カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ジンセイロン ノート 4

2017-11-07 | ミキ キヨシ
 メイソウ に ついて

 たとえば ヒト と タイダン して いる サイチュウ に ワタシ は とつぜん だまりこむ こと が ある。 そんな とき、 ワタシ は メイソウ に ホウモン された の で ある。 メイソウ は つねに フイ の キャク で ある。 ワタシ は それ を まねく の で なく、 また まねく こと も できない。 しかし それ の くる とき には あらゆる もの にも かかわらず くる の で ある。 「これから メイソウ しよう」 など と いう こと は およそ グ にも つかぬ こと だ。 ワタシ の なしうる こと は せいぜい この フイ の キャク に たいして つねに ジュンビ を して おく こと で ある。

 シサク は シタ から のぼって ゆく もの で ある と すれば、 メイソウ は ウエ から おりて くる もの で ある。 それ は ある テンヨ の セイシツ を もって いる。 そこ に メイソウ と ミスティシズム との もっとも ふかい ムスビツキ が ある。 メイソウ は おおかれ すくなかれ ミスティック な もの で ある。

 この おもいもうけぬ キャク は あらゆる バアイ に くる こと が できる。 たんに ヒトリ しずか に いる とき のみ では ない、 まったき ケンソウ の ナカ に おいて も それ は くる の で ある。 コドク は メイソウ の ジョウケン で ある より も ケッカ で ある。 たとえば オオゼイ の チョウシュウ に むかって はなして いる とき、 ワタシ は フイ に メイソウ に おそわれる こと が ある。 その とき この フカコウ の チンニュウシャ は、 ワタシ は それ を ギャクサツ する か、 それとも それ に まったく ミ を まかせて ついて ゆく か で ある。 メイソウ には ジョウケン が ない。 ジョウケン が ない と いう こと が それ を テンヨ の もの と おもわせる コンポンテキ な リユウ で ある。

 プラトン は ソクラテス が ポティダイア の ジンエイ に おいて イッチュウヤ たちつづけて メイソウ に ふけった と いう こと を しるして いる。 その とき ソクラテス は まさに メイソウ した の で あって、 シサク した の では ない。 カレ が シサク した の は かえって カレ が イチバ に あらわれて ダレ でも を とらえて ダンロン した とき で ある。 シサク の コンポンテキ な ケイシキ は タイワ で ある。 ポティダイア の ジンエイ に おける ソクラテス と アテナイ の イチバ に おける ソクラテス―― これほど メイリョウ に メイソウ と シサク との サイ を あらわして いる もの は ない。

 シサク と メイソウ との サイ は、 ヒト は シサク の タダナカ に おいて さえ メイソウ に おちいる こと が ある と いう ジジツ に よって しめされて いる。

 メイソウ には カテイ が ない。 この テン に おいて、 それ は ホンシツテキ に カテイテキ な シサク と ことなって いる。

 スベテ の メイソウ は カンビ で ある。 この ゆえ に ヒト は メイソウ を ほっする の で あり、 その かぎり スベテ の ニンゲン は ミスティシズム に たいする シコウ を もって いる。 けれども メイソウ は ほんらい ワレワレ の イヨク に イゾン する もの では ない。

 スベテ の ミリョクテキ な シサク の ミリョク は メイソウ に、 この ミスティック な もの、 ケイジジョウガクテキ な もの に もとづいて いる。 その イミ に おいて スベテ の シソウ は、 がんらい、 あまい もの で ある。 シサク が あまい もの で ある の では ない、 あまい シサク と いう もの は なんら シサク では ない で あろう。 シサク の コンテイ に ある メイソウ が カンビ な もの なの で ある。

 メイソウ は その アマサ の ゆえ に ヒト を ユウワク する。 シン の シュウキョウ が ミスティシズム に ハンタイ する の は かよう な ユウワク の ゆえ で あろう。 メイソウ は あまい もの で ある が、 それ に ユウワク される とき、 メイソウ は もはや メイソウ では なくなり、 ムソウ か クウソウ か に なる で あろう。

 メイソウ を いかしうる もの は シサク の キビシサ で ある。 フイ の ホウモンシャ で ある メイソウ に たいする ジュンビ と いう の は シサク の ホウホウテキ クンレン を そなえて いる こと で ある。

