Islander Works

書いて、読んで、人生は続く。大島健夫のブログ

それでもいい。

2011-04-07 20:27:46 | 出たもの
最近、様々な人や媒体がPoe-Triのことを取り上げてくれる際、「ストイックな朗読の・・・」とか、そういう冠をつけてくれることが多い。猫道さんなんかは、Poe-Triのことを「道場」と言ってはばからない。私は、そのような紹介の仕方をされることに、正直いって最初のうちはあまりいい気持ちがせず、というよりもちょっぴり悩んだ。なんだか、結果的にお金をとって見せるべきでないものを見せているような感じになっているんじゃないか、と思えたからだ。

しかし、考えてみると、子供だった私が成長し、人格が形成される十代、二十代の時期に、私自身が一番数多くコミットしてきた社会的システムは、もしかしたら道場であるのもしれない。私は全然ストイックな人間でも何でもないし、それは私と一緒に剣道や空手をしてきた仲間ならみんな知っていることだと思う。

だが、道場というのは、基本的には、「今この瞬間の自分より、次の瞬間には進歩したい」と大筋で望む人間が集まる場所であることは確かである。私が人間の類型を学んできたのは、かなりの面でそういうような人々を通じてだった。彼ら、彼女らの中には、強くて優しい人がいた。強い人間はそれなりの過程を経てきたからだ。強くて残酷な人がいた。強くあることには代償が必要なこともあるからだ。弱くて優しい人がいた。弱い人間は尊敬することを知るからだ。弱くて残酷な人がいた。何よりも自分の弱さから目を背けたいからだ。時には、たった一人の人間がその四つ、あるいはもっと別な数えきれないほどの類型の中を目まぐるしく行き来することもあった。人間は複雑なものだからだ。

それぞれの実質を引きずった人々が集まり、それぞれの思惑のもとに何らかの形で自分自身を試す場所が、きっと道場なのだと思う。彼らの持ち寄った何ものかが交錯するとき、道場では悲劇が生まれ、予想もしていなかった驚きが生まれ、感動が生まれる。笑いさえ生まれることがある。

昨夜のPoe-Triのオープンマイク参加者の中には、「自分自身を確認するために来た」といってステージに上がった人がいた。ということは、本人の意図するとせずとにかかわらず、道場的な何かを求めていらっしゃってくださったということになる。それならそれでもいいのかな、と私は初めて昨夜、思った。

4月6日、あの震災後、最初のPoe-Triは、都内で最も歴史ある朗読イベント、高田馬場Ben's Cafeの「笑いと涙のぽえとりー劇場」主宰・服部剛さんから始まった。秋には父親となる服部さん。聴く者の耳にストレスを与えない彼の言葉が、ゆるやかに時空間に染み入ってゆく。


キャストとしては久々の出演となる猫道さんは、喉の調子が悪く、リハーサル中から色々と試行錯誤していた。しかし、その声の中の小さな瑕疵が逆にパフォーマンスにリアルで暴力的な色彩を添え、素晴らしいアクトとなった。


あしゅりんさんは、猫道さんとはまた違う形で、肉体の酷使によってイレギュラーを生み出し、オーディエンスにグルーヴをもたらした。


私は、「真夜中のドア」と、ピーター・ジョーンズ作「キルケリー」の二篇を朗読した。

オープンマイク参加者は10名。登場順に、

今回も季節もので聴かせた川島むーさん


サイババ危篤の報に心を痛めるmidoさん。


初参加。merry-andrewさん


「今回は棒球でいきます」と宣言して都知事選によせる詩を詠んだ、死紺亭柳竹さん


愛する音楽シーンへの思いを。稗田恵一さん。


兵庫から来襲!ポエムファイター・天道暁さん。


久々の登場。山崎みふゆさん


エントリーシートには「服部半蔵」の名前が。その正体は・・・(笑)。珍しくテキストを手にしての朗読。


uraocbさんはパワープレイで迫る!


ラストは市毛友里さん。凍りつくような波動は凄いの一言。


今回も曲者が揃っていた。

なお、Poe-Triはチャリティーイベントではありませんが、今回、バーカウンターの上の募金箱に、札・小銭併せてなんとちょうどジャスト4000円の募金がございました。本日付で、東北関東大震災被災者への義援金として、日本赤十字社に寄付させて頂きましたことをここにご報告申し上げます。

次回、Poe-Tri Vol.35は、5月4日水曜の開催です。毎年5月恒例の、私のワンマンライヴとなります。オープンマイクはありませんが、2時間じっくり詠ませて頂きます!新作の1時間作品もやります。是非、ご来場ください。心よりお待ちしております。

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