ふいご屋の日常

ポジティフ・オルガン&チェンバロ貸出屋の傍ら歌手、の日記

【6月24日】イタリアンオルガン、コンサートホールへデビュー

2011-06-25 12:18:08 | オルガン
今まで出動先が教会や学校に留まっていたウチのイタリアンオルガン、本日めでたくコンサートホールへのデビューと相成りました。持ち込んだ先は私の好きな東京文化会館小ホールであったことも嬉しい限り。記憶が定かでないが、出演者として、また他人の楽器運搬のお手伝いでは何度も出向いたこの場所も、自分の楽器を持ち込むことは十年以上無かったような気が(ところで、おそらく前回持ち込んだ自分の楽器は、今は手放して手元に無いフレミッシュ一段チェンバロで、使って下さったのも今は亡きチェンバリスト&フォルテピアニストのKさん。だから、この会場に来るといつもその時のことを思い出すのです)。
ステージのど真ん中に置かれ、存在感を大いに誇示していた我がオルガン(タンスとも仏壇とも呼ばれていたが)、その雄姿(?)を撮るヒマがなく、お載せした画像はリハ前の明かり合わせの時のもの。少し暗くてすみません。
今までの現場と異なり、今回は(当然に)通常我々が経験しているようなタイムスケジュールに沿ったものなので、自分としてもその進め方にやや緊張して当たりました。というのも、この楽器は調律の手間にしても通常のポジティフに比べていささか厄介で時間がかかる。温度変化の読みを多少間違えてもポジティフなら急遽手直しすることが可能ですが、こちらはそうは簡単にはいかない。今回はリハ終了が計画よりだいぶ押して焦ったけれど、ピッチ変化は読みどおりで、少しタイトなスケジュールの中で巧い具合にバラツキ除去だけ処理し終え一安心。

通奏低音楽器として2曲使われた後、オルガンが独奏楽器として登場したエマヌエル・バッハのオルガン協奏曲 ト長調 Wq34 ではプロスペクトのFiffaroはPrincipaleとピッチを揃えて二重プリンチパーレとして使用(第2楽章)し、また当初使う予定のなかったFlauto XII(2 2/3')も音色変化を多様にするため使われていました。すべてオープンの笛を積み上げるイタリアン特有のディスポジションとも相俟って、通常サイズのポジティフでは実現できない音響を得られていたのではないかと思われ、このような楽器の特性を最大限に引き出し、楽器の可能性を大きく広げて下さった大塚直哉さんには大大大感謝なのでした。

この楽器はうまく話が進めば来年前半に同じ場所に再登場の予定。そこでも「18世紀後半のオルガン協奏曲」に使われるはずで、17世紀イタリアバロックモデルという文字情報から受ける(地域限定的な)印象とは異なり、実はかなり汎用性のある楽器であることを再びお示しできるのではと思っています(だから演奏家の皆さん、どんどん使ってね 笑)。

…そう言えば、この楽器を今来日中のベルギーの超有名古楽アンサンブルのメンバーが観に来たいと言っていた。ウチの楽器を作ったビルダーの別の楽器を彼らもヨーロッパで使い、その時のマエストロの評価も大変高かったのだとか。
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お勧め演奏会情報(2011年7月)~バロックヴァイオリン&チェンバロ+オルガン

2011-06-22 16:52:14 | チェンバロ
先月に引き続き、独奏ヴァイオリンのコンサートのお手伝いをします。この前のお仕事はモダンヴァイオリンと、でしたが、今度はバロックヴァイオリン。出動する鍵盤楽器はウチのイタリアンチェンバロ、それに加えてイタリアンオルガンも追加投入することが決定。チェンバロとオルガンは曲によってそれぞれ相応しい方を用い、テンペラメントも異なる物をセットすることにしました。

★音薫る夏の午後~ドイツバロック音楽★
2011年7月10日(日)16時開演 於 日本基督教団本郷教会(杉並区上荻4-24-5 アクセス情報はこちら

バロックVn 小田切弘美
チェンバロ&オルガン 小川絢子

J.J.フローベルガー(1616-1667)組曲
H.I.F.ビーバー(1664-1704)パッサカリア(「ロザリオのソナタ」より)
M.ヴェックマン(1616-1674)トッカータ
G.P.テレマン(1681-1767)12のファンタジアより
G.F.ヘンデル(1685-1759)ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタより
ほか

