ジョン・コック
原題不明。
コンテンポラリー・リアリズムの画家である。こういう肖像画は最近多い。
目がぼんやりしているのに、表情が妙にきつい。勉強が進んでいるように見えないのに、衣装が妙に高級だ。
これは、多人数の霊がやっている人間の見本なのである。
本霊はほとんど何もやっておらず、肉体の主宮にいて見ているだけだ。あらゆる活動は他の霊が代行している。それで時に優れたこともできる。だが本霊は何もやってはいない。
こういうものは、あまりにも低級な動物的エゴを、優秀な人間的技を駆使してやってしまうのである。
美しい女が妬ましい、殺してしまいたい、という低級な暗黒の願望を、恐ろしく高級な技でやりぬいてしまうのだ。そしてそれを闇にぬりこめる技も実に高等なのである。
こういうものを多頭怪という。ひとりだが、ひとりではない。多数の霊魂で無理矢理この存在に高い力を与え、恐ろしい怪物を作っているのである。
何もできない馬鹿の霊に、なんでもできるものだと勘違いさせる。そしてあらゆる謀略をやらせ、何もかもを破壊してしまうのである。
「大勢」「レギオン」という名を付してもよい。大きな赤い竜が隠喩しているものは、こういうものなのである。