それも仕事なんだから」
「えっと、わたくしをお母さんと呼んでもいいですわよ?」
「バーカ。だからあんたは見習いなのよ」


「ちょっといつまでそこにいんのよ。邪魔よ、邪魔。ちゃっちゃっとどっかに行っちゃってよ」
「だからわたくしはあなたを幸せにって、携帯電話、鳴っていますですわよ」
「言われなくってもわかってるわよ。って、あの娘から。……はい、もしもし。何?」
『あの、郁子ちゃん。その、今日はごめんなさい』
「別にいいわよ。あんた、友達じゃないし」
「な、ななぁー。今のは喧嘩の謝罪の電話だったんじゃなかったんですのー? それあっさりと切っちゃうなんてひどいですわ」
「っるさいわね。あんたには関係無いでしょう。このみ・な・ら・い」
「今はそれは関係無いですわ。見習いでも人としてやってはいけない事を注意する事もできますですわ」
「偉そうな事は言わないで」
「何ですの? 言いたい事があるならはっきりと言ってはどうですの?」
「だから偉そうな事は言わないでって言ってんのよ。助けを求めている時は助けてくれないくせに」
「助け、って、わたくしにあなたがいつ助けを求めましたのよ?」
「お父さんが事故にあったって警察から電話がかかってきて、お父さんが死ぬまでずっと助けを求めてたわよ!!! 神様、助けて、助けてください、神様って!!!」
「それは……」
「あんた、言ったわよね? あたしを幸せにするって。だったらしてよ! あたしのお父さんを生き返らせて、また前みたいに幸せな家族にしてよ。お父さんが居て、お母さんが居る生活を返してよ。それがあたしの幸せよ! できるの、あんたに?」
「それは…」
「ほら、みなさい。できもしない事を言わないでよ! 嫌いよ、大嫌いよ」


「ごめんなさいですわ。わたくしはあなたのお父様を蘇らせる事は無理ですの。でも、これなら……」



「郁子。郁子」
「お父さん? お父さんなの? お帰り。お帰りなさい」
「ああ、ただいま。でもごめんな。お父さん、また行かなきゃならないんだ。そしたら当分は会えない」
「嫌よ、お父さん。行かないで」
「ごめん」
「嫌よ。嫌よ。どうして皆、中途半端に優しいのよ。母さんだってそうよ。今日は早く帰ってきて、夕飯一緒に食べれるって言ってたのに。だからあたしは!!! 友達だってわかったような顔をして、でもわかってくれなくって。もう嫌ぁ。皆、大嫌い」
「郁子。人はね、ひとりでは生きてはいけない」
「知らないわよ。そんなの」
「周りの人はおまえを愛してくれているよ」
「愛なんていらないって言ってるの」
「お父さんの事をいつまでも大事に想ってくれるのは嬉しい。でもね、お父さんを想うばかりに生きてる人をおろそかにしてしまったら、それはあまりにも哀しくないかい?」
「生きてる周りの人、そして生きてる自分。郁子、大好きだよ。大好きだからいつまでも見守っている。だからおまえは周りの生きてる人を大事にしておあげ」
「お父さん……」


「郁子、おはよう。お弁当できてるわよ。早く学校に行く用意しなさい」
「ん。わかってる、母さん」
「あら、郁子。何か良い事でもあったの?」
「別に。ただ何やらお節介な見習い天使に良い夢を見せてもらっただけよ」
「え?」
「ほんと、こんな愉快な物見たこと無いよ。見習い天使。早く正式な天使になれるといいわね」


「さて、今日も誰かを幸せにするんですわ♪」



 お題、二つ終了。


 物語の素晴らしい事はやっぱり、伝えたい事をストレートに伝えられて、そして口で言ったりするよりもその読んでくれた人の力になれる、何かを与えられる所なのかな、と想いました。
 そう想ったのはいつも良くしてくれる方からのメールが切欠で。あらためて本当に書いて良かったなーって想いました。^^
 梅桜桃李という言葉は僕も本当に大好きな言葉です。