前売り2500円 当日3000円





日曜の昼下がり、皆様のお越しをお待ちしております。若手のお二人による魅力的なプログラムをどうぞお楽しみに。
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臨戦態勢入り

2011-06-21 22:06:49 | オルガン
今日は24日(金)の演奏会でイタリアンオルガンをお使いになる大塚直哉氏をご案内し、一時間ほど時間を使い、試奏とレジストレーションの検討をしていただきました。私も当日はレギストラントをいたしますのでそちらについても少し試行。
多感様式のオルガン協奏曲の名曲を日本でまだまだ聴くことのできる機会の少ないイタリアンディスポジションの楽器によってお聞きいただきたく、皆様のお運びを是非ともお待ち申し上げております。

本日は別の方もこのオルガンのお試しのために来訪され、その結果、当初予定していたチェンバロの他にこの楽器を使っていただくことに決定。その演奏会情報はあらためて掲載します。



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2週連続で渋谷のど真ん中へ

2011-06-19 22:10:35 | チェンバロ
つい先日オルガン仕事があったばかりの渋谷の新しい施設に、今日はチェンバロをお持込。もっとも、出動先は小ホール(客席数約350名)の方で、こちらは初体験。同じ施設に2週連続で出向くのも初めてのことだったかも。
この小ホールで先日フォルテピアノ(グラーフモデル)を使った演奏会が開かれたところだったので、どんな響きなのかと思って出向いたのですが、こちらも古楽との親和性が期待できそうです。

今日のお仕事はアマチュアの弦楽合奏団さんの第一回の演奏会のお手伝い(Webはこちら)。よその仕事でご一緒した方がここのメンバーだったことから、今公演でのご依頼をいただきました。ところで、代表者・コンマスの方が自分とほとんど同じようなお名前でお互いびっくり。そういえば戯れに自分の名前をWebで検索するとこの方のことも引っかかるなあ、と思っていました。まさかそのご本人にお目にかかれるとは(笑)。
通奏低音としてチェンバロを使うのは一曲のみでしたが、それは聞ける機会もそう頻繁には無いであろうテレマンのヴィオラ協奏曲。モダン楽器の中でウチのイタリアンが太刀打ちできるかと一瞬案じられたものの、最近鳴りっぷりの良いチェンバロは周りのゴージャスな響きの中に埋没することなくきちんと主張していたのでまずは一安心。その他の、ヤナーチェクとドヴォルザークの2曲も舞台袖で楽しませていただきました。

今回のチェンバロを弾いてくれた方はピアノでのキャリアは長い一方、チェンバロはまだ始めたばかり。しかし、私もよく存じ上げている優秀なチェンバリストさんにきちんとレッスンを受けておられ、また事前に何度も練習にお越しになられていた結果、何も心配することなくお使いいただけました。お店を開いていると古典鍵盤楽器に習熟していない方からの「借りるのは本番当日だけでいい」というご依頼も無くは無いのですが、それでは結局は演奏者自身が楽しめる段階に至ることが不可能だし、また確実に楽器が傷むので楽器本体にも、その後にその楽器を借りられる方にも、そして持ち主たる私にも不幸なこと(涙)。今回、その問題をクリアすべくこのような楽器にきちんとプログラムを組んでアプローチし、実際に十分に楽器を鳴らすことを獲得できた演奏者さんには本当に感謝なことでした。


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ノヴァヴォーチェ第二回演奏会@横浜みなとみらい大ホール

2011-06-18 23:56:04 | 
今日は自分がそこで歌うのは初体験である、横浜みなとみらいホールの大ホールに出動(電車通勤)。朝早くの集合が大変、という声も団員から聴かれたが、楽器を持ち込む仕事に比べたら一時間は遅かったので、自分にとっては比較的楽チンな現場(苦笑)。

モーツァルトの宗教的合唱曲の中でも今回の2曲は採り上げられる機会がそうそう無いと思われる物で、そのようなプログラムに関わることができた幸せを深く感じることの出来た演奏会でした。マエストロ氏の指揮で歌うのは2回目ですが、彼の棒は、何と言っても歌い手に正しく息をさせ、そして意図していることが実に明確に分かる指揮であると再認識。彼によって、まだ創団して3年目の合唱団<Nova Voce>がここまで導かれるに至ったことはうべなるかな、でした(また、それには優れたヴォイストレーナーのお三方の存在も忘れてはなりません)。独唱陣の歌唱も実に素晴らしく、合唱席から聞き惚れておりました。
次回演奏会は来年9月。メンデルスゾーンの大作「聖パウロ」が採り上げられるとのことで、多くの「合唱人」の方々がそこに加わっていただくことを願ってやみません。
(団員募集の情報はこちらから)

