うたびとはまことをこめてくるめかし玉と香をそへ花籠にもれ
ぬばたまの闇夜に星も見えぬなら身を歌人と名乗るは罪ぞ
うたびとは神のまなこをくもらするうたをかけらもよみてはならぬ
まよひなきまなこをもちてうたびとはまことのにはの花のみをつめ
うたびとは飛ぶ目凝る夢とはの露かひごの内の望月も見よ
生き方と歌のあはぬのうたびとはすべて嘘とぞおもへ人の世
歌詠みは見えぬ花こそ見むとせめ見ゆる花にも見えぬ時あり
うたびとはうた詠むことをほまれとし読まれて衒ふあほうとなるな
恋歌はのりとわざとをととのへて品よくうたへ荒れてはならぬ
やそ神のうれひの水にすむ魚をかひつつ常のならひをうたへ
凡庸はわれのつとめを怠りて気障にのがるる下手といふべき
うたよみは鶴ばねの鵜をすがみつつあはれを知りてまことを見抜け
歌詠みは露の照りをぞ心にてとりてうたへば玉となすらむ
歌詠みは御国のそらとわがうたをちぎりもなきというてはならぬ
うたびとは花につかへて露の間もまことのわれを去りてはならぬ
露とのみおもひし人の短夜にとはの玉みむうたびとならむ
うたびとはよろづの色をとりそろへとはののりにてうるはしくよめ
いしくれに落つるかげをぞ玉と見て神のさかひをこえてはならぬ
うたびとはくだらぬ歌をなうたひそ馬鹿の憂き世はそろそろしめよ
うたびとは高きこころをとはむとて花と技とをつむものであれ
わがうたをたかめむとせばいにしへのひとにもならへわざとこころを