ひできの八ヶ岳ブログ

未来に残したいリジェネラティブな社会づくりを考える

いま起っていることを、いま評価してはいけない

2009年12月24日 23時23分50秒 | 八ヶ岳の日々
できればやらなくて済めば良いと思っていた、
大学再生のプロジェクトが、
正式にスタートすることになりました。

その大学がおかれている状況は、
まるで天竜川の急流くだりを、
逆に遡上するのと同じような感じです。
その解決は、決して一筋縄ではいきませんし、
厳しい状況の中、内部的な、
人と人との激しいぶつかり合いも、
覚悟しなくてはなりません。

本当は、明るい未来に向かっての仕事をしたいのですが、
私には意外と、
こういった仕事が時々まわってきます。

そういえば、その極たる経験をしたのが、
バブルが弾けた後の頃。
ある海外の大手メーカーの日本販社で、
営業畑から新たに社長になった人と、
事務サイドの人たちとが対立し、
ある日を境に、
事務サイドの全員が突如出社を拒否し、
退職してしまうといった事態が起きました。
折も折、バブルの後で業績も急速に悪化していたことから、
その会社は、完全に機能不全に陥り、
倒産寸前の、風前の灯火となってしまいました。
そこで、最悪の事態を危惧した本国の親会社が、
私がかつていた会社に、
緊急要員の派遣の要請をしてきたのです。

運悪く?
その殺伐とした会社に行くことになったのが、
私を含めた20代の若造3人でした。
ほとんど会社の態をなしていない職場に、
当時の私は、毎朝、暗澹たる気分で、
何でこんな仕事を・・・、
と思いながら向かっていったのを覚えています。
一緒に行ったメンバーも、
同じ想いだったろうと想います。
残業、残業、土日出勤の合間をぬって、
たまに気晴らしに一緒に飲みに行くのが、
私たちの唯一の楽しみでした。

その時の3人の中で、
リーダーを務めてくれたのは、
後輩の面倒見のよい親分肌の尾立さんでした。
その飲み会のセットアップは、
いつも尾立さんがしてくれました。

その尾立さん。その仕事のすぐ後に会社を辞め、
独立して自分の会社を営んだ後、
鳩山首相の政策補佐官を経て、
5年ほど前に参議院議員となりました。
その時は、あの尾立さんがと驚きましたが、
先日の事業仕分けでは、その中心のひとりとして、
枝野さんや蓮さんとともに活躍され、
連日テレビにも映っていました。
今後、きっと大臣への道を歩んでいくことでしょう。

もう一人の力強いスタッフだったのが小林さん。
日本の法曹界の重鎮の家系の出身で、
その後まもなく、
公認会計士と弁護士の両方の資格を得て、
若くして虎ノ門に自分の事務所を開いて独立し、
活躍されています。

その頃、その悲惨な仕事先から、
自分の会社の事務所に帰ったときに、
私のななめ後ろに座っていたのが、
今をときめく勝間和代ちゃん。

お互いに、常に現状を超えていこうとする、
アグレッシブなところが似ていて、
わりと気の合う仲間でした。
でもまさか今のようにブレイクするなんて、
当時は思っても見ませんでした。

こう思い返してみると、
その時の仕事は暗澹たるものでしたが、
そこには、決してそればかりではない、
これからの日本を背負う優秀な人たちとの、
貴重な出会いが秘められていました。
もちろん、当時はそれを知る由もありませんが、
結果がそう物語っているのです。

「今、起っていることを、
 今、評価してはいけない。」

私にとっては、よい教訓になりました。
人生における出来事は、
10年、20年、
あるいはもっと先になって初めて、
その時の出来事の本当の価値が、
解ってくるものなのでしょう。

では今回の仕事には、
一体、何が隠されているのでしょうか。
それも、将来のお楽しみということなのでしょう。

Resourcing ourselves for creative change

2009年12月22日 23時19分21秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会
これは、
シューマッハカレッジから来た、
ニュースレターのタイトル。

エコ関連の人々には大きな失望を与えた、
コペンハーゲン会議に対して、
政治に頼ることなく、
私たち一人一人がクリエイティブな変化の、
主役になっていくことが大事だという、
強いメッセージを感じます。

来年のシューマッハカレッジの
ショートコースの案内を見ていると、
来年は、ここ数年間とはちょっと違った、
充実した講座編成のようです。

まず、私のライフワークでもある、
協調、新しい組織論に関連する講座が2つもあります。
そのうちのひとつは、
大御所Margaret Wheatleyが務めます。

また、2年に一度程度しか教えなかった、
フリチョフ・カプラが、
何と、半年に2度も講座を受け持つのも、
これは前代未聞の出来事です。
そのうちのひとつはサティシュ・クマールも参加する、
Ecoliteracy: First principles for radical change
まさにシューマッハカレッジの本道ともいえる講座です。

昨今、世界的なテーマのひとつとなってきた、
GNH(Gross National Hapiness)、
の講座もあります。

私が個人的に一番興味があるのはこれ。
Gaia and the Evolution of Consciousness
「ガイア理論」のステファン・ハーディングと、
「場の理論」のルパード・シェルドレイクとの、
気鋭の二人が講師を務めます。
シェルドレイクの理論は、
ホリスティックサイエンスが進むであろう、
次なるステップの重要なポジションを占めています。