 メイソウヘキ と いう コトバ は ムジュン で ある。 メイソウ は なんら シュウカン に なりうる セイシツ の もの では ない から で ある。 セイヘキ と なった メイソウ は なんら メイソウ では なく、 ムソウ か クウソウ か で ある。

 メイソウ の ない シソウカ は ソンザイ しない。 メイソウ は カレ に ヴィジョン を あたえる もの で あり、 ヴィジョン を もたぬ いかなる シン の シソウ も ソンザイ しない から で ある。 しんに ソウゾウテキ な シソウカ は つねに イメージ を ふまえて きびしい シサク に シュウチュウ して いる もの で ある。

 キンベン は シソウカ の シュヨウ な トク で ある。 それ に よって シソウカ と いわゆる メイソウカ あるいは ムソウカ と が クベツ される。 もちろん ヒト は キンベン だけ で シソウカ に なる こと は できぬ。 そこ には メイソウ が あたえられねば ならない から。 しかし シン の シソウカ は また たえず メイソウ の ユウワク と たたかって いる。

 ヒト は かきながら、 もしくは かく こと に よって シサク する こと が できる。 しかし メイソウ は そう では ない。 メイソウ は いわば セイシン の キュウジツ で ある。 そして セイシン には シゴト と ドウヨウ、 ヒマ が ヒツヨウ で ある。 あまり に おおく かく こと も まったく かかぬ こと も ともに セイシン に とって ユウガイ で ある。

 テツガクテキ ブンショウ に おける パウゼ と いう もの は メイソウ で ある。 シソウ の スタイル は しゅとして メイソウテキ な もの に イゾン して いる。 メイソウ が リズム で ある と すれば、 シサク は タクト で ある。

 メイソウ の アマサ の ウチ には おおかれ すくなかれ つねに エロス-テキ な もの が ある。

 シサク が メイソウ に おいて ある こと は、 セイシン が シンタイ に おいて ある の と ドウヨウ で ある。

 メイソウ は シソウテキ ニンゲン の いわば ゲンザイ で ある。 メイソウ の ウチ に、 したがって また ミスティシズム の ウチ に キュウサイ が ある と かんがえる こと は、 イタン で ある。 シュウキョウテキ ニンゲン に とって と ドウヨウ に、 シソウテキ ニンゲン に とって も、 キュウサイ は ほんらい ただ コトバ に おいて あたえられる。

 ウワサ に ついて

 ウワサ は フアンテイ な もの、 フカクテイ な もの で ある。 しかも ジブン では テ の クダシヨウ も ない もの で ある。 ワレワレ は この フアンテイ な もの、 フカクテイ な もの に とりまかれながら いきて ゆく の ホカ ない。
 しからば ウワサ は ワレワレ に とって ウンメイ の ごとき もの で あろう か。 それ は ウンメイ で ある に して は あまり に グウゼンテキ な もの で ある。 しかも この グウゼンテキ な もの は ときとして ウンメイ より も つよく ワレワレ の ソンザイ を ケッテイ する の で ある。
 もしも それ が ウンメイ で ある なら、 ワレワレ は それ を あいしなければ ならぬ。 また もし それ が ウンメイ で ある なら、 ワレワレ は それ を カイタク しなければ ならぬ。 だが ウワサ は ウンメイ では ない。 それ を ウンメイ の ごとく あいしたり カイタク したり しよう と する の は ばかげた こと で ある。 ワレワレ の すこしも コウデイ して は ならぬ この もの が、 ワレワレ の ウンメイ を さえ ケッテイ する と いう の は いかなる こと で あろう か。

 ウワサ は つねに ワレワレ の トオク に ある。 ワレワレ は その ソンザイ を さえ しらない こと が おおい。 この とおい もの が ワレワレ に かくも ミッセツ に カンケイ して くる の で ある。 しかも この カンケイ は つかむ こと の できぬ グウゼン の シュウゴウ で ある。 ワレワレ の ソンザイ は ムスウ の メ に みえぬ グウゼン の イト に よって どこ とも しれぬ ところ に つながれて いる。

