ところで、「真釦(しんぼたん)」とは?
少しこの画家のことをご紹介します。
真釦さんは、もともと彫刻家で、
「新保 裕(しんぼひろし)」の名で作品を発表してこられました。
私は新保さんの木の彫刻のファンの一人でした。
2010年に観たこのすばらしい作品展が、
彫刻作品の最後となりました。
しばらくして彼は、倒れてきた木材で利き腕を負傷し、
彫るための道具をにぎることができなくなりました。
しかしながら、新保さんの不屈の精神、病院のベッドの上で、
一本の「筆」が導く新しい道をみつけました。
ベッドの上で次々浮かぶ妄想、
腕がとどく範囲に たまたまあった道具 と 新しい手法、
唯一無二の墨画が、ここから生まれたのです。
一時はたぶん絶望の淵、そして奇跡の回復と復活。
「新保さん」もじって「真釦」(しんぼたん)として
あらたな一歩を踏み出します。
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「風君(ふうくん)」「雷君(らいくん)」の図
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真釦さんの絵は どこか懐かしいような感覚につつまれます。
伊藤若冲や、ラファエロや、バルテュス、はたまた赤塚不二夫 . . .
思いがけないところから出てくる記憶の断片が
時空を越えてコラージュされて、
異界と現実も行ったり来たりしながら
2次元から4次元まで、奇想の旅に連れて行ってくれます。
繰り返し登場するモティーフ、
その取り合わせの妙。
キワモノも不思議と気品ただよい、静謐な空気につつまれています。
壁のひびまでも、絵の一部に引きこまれ、美しく。
普段の生活にすっと入り込み、
ユーモアの味付けをしてくれる絵。
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作品を設置していく 真釦さん。
古い町家のあらゆるところにピタッとはまっていく絵に
終始 笑いがおこり楽しんでいる様子。
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渦(うず)を巻き起こす仏さま「渦子さん」
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絵かきとしての初個展が、つい昨秋のこと。
それからすぐに、スウェーデンのアートフェアに出展が決まり、
年明け早々、絵が海を渡り、
欧米の美術愛好家たちに大好評だったそうです。
3月にはそのままイギリスのギャラリーへ。
かの国のアート雑誌に取り上げられるなど、
無名の画家が、人々の純粋な審美眼に新鮮な驚きを与えます。
そして、この5月、日本のここで、
この場所のために描き下ろされた絵が、
ますます神秘的なオーラを放ちながら、
私たちの心をゆるめたり刺激したりしてくれます。
「フライイング ベイビー」
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これらの墨画を、昔の人たちがそうしていたように、
ろうそくの光で観たらどんなに面白いだろう、と思い、
他の照明を消して、夜の鑑賞会を考えました。
5月28日(水)と31日(土)の
日没7時ころから 9時ころまで
肝だめしみたいになるかもしれませんが、
きっと新鮮な体験ができます。
興味ある方は、ぜひお越しください。
私はこのバタバタする赤ちゃんが、
ほんとうに動いてみえるんじゃないかと
それを楽しみにしてます。
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