かつてのショートコースは、
その頃は世界状況も悪化する一方だったことから、
何だか、それらは理想論であり、
遠い未来を眺めているような、
気さえしたものですが、
今は、違います。
その未来が急速に近づいてきているためか、
同じ講座内容であっても、
現実味がぐんと増し、
実践モード的にさえなってきている感じもします。

ここのところ、私のところへの、
シューマッハカレッジに関してのお問合せも増えてきました。
本当に、時代の変化を感じるこのごろです。

Coherence ~ 調和への律動

2009年12月15日 12時18分03秒 | 大自然のしくみから学ぶ社会
ここ最近、
ブログの更新が疎かになっていましたが、
わけあって、
ジュード・カリヴァンさんや、
アーヴィン・ラズロさんの著作を、
たて続けに読んでいました。

特に何か新しい発見があったわけではありませんが、
本のところどころで、
ホリスティックサイエンスの重要性について言及し、
そういった学校が出てきていることを、
書いてくださっていることが、
私としては、ちょっと嬉しいことでした。

もう、出版されて2年たっている、
ラズロさんの「生ける宇宙」ですが、
デカルト-ニュートン以来の、
一般的な西洋科学を、
唯一の科学だと信じておられる方には、
是非、お奨めの一冊です。
生ける宇宙―科学による万物の一貫性の発見
アーヴィン ラズロ
日本教文社

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ラズロさんは、この本の中で、
この世界自体がひとつの包括的な宇宙であり、
一つ一つの生命も、私たちの身体も、
地球も、惑星運動も、銀河の動きも、
全てのものは相互に調和しあい、律動する、
コヒーレンスな状態であると述べています。
この考え方は、今、西洋でも、
急速に存在感を強めており、
その考えを後押しする研究が、
増えていることが紹介されています。

従来の自然科学は、
いわば、対象を試験管に入れて観察するようなもので、
かなり特殊な状態でしか物事を見ていません。
したがって、その研究結果を、
自然の姿だと解釈してしまうと、
大きな誤謬を産んでしまいます。
特に、医学や生物学などの自然相手の研究では、
これまで、実際の自然界の姿とは、
随分かけはなれた解釈がなされてきました。

これに対して、自然界をホリスティックな視点から観察し、
自然界のコヒーレンスに注目するなら、
今までの解釈とは大きく違った、
新しい世界に気づくことになります。
これこそが、私たちが本当に知るべき世界であり、
人類が、自然界の一員として、
調和して(コヒーレンスして)生きていくために、
欠くべからざる世界観でもあります。
また、健康問題、社会問題にしても、
その根本的な解決は、
自然、或いは、宇宙とのコヒーレンスぬきには、
ありえないことに気づくことができます。
そして、今までとは大きく違った医療、社会システムが、
必要なことがわかるでしょう。

通常の本ですと、
著者が持論を書いて終わりですが、
この本は違っています。

ラズロさんの考え方と方向を同じにする、
数々の著名な研究家、例えば、
ピーター・ラッセル、
ジェーン・グドール、
エリザベット・サトゥリスなど12名が、
それぞれの分野からの説明を行っています。
ラズロさんだけではなく、多くの一流の学者が、
ホリスティックな視点で研究を見始めていることを、
はっきりと明示しています。
なかなかの圧巻です。

ちなみに、ラズロさんを含めた、
上記の4人のほかにも
カプラやシェルドレイクなど、
この本にはシューマッハカレッジの関係者が、
多数登場します。

今後の学術界は、
これから10年、20年の間に、
急速にこちらの方向にシフトしていくと思います。
これまでの分断的な視点では、
正しく世界が把握できないことが、
多くの研究者の間でも認識されてくるからです。
欧米の研究家の多くが、
この流れに遅れまいとして、
ホリスティックな視点での研究に、
舵を切っていくでしょう。
舵を切らずに、従来の研究を続けている人たちは、
そう遠くない将来、学術界の中で、
「化石」のような存在になってしまうのは、
間違いありません。

尚、Coherenceの訳ですが、
辞書のとおりに直訳して“一貫性”と、
しているケースが多いのが現状です。
実は、この本もそうなのです。
しかし、
Coherenceの本質を掴んでいる人にとっては、
この訳語では、
最も大事な部分が欠けてしまっているために、
けっこう違和感を感じるものとなっているはずです。

Coherenceは、
お互いが常に干渉しあいながら成しえる、
調和的な律動の状態です。
多数の自律的、協調的な個が、
カオス状態から美しい秩序を織り成す、
Chaotic Orderもその一種といえます。
それは静止している状態ではなく、
とてもダイナミックな状態なのです。

自然界を形成しているCoherenceについて言えば、
それは、生き生きとした生命感あふれる、
宇宙の本源と同調した状態であり、
愛であり、幸福であり、平和である、
宇宙を動かしている原動力と言っても、
過言ではないと思います。

単なる“一貫性”では、その大事な部分が伝わりません。
ぴったりくる日本語もなかなか無いのですが、
漢字の意味からすると、
最も相応しいのは「調和」でしょう。
或いは、少し長くなりますが「調和的律動」、
と訳すのが良いのではないでしょうか。

Coherenceは、間違いなく、
これからの時代の、
重要なキーワードの一つになることでしょう。
ただしこれを、
日本人が単に“一貫性”であると理解してしまうと、
日本人だけが、その大切な部分の認識が、
欠けてしまうことになってしまいます。
結果として日本人が、
世界から遅れてしまわないようにしたいものです。