メンタルヘルス…足立から発進

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若年認知症支援、人材確保の壁・・・相談窓口23都府県のみ

2016年10月27日 | 若年性認知症
若年認知症支援、人材確保の壁 コーディネーター不足、相談窓口23都府県のみ
2016年10月23日 (日)配信朝日新聞

 現役世代で発症する若年認知症=キーワード=の人への支援策の柱として、厚生労働省が全都道府県への早急な設置を目指す専門コーディネーターがいる相談窓口について、今年度までの設置は半分の23都府県にとどまりそうだ。コーディネーターのなり手不足が壁になっている。
 熊本市の男性(61)は製薬会社の営業マンだった約5年前から、約束を忘れたり、歩くのが遅くなったりし始めた。妻(56)に促されて受診し、2013年に認知症と診断された。仕事を辞め、家にこもりがちになった時、通っていた病院で「若年性認知症支援コーディネーター」の太田千里さんに出会った。
 社会福祉士で現場経験が豊富な点を見込まれ、熊本県が14年度に若年認知症の相談窓口を設置した際に任命された。患者や家族の相談に乗り、最適な支援につなげる役割だ。男性とは数回面会し、職員と多く話せるデイサービスがいいと判断。利用者が1日10人ほどと小規模で、自宅から通える県内の事業所を紹介した。
 男性は高齢者に交じって今年6月から利用し、職員と一緒に昼食をつくるなどして少しずつ打ち解けてきた。今も仕事を続けていると思っている。「ここは居心地がいい。僕は暇がないから週1日しか来られないけど」と笑うと、職員は「いつでも好きな時に来てくださいね」と応じた。
 ■仕事継続に助言
 政府は昨年1月、初の認知症の国家戦略となる「新オレンジプラン」を策定し、若年認知症の支援強化を打ち出した。柱が、この専門コーディネーターがいる相談窓口づくりだ。
 若年認知症は、現役世代で発症するため仕事が続けづらく経済的に不安定になりがちだ。レクリエーション中心のデイサービスなど高齢者向けの介護サービスが合わず家に閉じこもり、介護する家族が仕事との両立に悩むといった特有の課題がある。
 医療では認知症治療の中心となる認知症疾患医療センター、介護では地域包括支援センター、経済保障では障害年金など支援の受け皿や制度は多岐にわたる。コーディネーターは本人や家族の相談を受け、各機関などとやりとりして最適な支援策を紹介する。
 仕事の継続や退職後の支援も重要だ。東京都の「若年性認知症総合支援センター」は、本人が働いていれば、コーディネーターができる限り働き続けられる対応策を雇用側に助言する。駒井由起子センター長は「診断前に退職して傷病手当金がもらえないこともある。本人や家族が損をしないようにしたい」と話す。
 ■人件費の補助も
 厚労省は早急に全都道府県にこうした相談窓口を設けたい考えで、今年度から全国を対象にコーディネーターの人件費補助制度を始めた。ただ、申請状況から今年度までの設置は東京、滋賀、福岡など23都府県にとどまりそうだという。
 壁になっているのがコーディネーターのなり手不足だ。今年度の申請をしなかった佐賀県は「状況によっては自立前の子どもがいる家族の支援も必要。知識やケースワーク能力が求められ、人材確保は簡単ではない」(担当者)とする。
 (畑山敦子)
 ◆キーワード
 <若年認知症> 65歳未満で発症する認知症で、厚生労働省の2009年発表の調査で推計約3万8千人いる。発症平均年齢は推定51歳。相談は増える傾向で、認知症介護研究・研修大府センター(愛知県)が国の委託で実施する無料電話相談(0800・100・2707)への15年の相談件数は、介護者を含めて2240件。10年の1055件の倍以上だ。

40歳未満へ引き下げ案も 支え手減少に危機感・・・介護保険

2016年10月27日 | ニュース(介護)
40歳未満へ引き下げ案も 支え手減少に危機感 「どうなる!?介護保険」保険料の負担年齢
2016年10月26日 (水)配信共同通信社

 介護保険料を支払うのは何歳からがふさわしいのか。制度発足前から20年以上にわたって議論されている課題だ。
 現在は40歳以上。65歳以上(1号被保険者、約3200万人)と40~64歳(2号被保険者、約4200万人)に分けて徴収されている。今後、40~64歳の人口は減る見通しで、政府内には保険料を負担する人を増やさないと制度が持たないという危機意識がある。
 厚生労働省の審議会で8月末、保険料負担の対象年齢を40歳未満に引き下げるかどうかが議題になった。しかし委員からは「若者の納得が得られない」と反対意見が相次いだ。40歳以上だと自分の親の介護が現実味を帯びるから理解してもらいやすいが、20~30代には実感しづらいだろうという判断だ。子育てに忙しい年代でもある。
 「将来的にはやむを得ない」と容認する声もあったが、厚労省も慎重に検討したい考えで、今回の制度見直しでは見送りとなりそうだ。
 福岡市で働く女性(30)は、長崎県に住む祖母(98)と父(67)の遠距離介護中。要介護度4の祖母は特別養護老人ホームに入所し、年金はホームの利用料でほぼ消えてしまう。父の通院には毎回付き添い、親たちの介護と医療の保険料を一部肩代わりしている。
 介護保険の必要性は理解しつつも、40歳未満も保険料納付の対象となれば「今でも大変なのに、これ以上払うのは厳しい」と顔を曇らせる。
 2000年に介護保険制度が始まる際にも「20歳以上は全員が納付してはどうか」との議論はあった。だが地方自治体から「若い世代は国民健康保険料の徴収すらうまくいかない」と反発の声が上がり、当時の与党の判断もあって「40歳以上」と決まった経緯がある。
 40~64歳の2号保険料は介護費用の増加を受け上昇傾向。16年度予算で9兆6千億円の介護給付費のうち、28%の2兆7千億円を2号保険料で賄っている。00年度には平均で月約2千円(事業主負担を含む)だったが、現在は月5400円前後(同)と3倍近い。
 厚労省幹部は「そろそろ真剣に議論し直さなければならない時期に来ている」として、20年代以降の年齢引き下げを視野に入れる。
 介護保険創設にかかわった同省OBの中村秀一(なかむら・しゅういち)・国際医療福祉大大学院教授は「年齢を引き下げるなら、現役世代向けにサービス給付を広げる検討も必要になる」と指摘。「非正規労働者が多い若年層の現状も踏まえて議論すべきだ」と話す。