ジョージ・トゥーカー
マジック・リアリズムの画家である。言いたいことはよくわかる。
人間は文明の恵みを受け、豊かな暮らしをしていながら、心の風景はこんな感じだったのだ。誰も信じてはいない。だれも愛してはいない。
表向きは愛をかかげ、美しい神を信じているふりをし、同胞愛を演じながら、本当の心は冷えに冷えていた。麗しい愛などどこにもない。人間など信じられない。いやなことを考えているに決まっているからだ。
なぜそう思うのか。自分がそうだからだ。自分はすべて嘘だからだ。嘘は隠さねばならない。絶対に知られたくない。
そう思うとき、人間は他人との間に壁を作るのである。皆がそういう壁の中に住んでいれば、こういう風景ができるというものを、画家は描いたのであろう。
単純な発想だがおもしろい。人間は、すべてに嘘をついて、こういう世界に住むつもりだったのだ。
嘘で作った自分を生かそうとすれば、結局世界はこうなるのである。