 ウワサ は ヒョウバン と して ヒトツ の ヒヒョウ で ある と いう が、 その ヒヒョウ には いかなる キジュン も なく、 もしくは ムスウ の グウゼンテキ な キジュン が あり、 したがって ほんらい なんら ヒヒョウ で なく、 きわめて フアンテイ で フカクテイ で ある。 しかも この フアンテイ で フカクテイ な もの が、 ワレワレ の シャカイテキ に ソンザイ する ヒトツ の もっとも ジュウヨウ な ケイシキ なの で ある。
 ヒョウバン を ヒヒョウ の ごとく うけとり、 これ と マジメ に タイシツ しよう と する こと は、 ムダ で ある。 いったい ダレ を アイテ に しよう と いう の か。 アイテ は どこ にも いない。 もしくは いたる ところ に いる。 しかも ワレワレ は この タイシツ する こと が できない もの と たえず タイシツ させられて いる の で ある。

 ウワサ は ダレ の もの でも ない、 ウワサ されて いる トウニン の もの で さえ ない。 ウワサ は シャカイテキ な もの で ある に して も、 ゲンミツ に いう と、 シャカイ の もの でも ない。 この ジッタイ の ない もの は、 ダレ も それ を しんじない と しながら、 ダレ も それ を しんじて いる。 ウワサ は ゲンショテキ な ケイシキ に おける フィクション で ある。

 ウワサ は あらゆる ジョウネン から でて くる。 シット から、 サイギシン から、 キョウソウシン から、 コウキシン から、 -トウトウ。 ウワサ は かかる もの で ありながら ウワサ と して ソンザイ する に いたって は もはや ジョウネンテキ な もの で なくて カンネンテキ な もの で ある。 ――ネツジョウ を もって かたられた ウワサ は ウワサ と して うけとられない で あろう。―― そこ に いわば ダイ 1 ジ の カンネンカ サヨウ が ある。 ダイ 2 ジ の カンネンカ サヨウ は ウワサ から シンワ への テンカ に おいて おこなわれる。 シンワ は コウジ の フィクション で ある。

 あらゆる ウワサ の コンゲン が フアン で ある と いう の は シンリ を ふくんで いる。 ヒト は ジコ の フアン から ウワサ を つくり、 うけとり、 また つたえる。 フアン は ジョウネン の ナカ の ヒトツ の ジョウネン で なく、 むしろ あらゆる ジョウネン を うごかす もの、 ジョウネン の ジョウネン とも いう べく、 したがって また ジョウネン を こえた もの で ある。 フアン と キョム と が ヒトツ に かんがえられる の も これ に よって で ある。 キョム から うまれた もの と して ウワサ は フィクション で ある。

 ウワサ は カコ も ミライ も しらない。 ウワサ は ホンシツテキ に ゲンザイ の もの で ある。 この フドウテキ な もの に ワレワレ が ツギ から ツギ へ うつしいれる ジョウネン や ゴウリカ に よる カコウ は それ を シンワカ して ゆく ケッカ に なる。 だから ウワサ は エイゾク する に したがって シンワ に かわって ゆく。 その ウワサ が どのよう な もの で あろう と、 ワレワレ は ウワサ される こと に よって ほろびる こと は ない。 ウワサ を いつまでも ウワサ に とどめて おく こと が できる ほど ケンメイ に ムカンシン で レイセイ で ありうる ニンゲン は すくない から。

 ウワサ には ダレ も セキニンシャ と いう もの が ない。 その セキニン を ひきうけて いる もの を ワレワレ は レキシ と よんで いる。

 ウワサ と して ソンザイ する か イナ か は、 モノ が レキシテキ な もの で ある か イナ か を クベツ する ヒトツ の シルシ で ある。 シゼン の もの に して も、 ウワサ と なる バアイ、 それ は レキシ の セカイ に はいって いる の で ある。 ニンゲン の バアイ に して も、 レキシテキ ジンブツ で あれば ある ほど、 カレ は いっそう おおく ウワサ に のぼる で あろう。 レキシ は すべて かく の ごとく フアンテイ な もの の ウエ に よって いる。 もっとも ウワサ は モノ が レキシ に はいる イリグチ に すぎぬ。 タイテイ の もの は この イリグチ に たつ だけ で きえて しまう。 ホント に レキシテキ に なった もの は、 もはや ウワサ と して ソンザイ する の で なく、 むしろ シンワ と して ソンザイ する の で ある。 ウワサ から シンワ への ハンチュウ テンカ、 そこ に レキシ の カンネンカ サヨウ が ある。
 かく の ごとく レキシ は ジョウネン の ナカ から カンネン もしくは リネン を つくりだして くる。 これ は レキシ の ふかい ヒミツ に ぞくして いる。