 やっぱり物語とか絵、音楽、そういうモノは心で作るモノだから、誰かの心に影響を与える事ができて、そしてその方のメールで強く感じたのは、物語だからこそ受け入れてもらえる想いがあるという事。
 確かに僕だって誰かに口で言われても受け入れられない事があります。そんな事はわかってる、とかって反発しちゃいますよね。でも物語を読んで、強く感じた事があって、それが力になる事は多々あって、そしてそれは誰かに言われてだけど、受け入れられなかった事と同じ事で。物語だからこそ、心の琴線に触れられる言葉、メッセージ、テーマがあるのだと。
 そうなんですよね。それがやっぱり物語が愛される理由の一つなのかもしれません。
 そしてやっぱり物を作るって良いなって感じました。^^
 伝えたかった事を感じ取ってもらえたら、それが力になったのならそれはそんなにも幸せで嬉しい事はなく。
 それはすごくやりたくって、夢であった事で。
 本当に良かったなーって。^^
 本当に読んでくださる皆さん、ありがとうございます。^^


 高原ぁぁぁぁぁ~~~。(><。
 がんばれ、日本。北朝鮮に負けるな!!!

 でも日本人と朝鮮の方々が韓国料理のお店で一緒に両チームを応援するというのを見て、良かったな~と想いました。^^
 中国の時は本当にひどかったですもんね。(ーー;
 ドイツのように日本、韓国、中国で共通の歴史教科書を作るべきとも想うのですが、難しいですね。また灯台の件でもめるだろうし、中国と。
 がんばれ、日本!!! 

 しかしスポーツと政治は別といっても、やっぱり情勢が…大黒ぉぉぉ~~。
 やっぱり情勢が情勢だけにどっちが負けても、それがもろに政治に影響が出てきますよね。(ーー; 


 やったぁ――――――――!!!!! 大黒、最高。(><
 \(\^^)\(\^^)(^^/)/(^^/)/)
 お疲れ様でした。(><


 読んでいただきありがとうございました。^^
 (今週のサンデーと来週のサンデーはキャンチョメファンにはたまりません。^^)

