漢字家族BLOG版(漢字の語源)

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re^1:「愛」と「恋」の語源、成り立ちを教えてください!!

2006年01月10日 02時20分22秒 | 漢字質問箱ログ

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投稿者:菊池 投稿日:2003年 3月19日(水)22時34分23秒

「愛」と「恋」の語源、成り立ちを教えてください!!

re:「愛」と「恋」(2)re:「愛」と「恋」(3)

re:「愛」と「恋」(1) 投稿者:nothing 投稿日:2003年 3月24日(月)02時50分59秒


菊池さん。大変お待たせいたしました。
「愛」と「恋」について、まずは、絶版となった『言葉の系譜』(藤堂明保)から引用します。
それでは、「恋」から、

== 引用はじめ ==

 ところで「もの思う」とは、どういう心理なのであろうか、いま戀(恋)の字の上部をみると、それは左右にを書き、中央にの字を配してある。とはズバリと裁断する明白なコトバである。糸が左と右にあって、容易に裁ち切れぬさまをにおわせたのが、この「戀-心」という部分である。してみるととは、まさしく糸が乱れて千々に乱れる、そのような心を表すコトバであろう。いったい今日の楷書は、秦の始皇帝が統一して定めた小篆の字体を継承したものだ。ところで、秦の統一のさい、採用されなかった古代文字、俗に「古文」と称する字体があるが、の字の古文は、ほとんど亂(乱)の字の左側と同じである。してみると、恋-乱は、きわめて近いコトバだということが判明する。

 そこでとは何かを考えてみよう。その左側は、上と下とから手が差し出されており、その中間に糸巻きにもつれた糸が描かれている。つまり、糸がもつれて、ズルズルと結末がつかず、二本の手でさばきかねているさまである。右側の乙印は、後に加わったもので、軋(アツ)の右側と同じく、おさえて処理する意味をそえたものだ。乱 luanの語尾のntに転じると、埒:図解luat(ラツ)という語形となり、寽・「寽+手」・埒などの字で表される。もまた、上と下とに手があり、中央に一印が描かれた会意文字だ。そこで「寽+手」は、両方から物を取ろうとして引っぱり合い、容易にケリのつかぬさまを表している。日本語で「ラチがあかない」というそのラチは、この寽・「寽+手」を音訳した借用語なのである。乱-「寽+手」は同系の語で、もつれ合ってケリのつかぬこと、つまり「ラチのあかない」さまを意味する。

 恋(レン)と近いのは、ケイレン(痙攣)のである。ケイレンとは、筋肉が上下から引っぱってもつれ合い、ラチのあかぬ状態である。二人以上の赤ちゃんが、もつれ合って生まれるのを攣生(レンセイ)という。これも(もつれ乱れた心)と同系である。そこで恋する者の心理は明らかとなった。恋(レン)とはつまり「乱(ラン)した心」、ちぢにもつれて収拾がつかず、ラチのあかない心理なのである。ああも思い、こうも思い、ケイレンしたようにズルズルとつながってケリがつかない、「あい見ての後」の、「もの思う」心とは、そうしたものらしい。


== 引用おわり ==

数年前に漢字質問箱に掲載したものを、このブログに再掲載しました。

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
質問! (ゆけっち)
2007-01-30 13:45:28
憂の成り立ち教えてちょ!
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大変参考になりました! (samina)
2010-05-01 06:27:29
少し、物語を書くのに語源がしりたくて、探していました!!
とても参考になりました!活用させて頂きます!!
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saminaさんへ (渾沌)
2010-05-27 01:35:02
コメントありがとうございます。
機会がございましたら、是非、藤堂明保先生の原本をご覧くださいね。
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漢字:心 (とおりすがり)
2011-02-20 10:06:39
ひょんなことから、心の付く漢字の意味の追求を始めました。

nothingさんの調査&コメントは大変参考になりました。

ありがとうございます。
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