 ウワサ は レキシ に はいる イリグチ に すぎない が、 それ は この セカイ に はいる ため に イチド は とおらねば ならぬ イリグチ で ある よう に おもわれる。 レキシテキ な もの は ウワサ と いう この あらあらしい もの、 フアンテイ な もの の ナカ から でて くる の で ある。 それ は モノ が ケッショウ する マエ に まず なければ ならぬ シントウ の ごとき もの で ある。
 レキシテキ な もの は ヒヒョウ の ナカ から より も ウワサ の ナカ から ケッテイ されて くる。 モノ が レキシテキ に なる ため には、 ヒヒョウ を ツウカ する と いう こと だけ では たりない、 ウワサ と いう さらに キマグレ な もの、 グウゼンテキ な もの、 フカクテイ な もの の ナカ を ツウカ しなければ ならぬ。

 ウワサ より も ユウリョク な ヒヒョウ と いう もの は はなはだ まれ で ある。

 レキシ は フカクテイ な もの の ナカ から でて くる。 ウワサ と いう もの は その もっとも フカクテイ な もの で ある。 しかも レキシ は もっとも カクテイテキ な もの では ない の か。

 ウワサ の モンダイ は カクリツ の モンダイ で ある。 しかも それ は ブツリテキ カクリツ とは ことなる レキシテキ カクリツ の モンダイ で ある。 ダレ が その カクリツ を ケイサン しうる か。

 ウワサ する よう に ヒヒョウ する ヒヒョウカ は おおい。 けれども ヒヒョウ を レキシテキ カクリツ の モンダイ と して とりあげる ヒヒョウカ は まれ で ある。 ワタシ の しる カギリ では ヴァレリー が それ だ。 かよう な ヒヒョウカ には スウガクシャ の よう な チセイ が ヒツヨウ で ある。 しかし いかに オオク の ヒヒョウカ が ドクダンテキ で ある か。 そこで また いかに オオク の ヒヒョウカ が、 ジブン も セケン も しんじて いる の とは ハンタイ に、 ヒヒョウテキ で ある より も ジッセンテキ で ある か。

 リコ シュギ に ついて

 イッパン に ワレワレ の セイカツ を シハイ して いる の は give and take の ゲンソク で ある。 それゆえに ジュンスイ な リコ シュギ と いう もの は まったく ソンザイ しない か あるいは きわめて まれ で ある。 いったい ダレ が とらない で ただ あたえる ばかり で ありうる ほど ユウトク あるいは むしろ ユウリョク で ありうる で あろう か。 ギャク に いったい ダレ が あたえない で ただ とる ばかり で ありうる ほど ユウリョク あるいは むしろ ユウトク で ありうる で あろう か。 ジュンスイ な エイユウ シュギ が まれ で ある よう に、 ジュンスイ な リコ シュギ も また まれ で ある。

 ワレワレ の セイカツ を シハイ して いる ギヴ アンド テイク の ゲンソク は、 タイテイ の バアイ ワレワレ は イシキ しない で それ に したがって いる。 いいかえる と、 ワレワレ は イシキテキ に の ホカ リコ シュギシャ で ある こと が できない。
 リコ シュギシャ が ブキミ に かんじられる の は、 カレ が リコテキ な ニンゲン で ある ため で ある より も、 カレ が イシキテキ な ニンゲン で ある ため で ある。 それゆえに また リコ シュギシャ を くるしめる もの は、 カレ の アイテ では なく、 カレ の ジイシキ で ある。

 リコ シュギシャ は ゲンソクテキ な ニンゲン で ある、 なぜなら カレ は イシキテキ な ニンゲン で ある から。 ――ヒト は シュウカン に よって の ホカ リコ シュギシャ で ある こと が できない。 これら フタツ の、 マエ の メイダイ とも はんし、 また ソウゴ に ムジュン する メイダイ の ウチ に、 ニンゲン の チカラ と ムリョク と が いいあらわされる。

