眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

時間の許す限りは

2023-07-01 09:07:00 | 忘れものがかり
兄のシャツを着て街を歩く
ピッタリ合っていることが
どう考えても不可解だ

この空の下を
どこまで歩いて行っても
もう会うことがない

兄の本棚にあった
多くの書籍の中には
見るからにきれいで
中にはがきが挟まったままのものも
多く残されていた
(きっと楽しみに残していたのだ)

その一部が僕のデスクに積み上がっている

『捨てる練習』
『時間は逆戻りするのか』
『簡易生活のすすめ』
『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。』
『男の流儀』
『島さん』
『生物はなぜ死ぬのか』
『なぜ時間は飛ぶように過ぎるのか』
『忘れる読書』
『瞬読』
『言語ゲームの練習問題』
『時間は存在しない』

兄の興味に少し寄ってみる
そんな時間を持ちたいと思う

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宝くじに当たる

2023-06-30 09:02:00 | 忘れものがかり
途方に暮れている母を
遺品に紛れた宝くじに引き込んだ
束の間ならば現実を離れられる
ジャンルというものもある
(それにしてもどうして未開封なのか?)

1等から順に確かめる
大当たりなんて認めないと母は言う
兄の命には見合わないからだ
(100万円までなら許すらしい)

案の定 まるで当たりくじは出てこない

手つかずのままのスクラッチを10円玉で削る
母は表面の銀のみならず絵柄まで削ってしまう
(力を込めすぎだ)

やっぱり 全部駄目だった

削りかすで真っ白になったテーブルの上に
コードレスの掃除機を滑らせた

母が使いこなせない奴

(なぜ?) 今はそう問うこともなくなった

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喪主の代理

2023-06-21 21:20:00 | 忘れものがかり
マイクの前に2人が立った後で
僕は姉を下がらせた

連日姉が
同じ話をすることが
どうしても耐えられなかったのだ

姉から預かった原稿を伏せて
今夜だけは
自分の話をしたいと皆に訴えた

誰が兄を知っているのか?
虚空をみつめながら
僕は皆に問いかけた

職場のことなどには
全く触れずに
押入れの奥にあった漫画のこと
好き勝手に
兄と僕のことばかりを話した

感情が込み上げてきて
あふれそうになると上を向いて
声を張るように努めた

これが挨拶?

不満を抱いた人もいただろう


感動した
聞けてよかったと
言ってくれた人もいた

ほとんど破れかぶれだった
勇気を振り絞って
よかったと思う

連日 話したのは結局は僕だった
人前であんなに話すなんて
大人になってからは初めてかもしれない


頭の中を回っていた言葉は
紙に書かずに
直接声に出すこともできたのだ

書くことと話すことは
そう変わらないのかもしれない


「あなたは隠していたのね」

姉が言ったことを ずっと考えている

僕のことを 誰が知っているのだろう



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眠れない夜の呪縛

2022-11-15 04:55:00 | 忘れものがかり
眠れない夜に
僕がすること


人を恨んだり

時計の針を眺めたり

ペンを取って詩を書いたり

見知らぬ人の日記に共感を寄せたり


そんなことは何一つしない
それは本当の望みじゃない


旅の計画を立てたり

ほうきに跨がって指輪を集めたり

魔法を覚えてドラゴンを倒したり

キーボードに触れてミスを重ねたり

永遠をたずねて気を病んだり

おやつを集めてリュックに詰めたり

音符を集めてメロディーにしたり

運命を責めてグラスを傾けたり

バイクに跨がって夜を切り裂いたり

コーヒーを交ぜて待ち人をたずねたり


みんなみんな違うんだ
眠れない夜の本分から
遠くかけ離れたものたち

今の僕にできないものが山ほどある
(これからもっと増えていく)

