日本の生殖医療を世界レベルに!

男性不妊症専門医が学術活動ならびに雑感を徒然と綴ります。

精巣がんによる男性不妊

2010-05-31 19:22:48 | 日記
精巣がんは10万人当たりの発生率がおよそ1人とさほど多い疾患ではないですが、15-34歳の男性においては最も多い悪性腫瘍です。この精巣がんはほとんどが、精細管の上皮細胞から発生するので、精子形成は当然低下します。片側だけであれば、もう一方あるから大丈夫と思いがちなのですが、いろんな影響から精子濃度は相当悪くなります。時には無精子症となります。またこの腫瘍の特徴として、痛みを伴わないため、発見が遅れることが多く、精巣摘除に加えて、抗がん化学療法を追加で行うことも多いです。ここで大事なのが、精子をいかに保存するかということです。この疾患は比較的抗がん化学療法が効きますので、根治できる可能性が高いのです。またほとんどの方が若い患者ですので、その後の人生の質(QOL)は非常に重要です。ただでさえ、がんになったほうの精巣をとってしまい、片方の精巣だけになるのに、抗がん化学療法を受けると、くすりの影響でまず無精子症になります。抗がん化学療法が終了してしばらくすると、造精機能は回復してくることも多いのですが、中にはずっと無精子症の方もおられます。このことを考えると、抗がん化学療法前に精子を凍結しておくことが必要と考えられます。こういった説明があまりなされていなかったため、化学療法後数年しても無精子症のままで、挙児希望あり、micro TESEを受けて精子回収しにいく、といった患者さまもおられます。精子保存は基本的に何年でも可能です。
 片方の精巣がん患者さまは反対側にも精巣がんが発生しやすく、そういった場合は早期発見が必須ですが、腫瘍部以外の精細管からTESEし、凍結保存してしまうやり方をお勧めしています。もちろん両側精巣がなくなってしまうと、男性ホルモンがほとんど作られなくなりますので、男性ホルモン補充が必要になります。
どんながんであっても抗がん化学療法前には精子凍結をお勧めしています。ただし、精子がまだ出現していない小児の場合には困ってしまいます。精巣組織を手術で取り出し、精子の幹細胞を保存しておくことは将来的には考えられるべきことかもしれませんが、現段階では侵襲も大きく、まだ早計かもしれません。

生殖医療の地域格差

2010-05-29 13:51:01 | 日記
一般医療において、日本はアメリカやオーストラリアに比べると地域格差は比較的少ない素晴らしい国だと思いますが、こと生殖医療に関しては残念ながら地域格差は存在します。地域というよりは施設間の格差といったほうがより正確かもしれません。これは何より経験数によってずいぶんレベルは変わってくることを自分自身感じています。レベルが上がると、症例数もさらに増え、今までに見えなかった疑問点が生じ、また努力する。そして、その努力がまたいい循環になり、患者が集まる。「良い循環がさらに良い循環を呼ぶ」、こういったプラスの連鎖をいろんな場面で経験された方も多いと思います。医師にとっての技術力というのも同様のものと考えてください。逆に停滞してしまうと次のステップが非常に遠いものとなります。もちろん医師の素養というものにもよりますが、患者から学ぶことは非常に大きく、これが技術力のアップに直結することを実感します。反論もあるかもしれませんが、そういった”exposure”の機会が多い、また”competitive”な地域のほうが病院の能力は上がるのは、否めない事実といえましょう。したがって、患者も口コミやいろんな情報を頼りに、少しでも良いレベルの腕を求めて、自宅から遠く離れた施設であっても赴かれるのです。

こうして出来上がる地域格差を改善するためには、やはり医学生への啓蒙活動、医師間での勉強会など、男性不妊専門医を育てる活動に力を入れるべきといえるでしょう。
もともと不妊治療の特徴として、盛んな施設はニューヨークや、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シドニー、メルボルン、東京、大阪といったいわゆる都会にあるのです。不妊症患者のほとんどは20歳-45歳までの層ですので、この層の人口の多い都市で栄えてきた医療です。もちろん地方の病院で勤めながらも世界の最先端を吸収しておられる医師の方も少なからずおられるのは事実ですが、やはり数多くの症例を経験し、いろんなパターンを診てきているというのは強いことです。

