放るもの

「うわっ、ロン毛！」
数週間前まで、久しぶりに会う友人達の第一声はそれだった。
別に伸ばしていた訳ではない。
なんだか多忙だったのと、いつもお願いしていた美容師さんが店を移ったのと、
単なる不精。
最近は「誰だかわかんなかったよ。」か、
「なんで切ったの？」が第一声である。（切ったのではない、剃ったのだ）
そんな時、
「失恋しました。」と答えるべきか、
「反省しなければいけない事をしでかしちゃいまして。」と答えるべきか、
0.3秒間、猛烈に悩む。
次の0.2秒間、どちらも笑いが取れないと判断する。
更に0.5秒の沈黙。ここまで合計1.0秒。

そして、どうでもいいような事が涼しい頭に駆け巡る。
気分を変えたいから髪の毛を切る心理はわかるような気もするけど
頭を丸めると罪が許されそうな雰囲気を持つ日本文化って奇妙だな…。

答えを求めていた友人はポケーっとしたオレの顔をみて、答えを諦めてくれる。
「持つべきは友」とはこう言う時に使うのか…？！

初対面の時の印象を人間はひきずるものである。
同じ店にスーツで行った時と、Gパン・Tシャツで行った時では
店員さんの接客態度は変わってくる。（同じ店員さんでもね）
そんな遊びを昔よくやった。（良い子はあまり真似しないでね。）
ブランド店等に行くとそれは如実に現れる。
（もちろん買う気などありましぇ〜ん。社会見学です）
女性同伴とか男性同士とか、独りで行くのでも変わってくるから面白い。
女性の場合、化粧をしている時とスッピンの時で対応が違うと言う意見と
これは同じなのではないかと思う。

で、話をもとに戻そう。
答えを諦めていた友人にオレはこう答える事にした。
「髪の毛よりヒゲの方が早く伸びるのはなぜだ？毎日剃るから？」

「そりゃ、あんた。ホルモンの関係だよ」と答えてくれた人はまだいない…。

マカリトーレ

罷（ま）かり間違って、剃毛してしもたぞよ。
およよ、およよ。
丁髷（ちょんまげ）部分と横っちょの部分だけがなぜだか白い。
なにゆえぞ？
おお、お天道様の仕業か。
見事に頭皮が日焼けしてしもたでこざる。
いとをかし…くない。
ちーっとも可笑しくない。
じぇんじぇんオカシクない。
いとかなしこそあれ…。

写真は永野敏監督・短編映画「画龍天晴」の現場にて。（川野弘毅出演）

撮影後、スキンヘッドにした。
最近、朝起きてから顔を洗い、鏡を覗き込む度にドキッとする。
ああ、オレの顔か…。
と気がつくまで、ひと昔前の衛星中継放送なみに時間差が脳内で生じる。
そしてやっと目が覚める。
知らない人だったら、絶対友達になりたくない人が鏡に映っているのだ。

困った事に何を着ても似合わない…。
ジャージとか、古着とか、着れなくなってしまった。
だって、だって、その姿はまるで、まるで…。

SAMURAI　ニッポン　2006
「マゲ型日焼けのスキンヘッド」ブームが今夏、罷（ま）かり通るはずだ！
なんて事はない。これは断言できる。

あっぱれ、あっぱれ！
ああ、晴れたじょ〜！

脳味噌トルク

頼むから30分眠らせてくれ!
誰に断わる訳でもなく、オレは目覚ましを30分後にセットし、
Ｇパンのままベッドに横になった。
睡眠不足で脳味噌トルクが急激に減少。
まるで「デイジ〜♪…デイジ〜♪……」と歌う
映画「2001年宇宙への旅」に出て来る宇宙船「HAL9000」の気分だ。
もう何も考えられん！
気を抜くと本格的に寝ちまいそうなので、布団はかぶらないことにする。

…3分後、携帯が鳴る。

用件を済まし、携帯を切る。
だぁ！もう10分経ってしまったではないかっ！
いや〜ん、もう！
おっと、あと17分は眠れるぞ。

…２分後、また携帯が鳴る。別の人からだ。
用件を済まし、携帯を切る。
あと何分寝れるか、もう計算するのも嫌だ。
単純な引き算すらしたくない。
寝るって言ったら、寝るんだ！意地でも寝てやる。

…数秒後、また携帯が鳴る。更に別の人からだ。
どうやら、誰もオレを寝かせてはくれないらしい。

アッタマ来タ！
起きてやる、起きてやる。起きればいいんだろ！
でもな、もう決めた。携帯が鳴っても出ないからな。
そうだ、こういう時は熱いシャワーを浴びて頭をスッキリさせよう。
風呂場に退避！
あ〜、やっと独りになれた…。

タオルを腰に巻いて部屋に戻ると、また携帯が鳴っている。
頼むから、パンツぐらい履かせてくれよ。
と懇願したら、携帯音が止んだ。
シメシメ…ふふんのふん♪とパンツを履く。
着替えを済まし、冷静になったところで黙り始めた携帯を手に取る。
あら？
恐ろしいほどの不在着信、メールの件数が表示されているではないか。
はい、わかりました。
ひとつひとつ、片付けて行きましょう。
メールの返信をうつ。
すると、その間にまたメールが届く。
Gyaaa〜ぁぁぁ！

現場前はいつもそんな感じだ。

今、オレの携帯はウンともスンとも言わない。
現場後もいつもそんな感じだ。

それはそれで、Gyaaa〜ぁぁっ！
だったりするから、勝手なもんだね。