みちのくレースのおたのしみ

岩手競馬にまつわるあれこれ。とか。

高崎競馬・ライブドア どうなる? (後編)

2004年10月30日 | 岩手競馬
 地方競馬を念頭に置いて、「競馬の実施に関し相互に連携を図り、その事業の収支の改善を図るための計画を作成し」それが収支の改善に相当程度貢献するならば「認定競馬連携計画に基づいて行う事業につきその経費を補助する業務を行うものとする」という、改正競馬法二十三条関連部分。岩手-九州の既存の連携を想像しながら「ブロック化」改正といわれているところですが、これは単純に主催者同士が連絡しあい、日程調整し、相互発売をする、程度の事が目標ではありません。

 現場のスタッフ、馬券発売用のコンピュータシステムなどの競馬を支えるシステムの共同化。場合によっては調教師や騎手、馬までも共同化して、固定的なコストを可能な限り引き下げる。そこに最終的な狙いがあるのです。

 M&Kを例にとるなら、岩手・佐賀・荒尾の主催者は形だけ残り、実際の運営は、その下にある民間組織が3場分とも委託をうける。馬券発売システムは3場共同、日程・レース体系は可能な限り一定のルールに基づいて決められるようになる、とイメージしてみて下さい。
 もしかしたら、全地方競馬の現場を、一つの組織がすべてまかなってしまう事もあり得るでしょう。JRAと地方が馬券発売の運営レベルで一体化することだって・・・。

 「地方競馬場がそれぞれ個別に運営システムを持ち、スタッフを抱え、日程を競合させながら競馬を行っているのは無駄だ」。改正競馬法をめぐる論議の中で何度か出てきた言われ方です。
 その「無駄」の解消のために想定されているのが、運営システムの共同化であり統合です。競馬場同士の連携は、そのために行われなくてはならないものなのです。

 となると、ちょっと戻って「私人への委託」。これは、単純にピンポイントな場外馬券売り場を運営する程度では十分な意味を持たない。実際の競馬開催に相当深い関わりを持ち、複数の主催者にまたがって運営されるものでなければ、本来追求すべきメリットを追いつめ切れないものなのです。

 ここまで来て、もう一度(前編)に入れたヤフーのリンク先を読んでみて下さい。ライブドアの狙いも、ここまでに述べたような点にあるのではないでしょうか(県・市とライブドアの共同出資による新組織で、という点は、出資に対する配当を用意する事で“地方財政のための地方競馬”という制約とか意識とかをクリアするのだと思います)。
 できるかどうかは別、ではあるけれど、高崎競馬は規模は小さくともシステムは一人前だし、首都圏近郊の立地もまずまず。“居抜き”で競馬に関する一式を吸収したうえ、これを実績として全国展開を狙う手掛かりとしては、決して悪いものではない、という判断。(時々新聞などで報道される「赤字覚悟で実績作りのための1円入札」というのと似ている、といったら怒られるかな・・・) 

 問題になるのは高崎競馬そのものが置かれている状況でしょう。累積赤字は51億円もあります。平成14年度のデータですが、年度売り上げ約51億2700万円、1日平均売り上げ約6836万円という成績は、年度売り上げでは益田・足利に次いで下から3番目で高知以下。1日平均でも益田に次ぐ下から2位、これは高知どころか足利すら下回っていました。
 益田・足利は既に廃止、高知もギリギリ。昨年度で休止となった上山や、今年度で廃止とされる宇都宮といった、高崎よりもずっと成績のよい所ですら存続できないのですから、高崎は完全にデッドラインの下に落ちてしまっているわけです。
 「ネットを通じた馬券発売やレース中継」程度でいきなり売り上げが増えるとは思えません。広告収入にしても大きな期待はできないはず。それくらいで何とかなるなら、地方競馬はこんな事になっていません(競馬ファンの皆さんがライブドアの動きを歓迎しきれないのは、「高崎を存続させようというのはいいけれど、実際それで何とかできるの?」という疑問が払拭できないからだと思いますが、いかがでしょう?)。
 ライブドアが乗り出した、崖っぷちから逆転した、という宣伝効果でいくらか上向くかもしれませんが、ただネットで馬券を売るくらいではファンは手を出せない。馬券を買ってもらう前に「高崎競馬って何?」という所から説明が必要でしょうし、これは相当大変なことです。

 私はやっぱり、ライブドアの狙いは高崎を起点に他に手を広げて、統一的な競馬運営組織を作る、という所にあると思います。
 高崎“だけ”ではメリットはないはずで、ピンポイントで留まらず、面でつなげてある程度のスケールメリットを追求して、はじめて利益を上げられる可能性が出てくるもの。高崎の経営はひとまず持久戦に持ち込むとして、できうる限り早く他の連携先を見つけなくてはならない。
 自分の陣地としての高崎の確保は是非ものとしても、他の連携先がすぐに見つからないとなれば手を出す事自体が危険になる。では止めよう、という判断もあるのではないか。

 高崎の報が流れてから、他の地方競馬主催者からもライブドアへの問い合わせや相談が持ちかけられていると聞きます。ライブドアの行動は決して打ち出の小槌にはなり得ないと思いますが、これが地方競馬に与えるインパクトは大きいし、これからも大きくなっていくはず。試金石として今後に注目したいところです。
 ただし、その先にあるのは今までの“高崎競馬”なり“岩手競馬”ではない、他の形になった世界かもしれませんが・・・。

・・・
 
 結局、改正競馬法は「競馬を救う」ものではないのです。運営改善計画を立てられれば1号交付金の納入を猶予します、とか連携計画をつくれば補助しますとか、『計画なきところ事業無し』の原則に従ってはいますが、つまるところ“少なくとも数年間は競馬を続けて、仲間を見つけて、立て直す意志を見せないのなら、相手もしてあげませんよ”ということを言っている訳です。

 先のテシオ35号で、道新スポーツの山田さんが「改正競馬法の内容が分かったとたん、廃止を表明する競馬場が続出したのが競馬法の意味を端的に表している」と、シニカルかつ的確な表現をされていましたが、改正競馬法は、地方競馬場をふるい落とすためにあると、私は思っています。
 おまけに、その生き残る方向を選ぶための材料が相当に不足したまま進み出していますから、将来を絶望して“ふるい落とされる”事を選ぶ競馬場が出てくるのも当然なんです。
 

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