エンリコ・バイ
原題不明。
イタリアの画家はロシアよりましだ。自分で表現をしている者が多い。ルネサンスの残光だろう。霊的にしろ現実的にしろ、盗作というものがどれだけ芸術家にとって重いものかはわかっているようだ。
この画家にはピカソの影響があるがシュルレアリスムともダダとも違う。美の破壊を通り越して、まさにエゴが壊れて狂気の沙汰に落ちたという感じである。
この画家の目には人間がこういう風に見えるのだ。みんな馬鹿に見える。蛙のように頭が悪く単純なものに見えるのだ。狂気の沙汰であまりにもきついことをしながら、個性は甘く集団の中に安住している。
こんなものは馬鹿だと思いたいのは、実に芸術家自身もそうであるからだ。
20世紀の人類は表向きは神に近づいたかのような愛を持ち上げながら、実はその精神はこういう世界を暴れていたのである。
みんなが馬鹿ならおれも馬鹿をやっていい。愛など薄い仮面に塗って、影で痛いことをして、女をだましてセックスばかりしていればいいのだ。所詮人間はそんなものなのだから。
阿呆はこういう世界を、地上に作っていたのである。