長引いた暑さのせいか、
遅れていた庭のコスモスが ようやく咲き始めた。
ところが これからという時に台風が来て、
バッサリなぎ倒されてしまった。
台風の季節に咲く定めの花、
倒れた茎からすかさず根を出し、
途中から90度曲がって、
また太陽を目指して伸びていく。
花を支える茎たちの攻防すさまじく、
おかげで庭は混線状態だが、
主役の花たちは、素知らぬ顔で
優雅に揺れている。
このように私の庭は、秋になると
コスモスの天国になるという話を
去年の今頃、ここでも書いたのだが、
先日発売された雑誌「花時間」に
詳しく紹介していただいた。
庭のコスモスをいろんな器に生けて遊んでいるところや
アトリエの様子など、8ページにもわたって
心のこもった記事と
たくさんの写真が掲載されている。
花時間専属のカメラマンさんが
花のいい表情をとらえてくださっているので、
本屋さんで見かけたら、ぜひ手にとってみて下さい。
「花時間」は創刊から20周年だそうだ。
今回がその記念号ということで、
創刊号からの表紙がすべて掲載されている。
何を隠そう私は会社務めをしていた20年前に、
その創刊号を買い求め、それがきっかけで
花の仕事に転向することになったので、
この節目の特別号に、
私の一番思い入れのある花で特集を組んで頂いたのは
とても光栄なことであり、不思議な導きを感じている。
花屋をはじめて15年。
毎年くりかえしコスモスは咲くけれど、
いつも初心にかえって
一輪一輪と向き合っていきたいと思っている。
秋色の草花につつまれて、
リュートの演奏会を催します。
日本に数えるほどしかいないと言われる演奏家の一人、
高本一郎さんの美しく繊細な音色をお楽しみ下さい。
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高本一郎 リュート演奏会
とき 2011年10月16日(日) 夜7時~(6時半開場)
場所 花のアトリエ こすもす
料金 2,500円(予約制) ?076-222-8720
リュートは中世ヨーロッパで広く愛され、
「天使の楽器」とも呼ばれるその音色は、美しく繊細で
やわらかい光が紡がれるようです。
あのエリザベス一世も眠れない夜は、
おかかえのリュート奏者の演奏を聴きながら
安らかな眠りについたのだとか。
リュートの先祖は、古代ペルシャ時代、
中央アジアで弾かれていた「バルバット」と呼ばれる楽器で、
東へ伝わり、日本の「琵琶」など、
西へ伝わり、中近東や地中海沿岸の「ウード」、
さらに「ウード」がヨーロッパへ伝わって
「リュート」が生まれたと言われています。
宮廷での祝宴から、農民の祝祭まで、
広く親しまれた楽器、リュート。
その表現力は、微妙な感情を
言葉の代わりに語ってくれるようです。
そんな天使の音楽を伝承する高本一郎さん、
本場フランスのルーブル美術館などでのソロ演奏や、
オーケストラアンサンブル金沢との共演など
国内外で活躍されています。
秋の花たちとどんな音楽を交わすのか、
この夜かぎりの、貴重な演奏会にどうぞお越し下さい。
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旭川から富良野への道程は、
なだらかな丘陵にそって、
広い農地や牧場が、パッチワーク状に続いていく。
田には稲が実り、
芳醇で懐かしい香りにつつまれていた。
大雪山の伏流水のおかげで
この辺りは、おいしいお米が穫れるのだそうだ。
家々に美しい花があふれ、
迫りくる冬までに命を燃やしつくそうと、
艶やかに光を放っていた。
またある日は、大雪山系に沿うように、北へ向かった。
工藤さんもお気に入りの場所という、
広いお庭のあるカフェ「だいせつ倶楽部」へ。
おいしいコーヒーをいただいた後に
ご夫婦でコツコツ作ってきたという広い広い庭園を散策。
運よく訪問者が私だけとなり、
奥様のみどりさんがお庭を案内してくださった。
それはもうたくさんの種類の植物が育ち、
手入れはされているのに、ナチュラルで、
心なごむお庭だった。
「特別好きな花の種は、庭中にばらまくんですよ。
気に入った場所から芽を出して咲いてくれる。」
といって、歩きながら庭中に蒔いていた。
私も蒔きながら散策した。
おまけに金沢で蒔く分もたくさん頂いてきた。
ご主人は、ファーム担当で、
カフェで出す料理の材料となる、
有機無農薬の野菜や果物を栽培する。
畑で、トマトをもぎ取り、食べさせてくださった。
単独で植えてあるのと、
バジルと一緒に植えてあるのとでは
同じ品種でも、味が全く違って驚いた。
どちらも甘くておいしいのだけど、
バジルと一緒のトマトの方が断然深い味だった。
「料理にして相性のいいものは、畑でもそうなんだね。」
ご主人の言葉が心に刻まれた。
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さて、最後に、小樽の風を。
色づきかけたナナカマド。
葉も実も、真っ赤になる頃を見てみたい。
さぞかし青空に映えるのだろうな。
すずばらの実は、ひと足先に秋色に。
運河は、美しい光を浴びていた。
紺碧の空と赤いレンガの倉庫群。
秋のはじまりの風が、静かに海から吹いていた。
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