ハンス・トーマ
一と三は王数という。一は王を表わし、三は民衆を表わす。
この図もよく描かれるテーマである。イエスだけが山の上で目覚めて祈っている。三人の弟子たちは下で眠りこけている。
要するに、国王には真実がわかっているが、人民はいまだに眠っている。正しいことがわかっているようで何もわかっていないのだ。
愚民をなんとかせねばならない王の悲しみという図なのである。
何もわからない愚民はコンプレックスと嫉妬に動かされるまま、衆愚と化して大勢でひとりの王を殺す。そしてその結果国は瓦解し、愚民もまた滅ぶのである。
ユダヤの国は典型的なその例なのだ。国王の徳を持っていたイエスを殺したユダヤ民族はその後、完全に滅んでいるのである。
これはそういう国の悲劇を表現する絵である。