ひできの八ヶ岳ブログ

未来に残したいリジェネラティブな社会づくりを考える

自然と繋がった教育

2009年11月02日 21時27分56秒 | 子育て


(Schumacher College / Children and Nature)

自然の中で、
子供たちの自然な発育と創造性を育てる、
森のようちえん”。

1泊2日の「森のようちえん全国交流フォーラム」が、
愛知県の岡崎市で開催されます。

行こうかどうしようか迷っているうちに、
開催まであと1ヶ月もあるのに、
早くも200名の定員が、
締め切りとなってしまいました。
幼児教育関係者の高い関心が伺えます。

ちなみに、
このウェブサイトの最初のページに出ておられる、
臼井朋子さんは、安曇野シャロムヒュッテの奥様。
シャロムヒュッテやその敷地では、
自然と繋がった、
いろいろな子育ての活動が行われています。
小西貴士さんは、八ヶ岳清里のKEEP協会で、
私の息子も御世話になっている保育園の“森の日”を、
担当してくださっている方です。

10日ばかりの時間とお金がかかりますが、
フォーラムを申込み損ねた方には、
まだチャンスがあります。

イギリスのシューマッハカレッジでも、
同じような趣旨の講座が開かれます。

Children and Nature:
Rediscovering a sense of wonder


31 May – 4 June 2010
Richard Louv, Kathy Louv, Jan van Boeckel

The alienation that many young people feel from the natural world has become a major concern. It was beautifully articulated in Richard Louv’s book Last Child in the Woods, which has spawned an international children and nature movement. This course looks at why nature is important for children’s development and creativity, and how the “nature gap” can be bridged. It includes outdoor arts-based workshops and experiential exercises which can be used in many environmental education contexts.

どうやら、自然と子供の関係を重視した幼児教育は、
世界的な潮流でもあるようです。

シュタイナーによると、
ある程度の年齢までの子供たちは、
親が強制的に教育して育つのではなく、
自らの中に潜んでいるものを、
自分で開花させていくのだそうです。

それは、植物の種子が、
誰も教えないのに、
水と太陽と土によって、
自ら育っていくのと同じです。
子供は、自分に必要なことを全て知っており、
それらを、欲求を通して実現していきます。
私も、自分の子育てを通して、
それを心底実感しました。

逆に、親や教育者が、
強制的に早期教育やスポーツなどをさせたり、
子供の欲求を無視して、親の思いを優先させすぎると、
完全な子供の発育を阻害してしまいます。
心身ともに健康で、創造的な大人に、
育たなくなってしまうとのことです。

子供の教育のみならず、
自然と繋がった生き方、暮らし方というのは、
私たちが生きていく全てにおいて、
本当に大事な基本です。

「分離」意識を植え付ける文化

2009年10月21日 13時51分55秒 | 子育て
私たちの多くは、
物と物、自分と他人、自分と物、
自分と植物、自分と動物、自分と地球・・・
について、自分と他とは分離していると考えるのが、
ごく普通であり、
それが当たり前のこととなっています。

日本では、一般には明治の文明開化以降、
西洋の考え方が流入して、
その意識は一層強くなりました。

西洋では、15世紀、16世紀の頃から、
急速に変化していったそうです。
特にデカルトが、
客観的に観察できるものしか信じずに、
モノをできるだけ細分化して単純化して考える。
そして、個を集合させると全体になる。
といった、機械的な世界観を発表しましたが。
それが、その時代の空気に合ったのか、
急速に世に広がっていったのが、
大きな要因の一つではないかと考えられています。

実は、親子の間や初等学校のなかでも、
子供に、あえて分離意識を植え付けてしまうような、
子育てや教育がなされています。
そのために、世代を超えて、
分離意識が継承され、
今のように大半の人が、
強い分離意識を持った世界となってしまいました。

例えば、算数においても、
一番最初に教えるのが足し算。
1+1=2
これは、1という分離したものが2つあり、
それが集まって2となることを意味していますが、
そのエッセンスは、
先のデカルトの考え方そのものです。

