はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

観音祭り

2017-08-21 07:15:30 | はがき随筆
 小学生の頃、父母の実家のちょうど中間にある岬の六月灯を待ち焦がれた。太崎観音と呼ばれて、昔の土砂崩れで集落は既になく、祠があるだけの場所だ。桜島と霧島連山を望め、撮影ポイントに指定されている。
 祭り当日は国道の両側に並ぶ多くの露店が、アセチレンガスの明りの下、玩具や花火、綿飴などを所狭しと並べ子どもたちを誘う。母親から促され、名残惜しく何度も振り返りながら家路に就いたものだ。
 もう一つの楽しみは、祭り会場への途中にある小川で飛び交う蛍。帰り道は虫かごから放つ明りが提灯のようだった。
  垂水市 川畑千歳 2017/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載

今日の私

2017-08-21 07:06:45 | はがき随筆
 ある夜、NHKの<ラジオ深夜便>から聞き覚えのある声が……。竹を割ったようなサッパリとした物言い。そうそう、これはプロ野球近鉄バッハローズの大投手、鈴木啓示さんだ。そのトーク番組聞くともなく聞いていると、こんなことをおっしゃる。
 「私もね、年を取りました。でもね、これからの私の人生の中で今日の私はいちばん若いんですよ。頑張ります」
 思わず膝を打った。いつも「これまでの私の人生の中で今日の私はいちばん古い」とへこんでいたから……。ちょっと前向きになれそうな気がした。
  霧島市 久野茂樹 2017/8/20 毎日新聞鹿児島版掲載