おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
薬学博士 渡辺武著 『漢方が救う人体危機』
水滞(水毒症)の原因とその対症法
p139肩こりや首筋のこりは腸管の水滞が原因である!
京都の祇園の舞妓はんといえば、昔ながらの日本情緒の生き見本のように思われていますが、最近、あるお茶屋でおかみさんから妙な相談を受けたのです。
話によると、現代っ子の舞妓はんのお行儀が悪くて困っているというのです。
少し座っているとすぐ足がしびれるといって、席を立ち、かげで足を投げ出すのだそうです。
「先生、なんとかなりまへんやろか」というわけで、舞妓はんたちと顔を合わせました。そのとき、はたと思いました。
どの顔も美しいには違いないが、お腹が立っていて、その上に首がのっている姿。
試しに左足のふくらはぎを軽くつかむと、「痛い」と足を引っ込めます。
「立てば芍薬、座れば牡丹」の諺どおり、芍薬の花の格好。そこで舞妓はんたちに「今晩帰ったら、鏡で自分のへその格好を見てみなさい。へそが立っているに違いない。
そのとおりなら一力茶屋の隣の薬局で「小建中湯という漢方薬を買って、一、二週間お飲みなさい。
お座敷で座っていても足がしびれなくなるよ」といってあげました。
そのとき一人の妓が「私のも立っている」とご自慢のようす、なかには「手術しなくていいんですわ」と勘違いしているのです。
それもそのはず、現代っ子の間では、腹を立てるのが美人の象徴といい、セックスアピールがあるというので、おへその整形手術が若い素人の女性や舞妓はんの間でもはやっていたというのです。
舞妓はんの足のしびれは、水滞が原因でお腹が立っていることにあるのです。
腹が立てば格好はいいかもしれませんし、セックスアピールがあるかもしれませんが、万年、胃腸が悪いという証拠なのです。
それをわざわざ手術するにいたっては、現代っ子の無知さにあきれ果ててしまいました。
肩こりや首筋のこりは、まず、腸管の水滞が原因だと考えられます。
水滞が起こると、水分を頭や皮膚から出し、風邪をひきます。停滞していれば、あくびが出て背がつってきます。
舞妓はんの、とくに左足のしびれは、頭に血がのぼって下に血が回りかね、水滞が起こって、肩こりや首筋のこりの前兆だったのです。
だから「立てば芍薬」どおり、腹が立ったら芍薬を飲みなさいというわけです。
よく、風邪をひくと、漢方では「葛根湯」を飲ませます。
「葛根湯」は芍薬の証のある薬湯、芍薬は腸管の水滞を汗と小便で出してくれる効きめがあるのです。
したがって、水滞が取れれば肩のこりもなくなります。
しかし、腸の水滞と肩とどう関係があるのかという人もいます。
人間の裏、体の中の五臓六腑は、体内で宙に浮いているわけではありません。
肩は衣紋掛けのようなもので、胸や腹の筋肉や膜でちゃんと上下左右、前後にほどよく吊り上げているわけです。
腸が水滞で重くなれば、それを吊っている筋がこってくるのは当然です。
肩こりとか首筋のこりは、充血を起こして、血液が余分に流れているということです。
ふつうの状態より多く流れているわけだから、滞って充血を起こすわけです。
充血が抹消まで及ぶと、頭が重くなり、脳の充血が激しくなります。
肩こりは右がこる場合と、左がこる場合では、病態が違います。腸管の水滞が原因でこる肩は右肩、左の肩がこるのは血症、充血による心臓の疲労が原因なのです。
総じて肩こりは病の前兆といえるのです。
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