『梅桜桃李』

2005年02月06日 | 雑記
『梅桜桃李』

 ねえねえ、どうして?
 どうして僕は咲けないの?
 花を咲かせられない僕は白やピンクの花を咲かせて皆に「綺麗だね」と褒められている周りの皆を見て恥ずかしくって縮こまっていた。 
 他の皆は本当に綺麗に咲いていて。だけど僕は…
 咲けない僕は恥ずかしくって穴があったら入ってしまいたかった。
 皆は本当に綺麗に咲いているのにどうして僕は咲けないのだろう?
 ひょっとしたら僕は皆よりも与えてもらっている物が少ないのかもしれない。だから僕は咲けないんじゃ…
 そう思った僕は太陽さんに訊いてみた。
「ねえねえ、太陽さん」
「なんだい?」
「周りの皆が綺麗に咲いているのに僕だけが咲けないんだ。それは太陽さんが僕にだけくれる光が少ないからだと思うんだけど…どうかなぁ?」
 太陽さんは大きな声で笑った。
「ここにいる者たちには私の光は充分に届いているはずだよ」
「だけど僕はほら、見てよ、咲けてないんだよ」
 僕が泣きそうな声を出すと、太陽さんは優しく微笑むように温かい光で僕を照らしてくれた。
「君にはこうやって充分に光が届いている。私は平等だよ」
「ごめんなさい。太陽さん」
「ああ、いいよ。もう一度、ちゃんと自分を見てごらん。自分を恥ずかしがらずにね」
 自分を見る?
「あー、お腹いっぱい」
 綺麗に咲いている大きな子がそう言った言葉に僕ははっとなった。
「大地さん、大地さん」
「おや、ぼうず。どうした?」
「あのね、あの子が僕の分まで大地さんから栄養をもらってるみたいだから、僕が咲けないの」
 大地さんは大笑いした。
「おまえは何もわかっていないのだね。わしはおまえにちゃんと栄養をやっておるよ。巡る命の栄養を。おまえさんはしっかりとその大きな体を支える根で、わしが持つ栄養を吸っておるではないか。もう一度しっかりと自分を見てごらん」
 皆が『自分を見てごらん』と言う。だけど僕は自分を見ても僕が咲けない理由なんかわからない。
 僕は大きなため息を吐いて、もう一度太陽さんに訊いてみようと、空を見上げた。だけど太陽さんはいなかった。代わりにそこには青い空をどんよりと覆い始めた雨雲さんがいた。そうだ、雨雲さんに訊いてみよう。
「雨雲さん、雨雲さん」
「あら、なあに?」
「あのね、雨雲さん。僕が咲けないのは皆よりも雨が少ないからだと思うのだけど…」
 雨雲さんはぴかりと雷を鳴らした。
「まあ、なんてあなたは失礼な子だろう。わたしはちゃんと平等に雨を降らせているわ」
「雨雲さん、ごめんなさい」
 ぴかぴかごろごろと雷を鳴らして怒る雨雲さんに謝ったけど、雨雲さんは僕の話も聞いてくれないで風さんに頼んでどこかへと行ってしまった。
 雨雲さんが怒って行ってしまった後の空は青空。
 だけど僕の心はどんより。
 僕は悲しくって声の限りにわんわんと泣いてしまった。
 綺麗に咲いている皆を見ながら泣いてしまった。
 僕も咲きたいよー。
 独りぼっちは嫌だよー。
 うわぁ~ん。
「おやおや、なんて哀しい泣き声だろう。泣いている子はだぁ~れ?」
 青くって優しい光が僕を包み込むように照らしてくれる。見上げると丸いお月さまが優しく微笑みながら僕を見下ろしていてくれた。
「あなたはどうして泣いているの?」
「僕は咲けないから。皆みたいに綺麗に咲けないから。太陽さんも、大地さんも、雨雲さんもちゃんと平等に光や栄養に雨をくれているのに、僕は皆みたいに咲けないから」
 えぐえぐと嗚咽を上げるとお月さまはくすくすと笑った。
「周りの子が咲いている中で自分だけが咲けないのが恥ずかしくって悲しいのね?」
「うん」
「もう一度、自分を見て御覧なさい」
 お月さまにも言われた。
 僕はびっくりする。
 本当にどうして皆そう言うんだろう?
「どうして皆はそう言うの?」
「それはね、あなたが桜で周りの子は梅だからよ」
「僕は桜で…周りの皆は梅?」
「そう。桜と梅とではたとえ同じように光や栄養、水をもらっていても咲く季節が違うからあなただけが咲けないのは当然なのよ。だから焦ることはないのよ。あなたが咲く頃はもう少しだけ後。春と呼ばれる季節」
「本当にあと少しで僕は咲けるの?」
「ええ、本当よ。あなたは桜。春という頃に美しい薄紅の花を咲かせるの」
 僕はものすごく嬉しかった。
「桜のあなた。周りが咲いているからといって焦ることはないのよ。あなたにはあなたが咲く頃がある。春になればあなたは綺麗に咲ける。だから焦らないで自分のペースで花を咲かせればいいのよ。誰にでも花を咲かせられるスピードがあるのだから。ね」
「うん、ありがとう。お月さま」
 僕はお月さまにお礼を言った。
 そう、僕は桜。梅じゃないんだね。だから梅が咲いても焦らなくっていいんだね。
 だって春になれば桜の僕も咲けるんだから。
 だから僕は僕が咲ける春という季節まで綺麗な花を咲かせられるようにがんばった。
 そして僕は春という季節に咲いたんだ。
 淡く薄い紅色の花を咲かせたんだ。
 僕が咲ける春という頃まで自分のペースでがんばって。