 ワレワレ の セイカツ は イッパン に ギヴ アンド テイク の ゲンソク に したがって いる と いえば タイテイ の モノ が ナニホド か は ハンカン を おぼえる で あろう。 その こと は ジンセイ に おいて ジッショウテキ で ある こと が いかに コンナン で ある か を しめして いる。 リコ シュギ と いう もの で すら、 ほとんど スベテ が ソウゾウジョウ の もの で ある。 しかも リコ シュギシャ で ある ヨウケン は、 ソウゾウリョク を もたぬ と いう こと で ある。
 リコ シュギシャ が ヒジョウ に おもわれる の は、 カレ に アイジョウ とか ドウジョウ とか が ない ため で ある より も、 カレ に ソウゾウリョク が ない ため で ある。 そのよう に ソウゾウリョク は ジンセイ に とって コンポンテキ な もの で ある。 ニンゲン は リセイ に よって と いう より も ソウゾウリョク に よって ドウブツ から クベツ される。 アイジョウ で すら、 ソウゾウリョク なく して ナニモノ で ある か。

 アイジョウ は ソウゾウリョク に よって はかられる。

 ジッショウ シュギ は ホンシツテキ に ヒジョウ で ある。 ジッショウ シュギ の ハテ が キョム シュギ で ある の は だから トウゼン の こと で ある。
 リコ シュギシャ は チュウト ハンパ な ジッショウ シュギシャ で ある。 それとも ジカク に たっしない キョム シュギシャ で ある と いえる で あろう か。
 リコテキ で ある こと と ジッショウテキ で ある こと とは、 しばしば すりかえられる。 ヒトツ には ジコ ベンカイ の ため に、 ギャク には タニン コウゲキ の ため に。

 ワレワレ の セイカツ を シハイ する ギヴ アンド テイク の ゲンソク は、 キタイ の ゲンソク で ある。 あたえる こと には とる こと が、 とる こと には あたえる こと が、 キタイ されて いる。 それ は キタイ の ゲンソク と して、 ケッテイロンテキ な もの で なくて むしろ カクリツロンテキ な もの で ある。 このよう に ジンセイ は ガイゼンテキ な もの の ウエ に なりたって いる。 ジンセイ に おいて は ガイゼンテキ な もの が カクジツ な もの で ある。

 ワレワレ の セイカツ は キタイ の ウエ に なりたって いる。

 キタイ は タニン の コウイ を コウソク する マジュツテキ な チカラ を もって いる。 ワレワレ の コウイ は たえず その ジュバク の モト に ある。 ドウトク の コウソクリョク も そこ に キソ を もって いる。 タニン の キタイ に はんして コウイ する と いう こと は かんがえられる より も はるか に コンナン で ある。 ときには ヒトビト の キタイ に まったく はんして コウドウ する ユウキ を もたねば ならぬ。 セケン が キタイ する とおり に なろう と する ヒト は ついに ジブン を ハッケン しない で しまう こと が おおい。 シュウサイ と よばれた モノ が ヘイボン な ニンゲン で おわる の は その ヒトツ の レイ で ある。

 リコ シュギシャ は キタイ しない ニンゲン で ある、 したがって また シンヨウ しない ニンゲン で ある。 それゆえに カレ は つねに サイギシン に くるしめられる。
 ギヴ アンド テイク の ゲンソク を キタイ の ゲンソク と して で なく ダサン の ゲンソク と して かんがえる モノ が リコ シュギシャ で ある。

 ニンゲン が リコテキ で ある か イナ か は、 その ウケトリ カンジョウ を どれほど とおい ミライ に のばしうる か と いう モンダイ で ある。 この ジカンテキ な モンダイ は しかし たんなる ダサン の モンダイ で なくて、 キタイ の、 ソウゾウリョク の モンダイ で ある。

 コノヨ で えられない もの を シゴ に おいて キタイ する ヒト は シュウキョウテキ と いわれる。 これ が カント の カミ の ソンザイ の ショウメイ の ヨウヤク で ある。

 リコ シュギシャ は タ の ニンゲン が ジブン とは おなじ よう で ない こと を アンゼン に ゼンテイ して いる。 もし スベテ の ニンゲン が リコテキ で ある と した なら、 カレ の リコ シュギ も セイリツ しえない はず で ある から。 リコ シュギシャ の ゴサン は、 その サイ が ただ カンジョウ の キゲン の モンダイ で ある こと を リカイ しない ところ に ある。 そして これ は カレ に ソウゾウリョク が かけて いる と いう こと の ショウコ に ほかならない。