近くに生殖医療専門医や信頼できる医師がおられない場合は仕方がないとは思いますが、この情報化の時代に噂だけで遠方治療を受けておられる方々もおられるように感じます。それだけ切羽詰まっていて、挙児に対する希望が非常に強いのでしょう。不妊治療においては、女性側の生殖可能年齢の制限より考えて、何より時間を無駄に使うことだけは避けなくてはなりません。そのためには医師に方針や説明を求めるのは当然の権利であり、納得いかなければ転院も考慮に入れてもよいと個人的には思っています。

新鮮精巣精子か凍結精巣精子か?

2010-05-26 09:51:13 | 日記
よく勉強しておられる患者からこの質問はよくあります。
閉塞性無精子症の場合は凍結精子を用いても新鮮精子を用いても結果にほぼ差は出ませんが、非閉塞性無精子症の場合はずいぶん異なります。なんとか精子を回収できたとしても、やはりそれだけ質の良くない精子が多いことはよくわかっています。これを凍結、融解するとさらにいい質の精子は減少または無くなったりする可能性があるわけです。

アメリカやオーストラリア、ヨーロッパでは非閉塞性無精子症の場合、凍結精子を用いることは稀です。必ず、奥さまから採卵する同時にmicro-TESEを行います。成績はやはり新鮮のものがいいことは証明されています(成績は10%)程度違います)。しかし日本には日本の問題点があります。それはdonor sperm(精子バンク)です。日本では精子バンクというものは存在せず、AID(非配偶者間の人工授精)のための認定施設があるだけです。顔写真、学歴、人種、性格などを選ぶことはできません。アメリカやオーストラリアではmicro TESEで採取できないときにはこのdonor spermを使用することも多いのです。日本においてこのシステムがないということは、奥さまの採卵が全く無駄に終わる可能性があるということを意味します。可能性というか、50%以上は無駄になってしまうのです。

Micro-TESEというのは非閉塞性無精子症の根本的な治療ではなく、単に宝探しをしているようなものなのです。宝があるかどうかわからないのに、高額のお金をかけて、しんどい思いをして挙児の可能性を作っているようなかたちになります。Micro-TESEで精子が見つからないということは現時点では治療の終焉を意味しますし、将来の万能細胞をもちいた精子形成などに思いを馳せて採取した卵を凍結することはあまり意味がないことでしょう。精子回収率が70%程度あれば、それこそ、奥様にも新鮮精子と凍結精子を用いた顕微授精の成績をお見せし、納得していただいたうえで、micro-TESEと同時の採卵をお薦めしたいところですが、現時点で精子回収率は45%程度ですので、どうしてもそこまでお薦めすることはできません。よって日本ではまずmicro-TESE、精子が存在すれば精子を凍結。次に奥さまの排卵誘発、採卵、という流れで進んでいくのが通常です。中にはほぼ全例micro TESEと採卵を同時に行っている施設もあります。排卵誘発にかかる費用が保険適用になって、もうすこし金銭的にも受け入れられるようになれば、積極的に考えられるべき問題だと思います。

もうひとつ問題点があるとすれば、それは婦人科主体の不妊クリニックが男性不妊専門医とどう連携をとるかということです。奥さまの採卵の日程は微妙に調整することはできますが、大きく動かすことは困難です。男性不妊専門の常勤医がいれば、全く問題はないのですが、そのような施設はほとんどありません。あっても大学病院という大きな施設となり、こういった病院は休日にも診療をするなどといった小回りが利かず、逆に不妊治療臨床には不向きです。奥さまの排卵刺激を行い、採卵の日程が決定した時点で、micro-TESEができる男性不妊専門医がすぐ手に入るといった状況はなかなか難しいものがあります。こういった社会的な理由からも、新鮮精巣精子を用いた顕微授精が行われずに、精巣精子が凍結され、時期をおいて奥さまの採卵、顕微授精が行われるのです。
精子回収率を上げ(術前の精子回収予測因子をなんとか探す!)、micro-TESEと採卵を同時に行える体制を必ず作り上げます。妊娠率はまだまだ上がるはずです。