眠れない夜に
僕が許されることは
何もない


鴉の声に沿って歌ったり

猫の舞踏に飛び入りしたり

終わらないシネマに飛び込んだり

負けず嫌いの公園で球を蹴ったり

プレイリストを編んで共感を募ったり

指折り数えて十月を追い出したり

豆腐を割ってみそを絡めたり

メルヘンの最後に四つ葉を置いたり

許せない横顔に順位をつけたり

思い出を振り返って色を足したり

山にいるおじいさんを手伝ったり

山にいるおばあさんに寄り添ったり

煙草を積んで屋敷を作ったり

鍋を睨んで奉行になったり


そんなものはみんな
今できることじゃない

夢の夢
無力感が押し寄せてくる

眠れない夜に
出口はまだみえない

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眠れない夜のビート

2022-11-11 03:32:00 | 忘れものがかり
眠れない夜は

無数のビートに追われていく


秋が冬に近づく感じ

コーヒーが通り抜ける感じ

椅子が雨を吸って傾く感じ

即興が明日を追い越す感じ

ガチャが詰まってあり得ぬ感じ

空き地に広く迷える感じ

境界線に忍んだ感じ


生きてる
生きてる


眠れない夜に支配されて

だんだん研ぎ澄まされて行く感じ


誰かにそっと生かされている感じ

信号がいつまでも変わらない感じ

空に羊が流れる感じ

犬が並んで競う感じ

ポメラが秋に恋する感じ

プリンに猫がダイブする感じ

主審がコインを投げ出す感じ

スキにハートがしびれる感じ

路面に雨がキスする感じ

ハンカチに星が落ちる感じ

詩的に冬が集まる感じ

陽気に落ち葉が触れ合う感じ

波間に竜が輝く感じ

ドアノブに夜がこぼれる感じ


真理が行間をさまよう感じ

指がためらい震える感じ

コルクが飛んで転げる感じ

皆が前列を避けて行く感じ

冷たい視線に燃える感じ


ああ 今も生きてるんだな

決してあなたに伝わらない感じ


裏地に縫えば煌めく感じ

詩から宇宙がはじまる感じ

賢者が石を集める感じ

明かりが漏れていつかの感じ

渦巻く罪に怯える感じ

大河を月が横切る感じ

リフにごはんが止まらない感じ


風が木の葉をばらまく感じ

唇離れまたねの感じ

鏡にはねるはてなの感じ

募れば肘を抱える感じ

一行のみを愛せる感じ

涙に虹がかかる感じ


どこから訪れ
どこへ向かうのか

きっとあなたに伝わる感じ

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眠れない夜/伝わらない君

2022-11-04 02:52:00 | 忘れものがかり
眠れないというだけで

苦しい
やや苦しい
とても苦しい
ただ苦しい
やたら苦しい
ひたすら苦しい

苦しみは形を変えて
どうしてここから逃げ出せよう

「わからない」

わかってる
2秒で眠れる君には
謎めいたことだよ

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ドアマン

2021-06-07 11:24:00 | 忘れものがかり
それぞれのドアから
人々が出て行く

後ろ手に閉めたドアが
跳ね返って開く

誰も後を振り返りはしない
出た後の世界に興味などないのだ
自分のゴミを置いていく者もいる

開いたままのドアを1つ1つ
閉めていくのが僕たちの仕事だ

「立つ鳥跡を濁さず」

そんな言葉もあったと思うが

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からす

2021-06-01 23:41:00 | 忘れものがかり
からすはカーテンの向こうを
降りていった

どうかここには立ち寄らないで
少しも留まらないで
いてほしい

それなら何も気にしない
エールさえ
送ってあげてもいい

からすはカーテンの向こう

バイバイ

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笑い物

2021-05-06 02:26:00 | 忘れものがかり
誰もかわってくれないと
泣いた夜もあった

誰かが僕の名を持ち上げて
誰かがその後に続いた
無責任に始まる運動を
止められるものは誰もいない

僕は歌うようにはできてなかった
踊るのならばきっと誰よりも
一番うまくできたのに

誰もかわってくれないまま
押し出されてしまった

蛙たちのコーラスの輪の中で

僕は笑い物になったんだ

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詩のコート

2021-05-02 10:45:00 | 忘れものがかり
酒場はどこも廃れてしまったけれど

椅子が斜向かい
パーティションがある他は
普段通りのフードコートが

君に詩を書くことを許した

それがなければ指先は震え
魂も肉体も崩壊してしまう

今日も明日もなくてはならない

詩だけが 
君をこの世につなぎとめることができる

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誰だっけね

2021-04-29 02:20:00 | 忘れものがかり
どうしても思い出せない人の名を
誰かにきいたことはあるかい

どうしても思い出せない人の名を
考えて眠れない夜はあるかい

どうしても思い出せない人の名を
置いて歩き出したことはあるかい

どうしても思い出せない人の名を
考える内に現れた登場人物の名を
やっぱり思い出せないことはあるかい

どうしても思い出せない人の名を
どうでもいいと思い始めたのは君かい

「あれ誰だっけ?」

そうして人から忘れられたことはあるかい

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ラフ

2021-04-16 00:13:00 | 忘れものがかり
誰にも呼ばれたくない夜は
よれよれのTシャツを着て出かけよう
風が吹けば適当に膨らむ
しゃがめば伸びる
そいつは今の僕にお似合いだ
(真新しいのなんて着れるかよ)

改まって行くとこもない
旅の途中
いつだって次の駅を探している
(いつだって降りることができる)

どこから見ても
特別なものは何もない
どこにでもある断片をボタンにして

共感と矛盾の先にたどり着く
カフェの天井が高いことが
きっと小さな救いになる

何年振り?

まだいたんだな
(理由あって捨てずに取ってあった)

あの頃は何も気づかなかった
あるいは僕が変わったのかな

約束はしていない
コースも何も決まっていない

ラフな道だ






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誰もいない部屋

2021-04-11 10:42:00 | 忘れものがかり
この部屋には誰もいない
不思議なくらいに誰もいない

眠たくて虚しくてくやしくて
コーヒーなくて
何も手につかない

壁にかかったビニール傘60センチ
どこにも開かれることはない

道行く人
1人、2人、3人
歌う人、乗った人、酔っぱらい

景気付けのロックミュージック
あるんだけどさ

眠たくて虚しくて歯がゆくて
Pomeraなくて
何も手につかない

この世の信頼が揺らぎ始めた部屋に

今は僕もいないよ

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ムーン

2020-12-31 20:36:00 | 忘れものがかり
右のブロックにいる
右の椅子に座っている
左に鞄を置いて
ハードカバーを開いている

いつもいる
彼女だ

火曜の夜
日曜の夜
寒い夜
気まぐれな夜
雨の降る夜
忘れた頃の夜
クリスマスの夜

いつもいる

彼女は月だ

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猫たちのホット・スポット

2020-12-23 06:29:00 | 忘れものがかり
客が誰も来なくなって
店先は猫の陣地になった

ちょうどよい玄関マットの上に

現れて
居座って
消えて
戻ってくる

以下繰り返し

ストレッチ
寝そべって
くつろいで
待ち合わせ

夜の間ずっと猫たちの居場所だった

戯れて
じゃれ合って
たたき合って

誰の邪魔も入らない冷え込んだ夜

おしゃれして
くっついて
キスをした

メリークリスマス♪

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