とても些細なことですが、
こういった教育や、
親自身が分離意識を強く持ち、
日常の会話などを通して、
その考え方を子供に伝えるものですから、
子供も強い分離意識をもった大人に育っていきます。

この分離意識は、
現代の科学技術の発展の礎となりました。
そして、貨幣偏重の経済、競争資本主義を推進する力となりました。

また、分離意識ゆえに、
人は、孤独や寂しさ、敵対心、
恨み、妬みなどを強く感じるようになり、
また、意識の面で自然と切り離されたことから、
著しい環境問題が発生してしまいました。

多くの方が気づかれているように、
私たちの分離意識は、
少し行き過ぎてしまったかもしれません。
そろそろ、「個」も大事ですが、
「全体」との繋がりをしっかり踏まえる世界観を、
育んでいく必要があるかと思います。

そのあたりのことがわかっている人は、
子供たちには足し算を先には教えないそうです。
あえて言うならば、
2という全体があって、
それを平等に二つに分けるなら、
1が二つできると、教えるそうです。
あくまで、全体ありきで、
足し算より、むしろ割り算の形で、
数を教えるのだそうです。

現在の小学校等では、
今も分離意識を育む教育が進められています。
その是正は、明日からでも、
出来るだけ早くに手をつけなければならないと思っています。

また、環境を教える高等教育においても、
同じことが言えます。
今のままで研究、教育を続けていっても、
全体が繋がっている自然界を相手にしては、
最適な解は決して導き出せません。
そのあげく、
学生を誤った方向に導き続けることになります。
これは、同じく自然を相手にする、
医学、健康、獣医学などにもあてはまります。

これからの高等教育においては、
まずは、機械論的、還元主義的世界観が、
必ず誤謬を含んでしまうことを、
しっかり理解する必要があります。
その次に、
分離意識(機械論的、還元主義的世界観)を、
完全には捨てないまでも、
少しわきにおきつつ、
全体論的な視点(哲学)を基本に、
地球生命系の原理、摂理を学び、
その理解のうえで、全体と最も調和できる解を、
見つけていく方向に進まないといけないと思います。

これは今の日本の学校教育全般にわたり、
完璧に欠けている致命的な問題です。

Das Wesen der Farben ~ 色彩の本質

2009年09月29日 21時54分13秒 | 子育て
「未来の人間は、流動する色彩とともに、
 生きることを学ばねばなりません。
 それは魂を大きな生命力で満たし、
 生き生きと健康にすることでもあるのです」
 (ルドルフ・シュタイナー/西川隆範訳)

シュタイナーの色彩論の講演録
「色彩の本質・色彩の秘密」
の一節です。

色彩の本質・色彩の秘密(全訳)
ルドルフ シュタイナー
イザラ書房

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子供の歯の抜け換わりが始まり、
最初の7年期から、
新たな成長の段階に入りはじめた時を同じくして、
シュタイナーの考え方を踏まえた絵画教室に、
子供が通い始めるのを機会に、
昔読んだ、
シュタイナーの色彩論のこの本を、
再び手に取りました。

色にはそれぞれに性格があります。
色と色が隣り合うと、
そこにまた違った性格が現れ出ます。
それは、人間の意識のみならず、
内面にも働きかけます。

思えば、様々に色が溢れる現代社会の、
色の使い方の多くは、
色が人間に与える影響を、
完全に無視している場合が、
多いのが実際です。

ケバケバしいチラシや、
繁華街の色の洪水を見ていると、
何とも心が落ち着かず、
人を疲れさすのは、
そのためです。

意外にも、
色の専門家とも言える、
グラフィックデザイナーと称する人や
インテリアデザイナー、
服飾関係のデザイナーであっても、
色の本質には無関心な人が、
少なくない感じがします。

