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枯れたオオウバユリ

2014年12月09日 | 地域の山野草
晩秋から雪の季節になると山野草の話題がほとんどなくなる。この時期になると、鶴田知也氏の「秩父路の野草冬春編」を思い出す。この書の冒頭に次のような記述がある。『かつて私はさる高名な植物学者に「冬の植物にもっと関心を示すべきではあるまいか」ということで、お褒めにあずかったことがあります。、、、、、、若いころ読んだアメリカの哲人の「死骸にも独特の美が存する」との卓見にいたく感服したから、、、、』が思い出される。


枯れたオオウバユリ 2014.11.30 川連町古舘

いつでもデジカメをポケットに出歩いて山野草等収めているが、この時期になると鶴田知也氏のいう冬の植物の姿、枯れた植物に関心が離れない。植物は枯れても又春になればその鮮やかな姿をみせてくれる。枯れたのであって死ではない。枯れるのは子孫繁栄の法則かもしれない。

冬の山野草の中で「ウバユリ」、「オオウバユリ」はその代表と思える。枯れた姿は見事。ある種の華やかさと悲しさが漂う。オオウバユリ(大姥百合、学名:Cardiocrinum cordatum var. glehnii )はユリ科ウバユリ属の多年草。ウバユリの変種として扱われる。本州の中部以北、北海道に分布し、やや湿り気のある林内、林縁に自生する。高さは1.5~2.0mくらいになり、花期は7~8月で、10~20個の黄緑色~緑白色の花をつける。花をつけた株は一生を終えるが、元株の脇に子株が育っている。鱗茎はデンプンを含み、食用にできる。北海道では、アイヌによりトゥレプの名で食用にされ、アイヌ民族が用いる植物質の食品の中では穀物以上に重要な位置を占めていた。(一部引用)


オオウバユリ群生 2014.6.14 川連町小坂

今年はいつもの年より多くのオオウバユリが見られた。この場所は沢工事で瓦礫と沢石だらけの荒れ地だが数えてみたら15本も生えていた。花が咲く7月下旬に訪れたら、旺盛なつる性の野草に覆われて姿が見えなくなっていた。

オオウバユリは一度花を咲かせると鱗茎ごと枯れてしまう一回繁殖型植物といわれている。種から芽を出し、始めは一枚葉で1年を過ごし2年目、3年目と葉を増やし大きくなる。6~8年が過ぎた頃、150-200cmにも茎を伸ばし、蕾を作り一生に一度だけ開花し、一つの実に600個弱の種を作り枯れて一生を終える。この時、地上部だけでなく百合根(鱗茎)も姿を消す。子孫を残すため、7年ほどもかけて鱗茎に蓄えた栄養を花茎・花・果実に使い一生を終える。この地に来春も姿を見せてくれるのかはわからない。花が咲けないでしまったから、まだ一生が終わっていないことになりはしないか。来年も芽が出てきたら廻りの草を取り除き、いくらか手助けしてみたいものだ。


オオウバユリ 開花直前 2014.7.28 川連町黒森

漆の木の下に一本のオオウバユリ、廻りはつる性の野草に倒れてしまうが今年はミヨガの密生の中に出てきた。この場所付近には毎年その名に相応しい株に出合える。
 

オオウバユリ 開花 2014.8.3 川連町黒森

7月の集落の林道の草刈りで、何気なく草刈り機に刈られそうにそうになったのを想いとどめさせたら今回見事に咲いた。面白いのは花が横向きに咲くことにある。花はつぶれた筒状で開かない。花が満開になる頃には葉が枯れてくることが多いため、歯(葉)のない「姥」にたとえて姥ユリと名がつけられたといわれている。鶴田知也氏はこの説に満足できないと次のように書いている。『お家騒動の渦中にある幼君を守りぬいた「伽羅千代萩」の正岡のような乳母です。並はずれて背が高い茎の頂上に咲くその花も、思いなしか、忠義一徹で威厳ををそなえ、お色気なしの女丈夫といった身構えです。冬に入って、茎も果実もすべて黄土色になった姿には、為すべき一切を終わったという、りりしさを誇示しているように見えますものですから、私には「姥」ではなく、「乳母」が適切なのです』。

雪降りの中で毅然として個を主張しているように見える。鶴田氏のいう「伽羅千代萩」は「伽羅先代萩」の字違いだろうか。「伽蘿先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)は、伊達騒動を題材とした人形浄瑠璃および歌舞伎の演目。通称「先代萩」といわれ、鶴田知也氏の「秩父路の野草冬春編」から人形浄瑠璃に足を踏み入れてしまったが、門外漢にはほとんど知ることのできない世界。


雪のオオウバユリ 2014.12.3 自宅

ウバユリの果実の中は何段にも棚になっていて少しでも触るとおびただしい種子が飛び散る。花は横向きに咲いて、果実は上向きとなる時期は何時なのだろうか。興味がつきない。枯れたオオウバユリ、間もなく雪の下に埋められてしまうので持ち帰った。周囲に多量の種子を土産にミニサンクチャアリの仲間となった。

今年の雪は降り始めから異常、当地方初雪は11月15日だったがすぐ消えた。12月2日に降り始めた雪、連日根雪ペースで降っている。明日の朝自宅前の枯れた「オオウバユリ」は、雪の中に隠れてしまいそうだ。


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1 コメント

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はじめまして (道産子詩人)
2014-12-15 22:58:21
雪のオオウバユリのような風景は、子供時代によく見かけた記憶が・・

鶴田知也氏や菅江真澄氏についてはほとんど無知なのですが・・初歩的な参考文献などを紹介していただけると幸いです。

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