はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

魔法の靴?

2010-09-02 21:28:22 | 女の気持ち/男の気持ち
 駅前通りの小さな、ありふれた靴店。店主夫妻が懇切なアドバイスをしながら、靴を見たててくれると、知人が教えてくれた。
 若いころは、先のとがったおしゃれなハイヒールを痛みをこらえて履いていた。しかし外反母趾がひどくなり、近ごろはかかとの低い靴ばかりを愛用している。それでも長時間靴を履いていると足が痛くてたまらす、行儀が悪いが、椅子に座るとすぐ靴を脱いでしまうありさまだ。
 そんな悩みを話すと、素足になるように言われる。外反母趾に加え、高が薄くて足が長いと見立てられ、数足の靴を選んでくれた。
 次々と履きながら、今までと違う感覚に驚く。さらに靴の内側に薄いクッション材を入れると、ぴったりと足に吸い付くようだ。合わせてもらった靴で店内を歩いてみると、ついさっきまで履いていた靴と全然履き心地が違う。
 「足は第二の心臓ですからね。足に合う靴を選ばないといけないですよ」と言われ、2作を購入した。「そんなに痛かったのなら、買った靴を履いて替えればいいじゃないか」と夫に言われ、軽やかな足取りで車に乗り込む。
 後日、夫と外出した時に、家に着くまで一日中一度も靴を脱ぐことがなかっのにおどろいた。いつも車の中で脱いでいたのにであ。
いつみ車の中で脱いでいたのにである。まるで魔法の靴を履いているかのようだ。「赤い靴」のカレンのように、いつまでも踊れそうなこのごろ。
  福岡県飯塚市 西田磨美(54) 2010/9/2 毎日新聞の気持ち欄掲載



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