発達小児科医の館

障害児医療理解を求めるために!!小児神経学会社会活動委員・/富山大学医学部診療指導医・臨床教授)

知的障害の多くは孤発例が多く、遺伝ではない

2012年10月03日 | Weblog

世界には1~3%の知的障害の子どもがおり、その半数は知的障害を持っていない両親から生まれてきます。これまで知的障害の主要原因は遺伝であると考えられてきましたが、新たな研究によって知的障害のない両親を持つ知的障害児は、両親から劣性の遺伝子を受け継いだのではなく、子どもの遺伝子において新たに発生したランダムな突然変異によるケースが多いということがわかりました。

Range of genetic mutations associated with severe non-syndromic sporadic intellectual disability: an exome sequencing study : The Lancet

Many Low IQs Are Just Bad Luck | Intellectual Disability Cause | LiveScience

この研究はスイスにあるチューリッヒ大学のAnita Rauchさんを中心に行われたもので、知的障害の根本的な原因を理解する第一歩であるとのこと。知的障害はIQ70以下を記録し、健康上も大きな問題となるのですが、原因を理解することは新たな治療法の開発に役立つはずです。

人は親から全てを遺伝するのではなく、DNAの一部が削除されたり複製されたりといったような、両親に見られないDNAの偶発的な変化や、新しく発生した突然変異の遺伝子を持って生まれます。多くの場合、このような変化は遺伝子の重要な部分では起こらないため人にもあまり影響を与えないのですが、場合によっては認識の発達に影響を与え、遺伝子の機能を傷つけるといったような深刻な結果を引き起こすこともあります。今回の研究で、散発性の知能発達の多くは遺伝ではなく不運な偶然によるものが大半であることがわかったのです。


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