世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

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いらだち

2017-09-24 04:19:21 | 黄昏美術館


木下富雄

原題不明。


日本の版画家である。

これは自分というものへのいらだちのイメージであろう。人間は幼児的な自己肯定感が崩壊するとき、時に自分というものをこういう風に感じる。

いるのが嫌らしい。嘔吐というほどではないが、混乱の中で自己存在は自分に鈍い拒絶反応を示すのである。

自分とはなんだ。何と奇妙なことをするのか。嫌な感じがする。こういう自分は好きではない。だが離れられない。

離れたいのに離れられないという巨大な真実に気付く前で、人間は自分と自分を見る自分の間に奇妙なずれを感じ、そこにかすかな振動のようないらだちを覚えるのである。

太平洋戦争で大きな失敗を犯した日本の挫折感と、連動しているようでおもしろい。

あまりにも愚かなことをしてしまった自分というものが、どんな暗闇を通っていくものか、そういうことを感じさせる作品である。





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