 ― おわり ―


 梅には梅の、桜には桜の、桃には桃の、李には李の、良さがある。^^
 まずは自分を好きになる事が、一歩なのかな、と想います。色んなことの。
 それはものすごく難しいことなのかも知れないけど、でもがんばってるあなたを見てくれている人は必ずいるから。
 その人にはなたのよさがわかっているはず。
 読んでいただきありがとうございました。^^

地域ネタ

2005年02月03日 | 雑記
CMも立派な文化ですよねー。^^
CMキャラクターでやっぱりだんとつで1位なのは某英会話のうさぎさんでしょうか? 色んなヴァージョンがあってどれも面白いんですが、僕はうさぎを捕まえようとしたら耳が取れちゃう奴が好きです。^^
あとはゲームや映画のCMも好きです。すごくカッコいいですよね。CMでやっていたシーンが画面に映るとなんか嬉しかったり。
それでそのCMに使われている音楽がお店とかで流れているとつい反応してしまうし。映像と音楽、そしてあおり文句、そういうのがどれひとつかけていてもダメなんでしょうね。
だからそういう意味でも本当に面白いと。^^


こちらの地域限定で有名なCMだと、時計屋さんだか宝石屋さんのCMがありまして、それはずぅ~~~とおじいちゃんと孫の二人で出ていまして、孫の成長が見れたりして面白いんですよ。まあまああんなに小さかった坊やがこんなにも大きくなって、という感じで。
ときたまCMを扱ったバラエティー番組とかでも取り扱われるようで、大爆笑を取るみたいです、やっぱり孫の成長で。^^ えなり君を見るような感じと近いのかもしれません。
あとは名探偵コナンがやってる局のマスコットキャラのCMもありまして、これはCGアニメなのかな? これもものすごく見ていてほのぼのとしていて見ていて面白いです。^^
あとはこちら限定のCMはあるのかな? 


CMだけでなく地域限定のお菓子とかも面白いし、物珍しくって好きです。^^
前に妹が旅行に行った時に買ってきたこちらとは違う味付けのカップ麺なんかもへぇーっていう感じで。
スープの味付けとかがやっぱり地域ごとに変えられているみたいですね。^^


あとは地域によって方言がありますし。大学に入った当初は岐阜地方の疑問系 ~かや? っていうのがマイブームになったり。
言語学のレポートで読んだ本に紹介されていた某番組の実験結果、馬鹿とアホの境界線(人の失敗とかに対してどこまでの地域が他人に馬鹿と言って、どこの地域からはあほと言うのか調べていた実験)も面白かったです。^^

こちらは自転車をケッタマシーンって呼びますし、ぞうりをセッタと呼んだり。
あとは食べ物。こちらはカレーにソースをかけたり、冷やし中華はマヨネーズと辛子は必需品で、今の季節だったらおでんにお味噌と辛子でしょうか?^^

トランプゲームだと、大富豪は地域によって大貧民で、【革命】というルールが無かったり。【革命】というのは同じの番号カードを4枚出すと、カードの強弱が引っくり返るんです。^^
トランプゲームは林間学校、修学旅行ではお菓子や好きな女子の名前や自分か誰かの秘密を負けたら告白するとかをかけて遊んでいました。^^ 中学は文化圏の違いは無かったのですが、高校はやっぱり多少なりあって、面白かったです。ちょっとルールについて口論なんかもあったりで。わざわざ違う部屋に居る友人の所へ聞きにいって。
面白かったですね。^^
大学に入ると、学食で食券を賭けてやっていたのはUNOでしたか。^^
ああ、あとは大学に入った頃に九州の人に聞いた『カード切り(だったかな?)』が面白かったです。^^


あとこれが民俗学を勉強したい! って想う理由だったりするんですけど、同じテーマを扱った物語が世界各地にあったりするものまた面白いですよね。^^
日本ですら同じ昔話でも、結果が違っていたりしますし。

本当に地域ネタは面白いと想います。^^

読んでいただきありがとうございました。^^

初めての小説

2005年02月01日 | 雑記
初めて小説を書いたのは小4か5かな? 国語の教科書に地図が一枚載っていて、その地図を元にお話を想像して、書けというもので。
僕が書いたのはやっぱりライトノベル的お話で、船が沈没して砂漠の世界に居て、人がばたばたと死んでいって、最後は夢落ちで。^^;
でも先生がひとりひとりのを読んでいったのですが、大爆笑をとったのは嬉しかった!