 リコ シュギシャ は ジブン では じゅうぶん ゴウリテキ な ニンゲン で ある と おもって いる。 その こと を カレ は コウゲン も する し、 ホコリ に さえ も して いる。 カレ は、 カレ の リチ の ゲンカイ が ソウゾウリョク の ケツボウ に ある こと を リカイ しない の で ある。

 スベテ の ニンゲン が リコテキ で ある と いう こと を ゼンテイ に した シャカイ ケイヤクセツ は、 ソウゾウリョク の ない ゴウリ シュギ の サンブツ で ある。 シャカイ の キソ は ケイヤク で なくて キタイ で ある。 シャカイ は キタイ の マジュツテキ な コウソクリョク の ウエ に たてられた タテモノ で ある。

 どのよう な リコ シュギシャ も ジコ の トクシュテキ な リエキ を イッパンテキ な リエキ と して シュチョウ する。 ――そこ から いかに オオク の リロン が つくられて いる か。―― これ に はんして アイ と シュウキョウ と に おいて は、 ヒト は かえって タンテキ に ジコ を シュチョウ する。 それら は リロン を ケイベツ する の で ある。

 リコ シュギ と いう コトバ は ほとんど つねに タニン を コウゲキ する ため に つかわれる。 シュギ と いう もの は ジブン で しょうする より も ハンタイシャ から おしつけられる もの で ある と いう こと の もっとも ニチジョウテキ な レイ が ここ に ある。

 ケンコウ に ついて

 ナニ が ジブン の ため に なり、 ナニ が ジブン の ガイ に なる か、 の ジブン ジシン の カンサツ が、 ケンコウ を たもつ サイジョウ の ブツリガク で ある と いう こと には、 ブツリガク の キソク を こえた チエ が ある。 ――ワタシ は ここ に この ベーコン の コトバ を しるす の を きんずる こと が できない。 これ は きわめて ジュウヨウ な ヨウジョウクン で ある。 しかも その コンテイ に ある の は、 ケンコウ は カクジ の もの で ある と いう、 タンジュン な、 タンジュン な ゆえ に ケイケン な と さえ いいうる シンリ で ある。

 ダレ も タニン の ミガワリ に ケンコウ に なる こと が できぬ、 また ダレ も ジブン の ミガワリ に ケンコウ に なる こと が できぬ。 ケンコウ は まったく メイメイ の もの で ある。 そして まさに その テン に おいて ビョウドウ の もの で ある。 ワタシ は そこ に ある シュウキョウテキ な もの を かんじる。 スベテ の ヨウジョウクン は そこ から シュッタツ しなければ ならぬ。

 フウサイ や キシツ や サイノウ に ついて は、 カクジン に コセイ が ある こと は ダレ も しって いる。 しかるに ケンコウ に ついて おなじ よう に、 それ が まったく コセイテキ な もの で ある こと を ダレ も リカイ して いる で あろう か。 この バアイ ヒト は ただ ジョウブ な とか よわい とか いう はなはだ イッパンテキ な ハンダン で マンゾク して いる よう に おもわれる。 ところが レンアイ や ケッコン や コウサイ に おいて コウフク と フコウ を ケッテイ する ヒトツ の もっとも ジュウヨウ な ヨウソ は、 カクジ の ケンコウ に おける きわめて コセイテキ な もの で ある。 セイリテキ シンワセイ は シンリテキ シンワセイ に おとらず ビミョウ で、 タイセツ で ある。 オオク の ニンゲン は それ に きづかない、 しかし ホンノウ が カレラ の ため に センタク を おこなって いる の で ある。
 かよう に ケンコウ は コセイテキ な もの で ある と すれば、 ケンコウ に ついて の キソク は ニンゲンテキ コセイ に かんする キソク と ことならない こと に なる で あろう。 ――すなわち まず ジコ の コセイ を ハッケン する こと、 その コセイ に チュウジツ で ある こと、 そして その コセイ を ケイセイ して ゆく こと で ある。 セイリガク の キソク と シンリガク の キソク とは おなじ で ある。 あるいは、 セイリガク の キソク は シンリガクテキ に ならねば ならず、 ギャク に シンリガク の キソク は セイリガクテキ に ならねば ならぬ。

