襖の張替

襖の張替と言っても普通で考える
きちんとした張り方をした訳では全くない
父が買ったか母が買ったのかも分からない
押入で眠っていたクラフト紙と和紙をただ
艶消しゴールドのマスキングテープで
貼っただけな簡単なもの
父を入院させてからリビングの壁を塗ったりなど
そこかしこ補修はしてきたものの和室までは届かず
襖の破れを隠すべく母が色和紙の花を貼ったままの状況
それももう半分剥がれ落ちている

母が亡くなった時はこの和室で父の介護
母を連れ帰れずやもなく安置してもらった
できれば自分で建てた家に父を帰らせてあげたい
とても素敵に仕上げたいがそれには費用が乏しい
そんな中東急ハンズの印刷も薄れた値札のクラフト紙や
結構上質な和紙　掛軸にしたかったのか鶴二羽が
押入の片隅から現れた
これを使ってあげられればと糊も探すが
出て来たのはマスキングテープ
これは私がお正月に金銀購入使用した余り

いくらマスキングテープと言えど五枚の襖に
労力が半端なかったが何とか見栄え良く
ボロ隠しができ心地好い達成感に浸る
外へ出れば日も暮れ闇から落ちそうな大きな月が
ずっと応援してくれていたようで嬉しい
以前雑居ビルのレストランで飲んだ際酔った友人が
大分くたびれた店内を見てお前んちみたいだな
よくあの家にひとりで居られるななど言ったのをふと思い出す
まぁそれなりに楽しく乗り越えられるよと
月に向かって笑って見せた
母が生前言っていたように良いことは巡ってくるに違いない