小学生の時は本は学校の図書館でもっぱら借りて読むだけで、アンデルセンとか漫画で読む歴史とか、あとは宝島、動物が主役の本を読んでたかなー。
それで第一次小説ブームは中学の時に部活の先輩から「はい、これを読んで」と無理やり渡されて、なんとなく読んだら凄く面白くって、すっかりとはまって。
それで自分でもその小説の最新巻を買ったらそれは下巻でさっぱりと話がわからなくって、先輩に大笑いされて、全部貸してもらったり。^^
その先輩からも色々と貸してもらったり、あとは自分でも色々と買いそろえたり。^^
それでその時に買い揃えていた本はシリーズ最後まで揃えるつもりだったのに作者さんが途中で投げ出して、未だに新刊が出ず。(--;
すごくいい所で終わってるから、続きが気になるのに。あかほり先生と丸山先生、続きを書く気はもう無いのかな?(--;
それでその時も小説を書いてみたいとか、お話を考えはしたけど、でも実際に鉛筆を取って書く事はしませんでした。

小説を書くのは第二次ブームの時から。アニメでブギ―ポップは笑わない、がやって、それで久々に文庫を手に取ったらその面白さにやられて、8冊か9冊一気にブギ―ポップを買い揃えて(それほどに面白いのです。(拳))、それで本に挟まっていた電撃文庫の小説大賞を知って書き始めて、翌年からは角川や富士見なんかにも出すようになって。だから最初は3ヶ月ぐらいで書き上げては送っていたのかな。^^;

だけど本当に自分で小説を書くのは楽しいです。
書いてる途中が特に。賞を取ったらイラストはどの先生で、電撃大賞だったら受賞者はラジオに呼んでもらえるのでDJの声優さんのサインをもらおうとか。w
や、でも本当に大好きな松野さん(金田一君の声優の人)がDJをやってる時に取りたかった。話したかったです。今は聞いていないけど、今のDJさんは一護の声優さんなんですよね、確か。


だから小説の書き方は色んな小説家さんの小説を読み漁って、ネットで書き方を検索して勉強して、うんうんと悩みながら今も試行錯誤中です。
それでつい先日某出版社さんから四人の小説家さんや脚本家さんのインタビューが載った冊子を頂いて、嬉しがっています。すごく勉強になるのです。^^
特に峰倉先生と若木先生のお話が勉強となって。
峰倉先生は大好きな漫画家さんなので夢中になって読んでしまいました。^^
本当に色んな本を読んで勉強したいなーと想います。
大賞の審査員の先生のコメントも結構勉強になるんですよね。^^


そういえば乙一先生のZOOが初の映像化なのかと想っていたら、そうでもないのですね。知らなかったのでびっくりしました。^^; 乙一先生の本もすごく面白くってドキドキします。^^
で、話の進み具合がじれったくって、登場人物たちにばかぁーとつっこんだり、犯人たちの人でなし度に本気でムカツイタのは宮部先生の模倣犯です。これを越える本にはまだ出会えていません。
今一番読みたいのは空の境界なのですが、二冊で2400円ぐらいかかるのでちょっとためらいます。文庫本4冊か5冊買えますからね。。。。(--;


そしてOMC。ようやく今日納品されていました。(--; 土曜日の夜に納品したのにな~。(--;
本当にお待たせしてしまってすみませんでした。
OMCは怪談のイベント商品に参加したいなーと想います。^^ なんだかすごく面白いですよ、今度のイベント。前々からゴーストネットでやろうと想っていたネタが使えそうなのです。どうせだったらイベントでやった方が楽しいですものね。^^
バレンタイン企画にも参加したいかもです。^^


それでは読んでいただき、ありがとうございました。^^