 ヨウジョウロン の コンテイ には ゼン-シゼン テツガク が ある。 これ は イゼン、 トウヨウ に おいて も セイヨウ に おいて も、 そう で あった し、 コンニチ も また そう で なければ ならぬ。 ここ に シゼン テツガク と いう の は もちろん あの イガク や セイリガク の こと では ない。 この シゼン テツガク と キンダイ カガク との ソウイ は、 コウシャ が キュウハクカン から シュッパツ する の に はんして、 ゼンシャ は ショユウカン から シュッタツ する ところ に ある と いう こと が できる で あろう。 ハツメイ は キュウハクカン から しょうずる。 ゆえに コウシャ が ハツメイテキ で ある の に はんして、 ゼンシャ は ハッケンテキ で ある と いう こと も できる で あろう。 キンダイ イガク は ケンコウ の キュウハクカン から、 その イミ での ビョウキカン から でて きた。 しかるに イゼン の ヨウジョウロン に おいて は、 ショユウ されて いる もの と して の ケンコウ から シュッタツ して、 いかに して この シゼン の もの を ケイセイ しつつ イジ する か と いう こと が モンダイ で あった。 ケンコウ は ハツメイ させない、 ビョウキ が ハツメイ させる の で ある。

 ケンコウ の モンダイ は ニンゲンテキ シゼン の モンダイ で ある。 と いう の は、 それ は たんなる シンタイ の モンダイ では ない と いう こと で ある。 ケンコウ には シンタイ の タイソウ と ともに セイシン の タイソウ が ヒツヨウ で ある。

 ワタシ の シンタイ は ヨノナカ の もの の ウチ ワタシ の シソウ が ヘンカ する こと の できる もの で ある。 ソウゾウ の ビョウキ は ジッサイ の ビョウキ に なる こと が できる。 タ の もの に おいて は ワタシ の カテイ が モノ の チツジョ を みだす こと は ありえない のに。 ナニ より も ジブン の シンタイ に かんする キョウフ を とおざけねば ならぬ。 キョウフ は コウカ の ない ドウヨウ を しょうずる だけ で あり、 そして シアン は つねに キョウフ を ます で あろう。 ヒト は ジブン が ハメツ した と かんがえる よう に なる、 ところが いったん ナニ か キンキュウ の ヨウジ が できる と、 カレ は ジブン の セイメイ が カンゼン で ある の を みいだす と いった レイ は おおい。

 シゼン に したがえ と いう の が ケンコウホウ の コウリ で ある。 ヒツヨウ なの は、 この コトバ の イミ を ケイジジョウガクテキ な フカミ に おいて リカイ する こと で ある。 さしあたり この シゼン は イッパンテキ な もの で なくて コベツテキ な もの、 また ジコ ケイセイテキ な もの で ある。 シゼン に したがう と いう の は シゼン を モホウ する と いう こと で ある。 ――モホウ の シソウ は キンダイテキ な ハツメイ の シソウ とは ことなって いる。―― その リエキ は、 ムヨウ の フアン を のぞいて アンシン を あたえる と いう ドウトクテキ コウカ に ある。

 ケンコウ は モノ の カタチ と いう よう に チョッカンテキ グタイテキ な もの で ある。

 キンダイ イガク が ハッタツ した ノチ に おいて も、 ケンコウ の モンダイ は キュウキョク に おいて シゼン ケイジジョウガク の モンダイ で ある。 そこ に ナニ か ヘンカ が なければ ならぬ と すれば、 その ケイジジョウガク が あたらしい もの に ならねば ならぬ と いう だけ で ある。 イシャ の フヨウジョウ と いう コトワザ は、 ヨウジョウ に ついて は、 イシャ にも ケイジジョウガク が ヒツヨウ で ある こと を しめす もの に ほかならぬ。

 キャッカンテキ な もの は ケンコウ で あり、 シュカンテキ な もの は ビョウテキ で ある。 この コトバ の ウチ に ふくまれる ケイジジョウガク から、 ヒト は リッパ な ヨウジョウクン を ひきだす こと が できる で あろう。

