発達小児科医の館

障害児医療理解を求めるために!!小児神経学会社会活動委員・/富山大学医学部診療指導医・臨床教授)

明確な指示が自閉症の「社会脳」を「正常化」・・・・

2007年07月25日 | Weblog

明確な指示が自閉症の「社会脳」を「正常化」させるようであり、自閉症リスクを持つ一部の幼児は14カ月齢で診断ができる可能性がある!!



【7月16日】社会的手がかりに従うようにさせる明確な指示が、自閉症児の「社会脳(social brain)」における活動を正常化させるようであり、自閉症リスクを持つ一部の幼児は14カ月齢で診断ができる可能性があることが、それぞれ『Archives of General Psychiatry』の6月号と7月号に掲載された2件の研究で示された。

表情と声に表れる影響を読み取る

1件目の研究は現在マウント・サイナイ医科大学(ニューヨーク州)のA. Ting Wang, PhDらによるもので、表情と声のトーンに注意を払うようにさせる明示的な指示を自閉症圏障害(ASD)の患児(自閉症とアスペルガー症候群を含む)に与えたところ、内側前頭前野皮質の活動が亢進した。この脳領域は他者の意図を理解する際に重要な部位である。

Wang博士がMedscapeに寄せたコメントによると、自閉症児の「社会脳」の重要領域の活動が、重要な社会的手がかりに注意を払うようにという指示を与えるだけで「正常化」できることが、今回の研究で初めて示された。「この研究によって、この領域に悪いところなどそもそもないことが明らかになったことが重要である。自閉症患者はこの領域を活性化できないのではない。その場の状況での顕著な手がかりに注意を払うような方向づけが必要なだけである。ここから、今後の介入法の方針を想定することができる」と同博士は説明した。

意するように自閉症児に指導することで、そうした手がかりに基づいて他者の意図をうまく解釈したり、社会的交流をうまく切り抜けられるように脳を訓練できる可能性がある」ことを示しているとWang博士はまとめた。博士らのグループは今後、社会的知覚の技術を自閉症児に教えるのに社会認知行動学的手法が有効かどうかを調べる予定である。・・・・・!!

       14-24カ月齢での自閉症の診断

ケネディ・クリーガー研究所(メリーランド州ボルチモア)のRebecca J. Landa, PhDらのプロスペクティブ(前向き)長期研究によれば、30カ月齢で自閉症の診断を受けた30例の自閉症リスクが高い幼児(自閉症児の兄弟)のうち、16例は14カ月齢の時点(自閉症早期診断)で社会・コミュニケーション・遊びの行動に異常な点が見られ、14例が24カ月齢(後期診断)でそうした異常が見られた。

「自閉症は、おそらく18カ月齢までに(早期)スクリーニングする必要がある。そのスクリーニングに合格した小児でも、自閉症は幼児期を過ぎた時期に現われる場合があるので、再スクリーニングの必要がある」と、Landa博士はMedscapeに対して語った。

博士によると、自閉症が診断される平均年齢は3歳から6歳の間である。博士らのグループは、ASDの診断を早期・後期に受けた患児の14カ月齢から24カ月齢までの社会・コミュニケーションの発達パターンを調べようとした。

Landa博士らは、自閉症のリスクが高い乳幼児107例とリスクが低い乳幼児18例の発達を、14カ月齢から30カ月齢ないし36カ月齢までの診断転帰に至る時点まで評価した。診断転帰は自閉症(30例)、広義の自閉症傾向(broader autism phenotype)(19例)、非広義の自閉症傾向(non-broader autism phenotype)(58例)であった。

「これまでの自閉症の診断としては(14カ月齢が)もっとも早いが、この月齢ですべての自閉症児が診断可能なわけではない」とLanda博士は注意を述べ、さらに小児によっては症状が徐々に現われ、それも24カ月齢ごろに現われ始める場合もあると言い添えた。
 また、14カ月齢の時点で能力が完全に欠落するわけではないという点も重要である。「患児はコミュニケーション能力が欠落していたり、他人に笑いかけたりすることがないと思い込んでいては、多くの患児を見逃すことになる。疾患像はむしろ多面的であり、社会的目的のために他者を見たり、笑いかけたり、コミュニケーションを始めるといった社会的交流の行動の現われ方はばらつきが大きく、まれである」。

ASDを持つ幼児の社会・コミュニケーション発達を目標にした早期介入が必要であることがこの研究によって、明らかになったと博士らは記しており!!
 より大規模サンプルを対象にした研究をさらに行って今回の予備的な知見を追試し、2歳未満の幼児における正確な早期診断を可能にする信頼性のある診断手法を開発・検証することが必要であると述べている。





Arch Gen Psychiatry. 2007;64:698-708 and 853-864.




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