[ブログ内検索] [漢字に関する書籍] [漢字源] [中国古典選] | 投稿者:菊池 投稿日:2003年 3月19日(水)22時34分23秒 「愛」と「恋」の語源、成り立ちを教えてください!! |
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re:「愛」と「恋」(1) 投稿者:nothing 投稿日:2003年 3月24日(月)02時50分59秒
菊池さん。大変お待たせいたしました。
「愛」と「恋」について、まずは、絶版となった『言葉の系譜』(藤堂明保)から引用します。
それでは、「恋」から、
== 引用はじめ ==
ところで「もの思う」とは、どういう心理なのであろうか、いま戀(恋)の字の上部をみると、それは左右に糸を書き、中央に言の字を配してある。言とはズバリと裁断する明白なコトバである。糸が左と右にあって、容易に裁ち切れぬさまをにおわせたのが、この「戀-心」という部分である。してみると恋とは、まさしく糸が乱れて千々に乱れる、そのような心を表すコトバであろう。いったい今日の楷書は、秦の始皇帝が統一して定めた小篆の字体を継承したものだ。ところで、秦の統一のさい、採用されなかった古代文字、俗に「古文」と称する字体があるが、恋の字の古文は、ほとんど亂(乱)の字の左側と同じである。してみると、恋-乱は、きわめて近いコトバだということが判明する。
そこで亂とは何かを考えてみよう。その左側は、上と下とから手が差し出されており、その中間に糸巻きにもつれた糸が描かれている。つまり、糸がもつれて、ズルズルと結末がつかず、二本の手でさばきかねているさまである。右側の乙印は、後に加わったもので、軋(アツ)の右側と同じく、おさえて処理する意味をそえたものだ。乱 luanの語尾のnがtに転じると、luat(ラツ)という語形となり、寽・「寽+手」・埒などの字で表される。寽もまた、上と下とに手があり、中央に一印が描かれた会意文字だ。そこで寽や「寽+手」は、両方から物を取ろうとして引っぱり合い、容易にケリのつかぬさまを表している。日本語で「ラチがあかない」というそのラチは、この寽・「寽+手」を音訳した借用語なのである。乱-「寽+手」は同系の語で、もつれ合ってケリのつかぬこと、つまり「ラチのあかない」さまを意味する。
恋(レン)と近いのは、ケイレン(痙攣)の攣である。ケイレンとは、筋肉が上下から引っぱってもつれ合い、ラチのあかぬ状態である。二人以上の赤ちゃんが、もつれ合って生まれるのを攣生(レンセイ)という。これも恋(もつれ乱れた心)と同系である。そこで恋する者の心理は明らかとなった。恋(レン)とはつまり「乱(ラン)した心」、ちぢにもつれて収拾がつかず、ラチのあかない心理なのである。ああも思い、こうも思い、ケイレンしたようにズルズルとつながってケリがつかない、「あい見ての後」の、「もの思う」心とは、そうしたものらしい。
== 引用おわり ==
■数年前に漢字質問箱に掲載したものを、このブログに再掲載しました。
とても参考になりました!活用させて頂きます!!
機会がございましたら、是非、藤堂明保先生の原本をご覧くださいね。
nothingさんの調査&コメントは大変参考になりました。
ありがとうございます。