 ケンコウ の カンネン に もっとも おおきな ヘンカ を あたえた の は キリスト-キョウ で あった。 この エイキョウ は その シュカンセイ の テツガク から しょうじた の で ある。 ケンコウ の テツガク を もとめた ニーチェ が あのよう に きびしく キリスト-キョウ を コウゲキ した の は トウゼン で ある。 けれども ニーチェ ジシン の シュカン シュギ は、 カレ が あれほど もとめた ケンコウ の テツガク に たいして ハカイテキ で ある の ホカ なかった。 ここ に チュウイ す べき こと は、 キンダイ カガク の キャッカン シュギ は キンダイ の シュカン シュギ を たんに うらがえした もの で あり、 これ と ソウセイジ で ある と いう こと で ある。 かよう に して シュカン シュギ が でて きて から、 ビョウキ の カンネン は ドクジセイ を もち、 コユウ の イミ を えて きた の で ある。 ビョウキ は ケンコウ の ケツボウ と いう より セッキョクテキ な イミ の もの と なった。

 キンダイ シュギ の ゆきついた ところ は ジンカク の ブンカイ で ある と いわれる。 しかるに それ と ともに ジュウヨウ な デキゴト は、 ケンコウ の カンネン が おなじ よう に ブンレツ して しまった と いう こと で ある。 ゲンダイジン は もはや ケンコウ の カンゼン な イメージ を もたない。 そこ に ゲンダイジン の フコウ の おおきな ゲンイン が ある。 いかに して ケンコウ の カンゼン な イメージ を とりもどす か、 これ が コンニチ の サイダイ の モンダイ の ヒトツ で ある。

「ケンコウ ソノモノ と いう もの は ない」、 と ニーチェ は いった。 これ は カガクテキ ハンダン では なく、 ニーチェ の テツガク を ヒョウメイ した もの に ほかならぬ。 「ナニ が イッパン に ビョウキ で ある か は、 イシャ の ハンダン より も カンジャ の ハンダン および ソレゾレ の ブンカケン の シハイテキ な ケンカイ に イゾン して いる」、 と カール ヤスペルス は いう。 そして カレ の かんがえる よう に、 ビョウキ や ケンコウ は ソンザイ ハンダン で なくて カチ ハンダン で ある と すれば、 それ は テツガク に ぞくする こと に なろう。 ケイケンテキ な ソンザイ ガイネン と して は ヘイキン と いう もの を もちだす ほか ない。 しかしながら ヘイキンテキ な ケンコウ と いう もの に よって は ヒト ソレゾレ に コセイテキ な ケンコウ に ついて なんら ホンシツテキ な もの を ハアク する こと が できぬ。 もし また ケンコウ は モクテキロンテキ ガイネン で ある と すれば、 その こと に よって まさに それ は カガク の ハンイ を だっする こと に なる で あろう。

 シゼン テツガク あるいは シゼン ケイジジョウガク が うしなわれた と いう こと が、 この ジダイ に かくも ケンコウ が うしなわれて いる ゲンイン で ある。 そして それ が また この カガクテキ ジダイ に、 ビョウキ に かんして かくも オオク の メイシン が ソンザイ する リユウ で ある。

 じっさい、 ケンコウ に かんする オオク の キジュツ は つねに なんらか の ケイジジョウガクテキ ゲンリ を ふくんで いる。 たとえば いう、 ヘンカ を おこない、 ハンタイ の こと を コウカン せよ、 しかし より おだやか な キョクタン に たいする コノミ を もって。 ゼッショク と ホウショク と を もちいよ、 しかし むしろ ホウショク を。 さめて いる こと と ねむる こと と を、 しかし むしろ ねむる こと を。 すわって いる こと と うごく こと と を、 しかし むしろ うごく こと を。 ――これ は ヒトツ の ケイジジョウガクテキ シコウ で ある。 また たとえば いう、 ただ ヒトツ の こと を かえる の は よく ない、 ヒトツ の こと より も オオク の こと を かえる の が より アンゼン で ある。 ――これ も ヒトツ の ケイジジョウガクテキ ゲンリ を あらわして いる。

 ケンコウ と いう の は ヘイワ と いう の と おなじ で ある。 そこ に いかに オオク の シュルイ が あり、 オオク の カチ の ソウイ が ある で あろう。
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