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キオは死んだのだろうか。永遠の眠りというものが、わたしにとっての、死というものだろうか。神は、不滅の命を持ってしまったわたしのために、このような形の死を作ってくれたのだろうか。
わからない。ただ時々、わたしは夢を見た。夢の中で、なつかしい父や、愛してくれた家政婦に会えた。美しいリープの風景の中で、かわいいアトランティスの民にも会った。幸せな思い出しか、よみがえらなかった。幸せとはなんだろう。なぜあれほど、わたしは愛することを、幸せに感じただろう。それは、愛する人々のすべてを失うと言う、途方もない苦しみを経験したからだ。
苦しみを知らなければ、幸せもわからない。そうだ。生きることは苦しいのではない。生きることが幸せだということを知るために、時々人は、苦しむだけなのだ。
ならば生きることと、苦しむことを、切り離すことなどできはしない。それを生きることから奪うことは、生きることの意味そのものを消すことに等しい。
リープの民は、それを間違えたのだ。ならば、アトランティスの民はどうか。彼らは何を間違えたのか。
夢の中で、わたしはゆっくりと考えていた。鳥が卵を温めるように、鈍い思考を抱いて、何かが生まれてくるのを待っていた。ああ、そうだ。
アトランティスの民は、まだ幸せなど知らないのだ。愛することが幸せだということがわかるほどまでに、苦しんだことがないのだ。わたしは滅亡から彼らを救うことができなかった。だが、そのほうが、よかったのだろう。激しい苦しみを味わわねば、わからないことがある。スノハの神は、それをアトランティスの民に教えたのだ。
滅亡したリープは戻らない。だが、この地球は、まだあるのだ。人間もまだたくさんいる。ならばわたしにできることがあるのではないか。不滅の命と力を、投げ込めるほどの、高い愛が、ここにありはしないか。
わたしは、眠りの底から、目覚めたくなった。もう一度、あのかわいい人間たちに会いたい。そして、もう一度、愛したい。
(つづく)