人間には、誰にも、
色の本質を感じとる能力があります。
色に関心を持つか無関心かは、
色の大事さに気づくか気づかないかが、
最初の分かれ目だと思います。
これは間違いなく、親の大事な役目でしょう。
もし、色の大事さに気づけば、
その人は、色の本質を感じ取り、
適切な色を使う能力を、
自然と使い始めるはずです。

色と人間は、
まるでダンスをしているようなものです。
適切な配色をすることで、
人間と人間を取り巻く環境との間に、
調和の取れた関係が出来上がります。
世の中の多くのものに対して、
色の調和についてもっと気が配られたら、
どんなにも美しい街や暮らしの環境が
できることでしょう。

色と配色と同じように、
音とメロディーにも同じことが言えると思います。

「私たちは、
 色や音によって刺激を受け、
 生かされている。」

これは過言ではない、
大事なことだと思います。

ゲーテが発端となり、
シュタイナーが発展させた色彩論については、
こちらの本が、分かりやすく、
私としてはお奨めです。

色彩のファンタジー―ルドルフ・シュタイナーの芸術論に基づく絵画の実践
エリーザベト コッホ,ゲラルト ヴァーグナー
イザラ書房

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小西貴士さん ~「森の日」トーク&スライドショー

2009年03月29日 21時12分49秒 | 子育て


久しぶりに、何か心を揺さぶられるように感動したイベントでした。
その感動は、不思議なことにも、
今や全国に知られる、青森の伝説的なりんご農家、
木村さんのりんごを食べたときの感動と非常によく似た体験でした。
まさに「自然と本物」を見た、といった感じでしょうか。

それは、近くの保育園で毎週のように行われている、
園児が、半日、或いは、終日かけて森の中で自由に遊ぶ、
「森の日」の子供たちの表情を撮った写真のトーク&スライドショーでした。

写真を撮影し、話をしてくださったのは、「森の日」の引率者である、
キープ自然学校の小西貴士さん
写真の腕前もプロ級で、美しい自然と表情豊かな子供たちの写真は、
どれを見ても、見とれてしまうほどです。

今日は、園児の様子を撮影した12000枚の中から選んだ写真を、
春、夏、秋、冬、そして、いくつかのテーマごとに分けて、
説明とともに見せてくれました。

「森の日」では、先生が何か子供たちにさせることもなく、
近くの森に行ったら、子供たちは仲間とともに好きなことをして遊びます。

木の枝からつるされたブランコで遊んだり、
小さな小川で、びしょびしょになって遊んだり、
広い野原で草や花をつんであそんだり、
森に住むムカデの足の動きの美しさに見とれたり、
木の枝でちゃんばらごっこをしたり、
朽ちた木が残した自然の造形で遊んだり。
年上の園児は、年下の園児の手を引いてあげ、
時として流れる涙も、不思議と森の中では、
貴重な体験に昇華している様子がわかります。

その写真の一枚一枚に、
子供たちの生き生きとした、
生命に満ち溢れた表情が写っていました。
同じ表情の写真は一枚もありません。

写真を見ていてわかったのは、
子供たちは、生まれてきたこの世界を体験しようと、
全ての感覚を常に全開にして
純粋に、一瞬一瞬をかけて、
まさに一生懸命生きているということでした。

写っている子供の多くは、
私は良く知らない子達であるにもかかわらず、
写真を見ていると、なぜか自分自身を見ているような、
自分自身が体験しているような感覚を覚えます。

そして、その写真に写ってる瞬間がなんともいとおしく、
時間と空間を超越して、
いつまでもその瞬間を忘れないでいたい。
そういった気持ちにさせてくれます。

子供たちが、自然の中におかれ、
大人が介在しない世界で見せる表情と行動とは、
まさに、子供たちの内面から湧き出した、
真の欲求と体験が生み出したものではないでしょうか。
そして、ある意味で、人間としての大事な「学び」が、
そこで行われているといっても良いでしょう。