今回はミサ曲の通奏低音や教会ソナタKv336のためにみなとみらいの大オルガン(愛称「ルーシー」)が使われるかと思いきや、よく見慣れてはいるが、実は自分の仕事先で遭遇するのはおそらく初めてのG社のポジティフが登場したのでびっくり。こちらとしても風圧やらヴォイシング、調律法などがかなり気になってしまい、歌いながら耳をそばだててオルガンの音を細かいレベルまで聴いておりました。ここまで来ると立派な職業病。せっかく歌に専念できる現場だったはずなのにぃ、と思わず苦笑することしきり。
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今夏の電気代請求が恐い

2011-06-17 23:54:26 | チェンバロ
オルガンにとっては多少は湿度があった方がよいが、チェンバロには夏の高い湿度は好ましくない。音の鋭敏さが失せるし、アクションに不具合が発生するから。というわけで、他の機器の節電分で電気を捻り出し、楽器部屋の除湿器をフル稼働中。
よくよく確認したらわがチェンバロは年内は毎月一回は必ず出動予定と判明。今やそこそこ収益の柱になっているのだからこれからは放ったらかさないで、手厚く世話してやらねば(笑)。
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出動準備

2011-06-16 22:31:12 | オルガン
来週登板予定のイタリアンオルガンの諸調整のためにその保管場所にお出かけし、「お裁縫作業」(?)の傍ら、今まで基本的にミーントーン(1/4あるいは1/6)にしていた調律を1/6PC系に変更。作業をするのがあまりに久々だったものだから笛の位置を一瞬思い出せなかったぞよ(汗)。
調律にあたってケースの中の笛にアクセスするためにプロスペクトの笛(Fiffaro soprani)を外したりするものだから、もう一台のポジティフ(チェストオルガン)に比べると調律にかなり時間を要するこの楽器、現場の環境変化の予測とそれを踏まえた事前の下調律がより高度に要求されるのでなかなかタフではあります。
でも(そのメカニズムに理屈上は今までのポジティフと異なるところはないものの)、これまでとはまったく異なった調律の「味」は楽しむのに相応しいもの。手に入れて7年たったポジティフも調律の手順を工夫してだいぶ速く正確に進めることができるようになったはずだが、このイタリアンへのアプローチもそのように次第に「進化」させることができればと思っております。

調律の手直しをひとまず済ませて家に戻るやすぐにチェンバロの調律換えに着手。こちらは午後からいらっしゃるお客様のために、ピッチを415から442Hzへ、調律法を1/6PCから1/8PCへ変更しました。その、次回のチェンバロの登板は次の日曜日で、モダン楽器のアンサンブルの中で起用される予定。
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出演情報(2011年8月)~シャルパンティエとカリッシミ!

2011-06-15 22:27:23 | オルガン
今週は土曜日に横浜みなとみらいで行われるコンサートの仕込み週間。歌うだけの現場は久しぶりで、その「身軽な」感じのお仕事を楽しんでいる次第(ただ、自分が歌う時に他人のオルガンが出動する現場は、楽器屋開業以来極めて珍しくて、その点にはやや不思議な感覚を拭えないでいるか 苦笑)。

さて、自分の仕事の中で大きな比率を占める(?)楽器提供+声楽アンサンブル参加のパターンでの次の現場はこれ。

★コンフェデラーツィオ・オラトーリ ~師弟による2つのオラトリオ★

G.カリッシミ:「イェフタ」、M-A.シャルパンティエ:「聖ペテロの否認」 ほか

テオルボ:アンドレ・ヘンリッヒ
ポジティブオルガン:畑野佳恵
バロック・ヴァイオリン:石川和彦
リコーダー増永奏

合唱・独唱:ヴォイスペクティヴ
ソプラノ:青山稚佳子/北爪かおり/鈴木芳
アルト:米谷優/八川浩子
テノール:田中伸一/真木喜規 (ディレクター)
バス:石井賢/時宗務/中田 浩隆/吉田健悟

