アリス・レゲット
アメリカの画家らしい。犬の目がそのままあっけらかんと描かれている。見たものをそのまま描いたのだろう。
最近、犬がこのような目をして人間を見ていることが多い。気づいている者もいるだろう。
昔の犬を描いた絵などと比べてみなさい。明らかに何かが違う。昔の絵に描かれた絵の中の犬は、無心に人間を慕っている。だが最近の犬は、このように、人間を疑惑の目で見ているのである。
彼らの目には、人間が何かおかしなものに見えているのだ。
自分たちが昔から知っている人間ではないと、彼らの目は言っているのである。
現代の人間は、本当の自分から逃げるために、自分を改造しすぎているのだ。まるでロボットかサイボーグのように、いろいろなものを付け加えて、全く本来の人間の姿からはかけ離れたものになっているのである。
故に、人間の一番近くいる彼らが、疑惑の目で人間を見るようになったのだ。
もちろん彼らは人間を裏切りはしない。馬鹿なことをしはしない。犬として、人間のためにできることはしてくれるだろう。だが、人間がいつまでも今のまま、本当の自分から逃げ続けていれば、彼らは何かを決断するかもしれない。
自然の神は、不思議な手を持っている。
犬たちが、もうだめだと思ったとき、彼らを人間から離していく運命を、不思議な手で作るのだ。
彼らは、もしかしたらもう、人間から離れていくかもしれない。