いま、この「森の日」と同じようなことは、
「森のようちえん」の活動として全国に広まりつつあります。
安曇野のシャロムの臼井さんのところも、まさにその先駆けです。

しかし、街中の幼稚園や保育園ではなかなかできません。
おもちゃをプラスチックから木のおもちゃにしたり、
建物を自然素材にしたりという取り組みならできますが、
子供たちの、あの表情はつくりだせません。
そもそも、ほとんどの保育教師自身が、
子供が森の中で見せる、あの活き活きとした表情自体を、
知らないのではないでしょうか。

街の幼稚園、保育園で、
いかにしてあの森の子供たちの表情を実現するか。
これは、仕事を通じて幼稚園運営に多少の関わりのある私にとっても、
きっと5年がかりくらいの大きなテーマの一つになるでしょう。
これは、この先百年のための仕事になることでしょう。

ちなみに、東京で小西貴士さんのトーク&スライドショーと、
幼児教育で著名な汐見先生のシンポジウムが合わせて開催されます。
幼児教育関係者の方にとって、まさに必見かと思います!

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「森を語り、街を語る ~ 子供たちと共に歩んで」

◆日  程 2009年5月15日(金)
◆時  間 18時30分~21時00分
◆会  場 文京区民センター3階-A室
    
東京都文京区本郷4-15-14
*写真展会場の「文京シビックホール」前の
春日交差点はす向かい地図はこちら↓
http://www.cadu-jp.org/notice/bunkyo_city-hall.htm
◆定  員 200名
(定員になり次第締め切らせていただきます)
◆資 料 代 1,500円(当日会場にて)
◆話題提供 小西 貴士
        汐見 稔幸(白梅学園大学学長・教授)
        岩井久美子(三鷹駅前保育園園長・保育士)
◆お申込み 

参加ご希望の方は、メールにてお願いします。
メールの件名に【小西貴士写真展・シンポ申込み】と書いて、
①お名前、②ご所属、③お電話番号、④メールアドレス
をご記入のうえ、下記までお送りください。
お問い合わせについてもメールでお願いします。

申込先:goriphoto0503@yahoo.co.jp

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こちらは小西さんのブログです。
「森の日」、「キープ森のようちえん」の写真の一部とともに、
素敵な文章も掲載されています。
八ヶ岳で開かれる小西さんの写真展などの情報もあります。

森の中で成長するこどもたち

2008年12月16日 22時54分03秒 | 子育て

このところ2日おきに天候が変わるサイクルとなっているようだ。
おとといに降った雪は日陰のところを残して、半分以上は融けていった。



今日も朝から、色を塗ったように青々とした空が広がった。
まさに八ヶ岳南麓の典型的な冬の姿である。

近くにあるKEEP協会のヨハネ保育園では、
KEEP協会に勤める自然レンジャーの小西さんという方が、
月に2度程度、広大な清里の森の中に子供たちをつれていって、
一日中、遊ばせてくれるプログラムを行っている。

自然の森の中でこどもたちは、
先生に何をするかと言われることなく、
ひたすら、自分の好きなことに集中して、
自然を相手に、まさに言葉通り、”夢中”になって自分の世界を紡ぎ出す。

極めて創造的な一日をすごすのである。

このような経験を経たこどもたちは、
小学校に上がると、
集中力に優れるばかりでなく、
積極性と好奇心とに富んだこどもに成長する傾向があるそうだ。

シュタイナーが言っている様に、
こども達は自分で自分の成長に必要なことを直感で知っているようだ。
特に7歳までのこどもにとっては、
大人が何かを強制したり、無理して知識を教えることは、
その自然な、あるべき成長を阻害してしまいかねない。

大人から見ると、こどもは不完全に見えるだろうが、
実際には、それは大きな間違いなのかもしれない。

こどもは、そばにいる大人以上に、自分に何が必要かを感じ取っている。

幼いこどもが示す表情や要求は、
大人の勝手な解釈や判断より、確かな指針となる。
こどもから発せられるサインを見極め、自然な成長を促してあげることこそ、
大人の大事な役目であり、社会の責任だろう。