ジャン・アレチボルトの冒険

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「収束」できない原発事故 ~ 「排水」が管理できない

2011-05-01 11:51:49 | 原発事故
数日前、政府・東京電力の事故対策統合本部は、タービン建屋や立て坑に溜まった高濃度汚染水の処理計画を発表した。放射性物質をゼオライトに吸着させるなどして「浄化」して、再び冷却水として使うというものだ。

しかし、汚染水の処理で肝心なことは、高線量の放射性廃棄物をどこにどのように保管するかという点である。発表された計画では、高線量の汚染水をさらに高線量の放射能ゼオライトに変換するようだが、では、その超高線量ゼオライトはどう処理するのだろう?

そのまま地下深く埋めるのか、さらに別の形にするのか、それはどの場所なのか、受け入れ可能な施設はあるのか、そこの自治体は承諾してくれるのか。

対策本部の答えは「今後、考える」。

これでは、ほとんど意味のない「処理計画」である。

さらに、放射能汚染水を「どうやって処理するか」という以上に、「どうやって原子炉配管系の外に出ないようにするか」こそより深刻な問題である。

事故が発生してから一ヵ月半。原子炉への冷却水注入はどうにか行えるようになってきた。しかし、注入された毎日500トンもの水が、溶融燃料棒と接触して高濃度汚染水になった後、しかるべき排水配管系を通して、しかるべきタンクに回収するシステムは全く実現できていない。

それどころか、どこから漏れているのか、どうやってタービン建屋や立て坑に流れ込んでいるのか、それすら不明である。

当然のことだが、タービン建屋は高濃度汚染水を貯蔵するように作られてはいない。そもそも、この場所は管理区域外であって、放射性物質が漏れ出すこと自体が「想定外」の出来事だ。

そのため、タービン建屋地下に溜まった汚染水は、土壌にしみ込んだり、地下水に流れ込んだり、海へ流れ出たり、さらなる外部汚染を引き起こし続けている可能性が高い。

一ヶ月ほど前、2号機取水口付近で、この汚染水が大量に海に流出しているのが発見され、水ガラス注入で何とか食い止めたが、地下水路への流出自体が止まったわけではない。実際、タービン建屋付近の地下水の汚染が、さらに進んでいることを示すデータが最近のニュースでも流れている。

しかし、圧力容器から出てくる高濃度汚染水を一度も外部に漏らさず回収する仕組みを作るのは、現状ではほぼ絶望的だ。

原子炉建屋は1号機から3号機まで、とても作業員が入れるような線量ではない。汚染水が漏出している箇所を見つけるだけでも、大変な仕事である。それを補修するなど、想像すら出来ない難事業だ。

対策本部は、タービン建屋地下からポンプで汚染水を回収して「処理」を行い、再び冷却水として使うことを「循環式冷却システム」と呼びたいようだ。

しかし、これは誤魔化し以外のなにものでもない。配管からの漏出やタービン建屋地下など、汚染水の流れを管理できない場所を経由する以上、それを「循環」と言うことは出来ない。

「注水」には成功したが、「排水」は全く管理できない。管理できるメドすら立たない。

福島第一原発事故の偽らざる現状である。

政府がこの認識を持たず、「工程表」や「汚染水浄化処理計画」で原発事故の「収束」を世界にアピールするようであれば、次のフランス、ドービルサミットで日本が袋叩きにあう可能性が高い。

安全でないものを安全ということの危険性は、今回の事故で嫌というほど分かった。この上、終わってもいないものを終わったという過ちは犯すべきではない。

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