【日時・場所】
(1)8月3日(水)19時開演 於 大阪市立 阿倍野区民センター・小ホール(大阪府)
(2)8月4日(木)19時開演 於 西宮市甲東ホール(兵庫県)
【価格(前売り)】
両公演とも¥3,000

※オルガンを持参いたします。

17世紀のカリッシミ、シャルパンティエの二人の音楽をともに愛してやまない私は、いずれこの師弟の音楽をカップリングした演奏会に関われないかと思っていたのですが、それがこんなに早く実現するとは予想だにしておらず、お話が来た時に欣喜雀躍したのは言うまでもありません(ふふふ)。

昨年11月の京都でのモンテヴェルディ/ヴェスプロ公演でご一緒させていただいた方々を含む、関西で活躍する若手の演奏家の中に加わらせていただきます。皆様のお越しを是非ともお待ち申し上げております。

(余談ですが、8/2は東京で夜公演のチェンバロ仕事。更に5日は東京でのコンサートへのお招きがあり…。ふうう)
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今日からしばらくチェンバロ旬間

2011-06-11 23:25:03 | チェンバロ
この一週間で名手上尾氏により新しい生命を吹き込まれた主力武器のポジティフもしばらく出動はお休み(その楽器を今またステージに持ち出せば彼が植えつけた「抜群の鳴り」が体感できますよ。お借りになる人、いらっしゃいませんか?)。これからしばらくはチェンバロの仕事が続き、何となくお仕事の態勢が変わる気分。合間には歌のお仕事が1件、そして新オルガンの「大仕事」が挟まりますが。

今日は、昨日書いたようにオランダ製の2段フレミッシュを渡されて、それを四ツ谷に運搬・調律するお仕事。以前ご一緒した歌い手さんに今回初めて助手をお願いし、お蔭で安心して作業ができました(普段軽いイタリアンしか扱っていない我が身ではありましたが、ここに来て普通の重さの物のハンドリングにも慣れてきたかも)。しかし、タイムスケジュールはいささかタイト、環境もやや厳しく大変でしたが、こういった時に調律を破綻が少ないようにまとめていくのは経験が物を言うのだろうな、と大汗をかきかきピンを動かしながら思ったものです。

こちらの帰宅に合わせて、今晩もまたまた同業者さんが楽器をお引取りに来訪。実はしばらくその楽器を預かっておきたいと半ば本気で思ったものの、予定通り返却したのでした。彼には連日お世話になり、大感謝。
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【6月10日】シャルパンティエ!

2011-06-11 11:02:16 | オルガン
今日は渋谷駅から至近の位置にある新しいホールへオルガンで出動(ここに出向くのはこれで2回目。前回のお仕事は昨年12月のバロックオペラでしたね)。
というわけで通常のコンサート仕様の際のこのホールのサウンドを知るのにこれが初めての機会だったし調律環境も把握できてその点でも有意なお仕事となりました(年内、これから何度かここでの仕事が入っているのだが、キャパなどの点で少し大きなサイズの古楽向きということなのかも)。で、本日はピッチ変動が予測レンジから少しだけ外れ、まあ、手直ししなくても良い範囲ではあったけれど、時間が十分にあったし実質初めての場所でリスクを抑えるという観点から、休憩中にもう一度丁寧に調律し直しました。

当夜は百戦錬磨の独唱・器楽陣、若手の合唱陣による賑々しい音響が実現。17世紀フランスのテイストを聴かせるのはそうそう簡単でないと思っているが、この夜はその薫り立つサウンドをこちらも舞台袖で堪能した次第。
そういえば、自分にも近いうちにシャルパンティエを歌う機会が訪れるかもしれないのですが、そのことは追ってまた。

終演後、大急ぎで撤収して帰宅すると家の前に同業者さんがお待ちかね。彼から、ある人が持っている2段のチェンバロを1日預かることになっていたのですが、実は彼も今日の会場の道を挟んだ反対側の別の施設でお仕事でした。いっそ渋谷の現地でそのチェンバロを受け取ればよいようなものの、ウチのクルマにオルガンと一緒には入らないのでご足労頂いたというわけ。その楽器、自分が調律するのは今度が初めてだが、前のオーナーの時代に運搬の手伝いをしたことがあるという代物(2階から手持ちで狭い階段を下げていくのがキツかった記憶が…)。こんな形で再会できるとは不思議な気分。
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