閉塞性無精子症

2010-05-25 22:01:12 | 日記
精液検査で射出精液中に精子が一匹も見当たらない場合、これを無精子症といいます。説明の通り、精巣で造られていても射出された精液中に精子がいなければ無精子症となるのです。「無精子症」=「精子ができていない」ということではありません。種々の検査より、精巣では精子が正常に形成されているのに、精巣上体や精管などの異常で、精子が射出精液中に出てこない場合を「閉塞性無精子症」といいます。また、精巣の異常である場合を「非閉塞性無精子症」と呼びます。この2つに大別することができ、治療法はずいぶんと異なってきます。診察ならびに検査でほぼどちらか判断することができます。中でも重要なのが、採血でのFSH値、精巣容量と閉塞起点の有無です。血清FSH値はその時点での造精機能の指標となることが多いですので、単純にいうと、無精子症の場合でFSHが正常値の範囲内であれば、精子は造られているのに射出精液に出てこない、「閉塞性無精子症」のことが多いのです。逆に言うと、FSHが非常に低い場合や非常に高い場合は、まず非閉塞性無精子症とみて差し支えありません。これに精巣の大きさ、閉塞起点の有無を考え合わせると9割程度は診断がつきます。しかしながら我々にとっても非常に困ることがあります。FSH値が正常値、精巣容量も正常、閉塞起点も見当たらない症例の中に、精子形成の途中の段階で完全に止まってしまう精子形成障害を認めることが少なからずあり、例えば精子形成が精母細胞などで分化が停止するmaturation arrestがあります(ただし、よくみなさん誤解されているようですが、精子細胞で止まることはほとんどありません)。「閉塞性無精子症」と診断しても約10%にこのmaturation arrestが含まれます。もちろんこのmaturation arrestは「非閉塞性無精子症」となります。 無精子症全体でみると、15-20%が「閉塞性無精子症」、80-85%が「非閉塞性無精子症」となります。
「閉塞性無精子症」の場合の治療法は詰まっている場所をバイパスするいわゆる「精路再建術」です。これにより射出精子の出現が期待でき、自然妊娠へとつながる可能性があります。閉塞性無精子症に対する精路再建術は、自然妊娠が望めること、さらに複数回の妊娠を望む場合でも有利であることなどの利点があり積極的に行われるべきだといえます。しかしながら簡単に精巣や精巣上体から精子が抽出できますので、その精巣精子や精巣上体精子を用いて顕微授精を行う施設が非常に多いのです。患者さまがきちんと説明を受けて、納得した上でその方法を選択されるのなら問題はありませんが、多くの婦人科クリニックでは精路再建術の説明をしないまま、精巣精子を用いた顕微授精へとナビゲートしている感は否めません。
 この「精路再建術」は技術的になかなか難しい手術なのです。よくある「精路再建術」は、もう子どもはいらないという方が精管結紮(簡単な言葉でいうと「パイプカット」)の手術を受けた後に、再婚などで再度挙児を希望され、「繋ぎ直してほしい」と来られる精管精管吻合術ですが、これは再開通率80%-90%、自然妊娠率は50-60%と比較的良好な成績が得られます。切断部位は触診にて容易に確認でき、吻合可能か術前に判断できます。しかしながら、精子が確認できない場合や閉塞期間が長い場合は開通率、自然妊娠率は低下してしまいます。また確実な吻合をするためには顕微鏡下での手術が必要となり、高い技術が要求されます。精管切断後の長期間の精管閉塞に伴う二次性の精巣上体閉塞や破裂が生じることも稀ではなく、精管精管吻合術に加えて精管精巣上体吻合術を施行せざるを得ない場合もあります。こうなれば成績は非常に悪くなりますが、通常、精管切断後の精路閉塞である場合、再建後の成績は良好ですので、まず精管精管吻合術を試み自然妊娠を待つべきだといえるでしょう。

Azoospermic factor

2010-05-23 17:55:38 | 日記
染色体異常は男性不妊の原因になりうるため、妊娠の可能性や体外受精・顕微授精などでの判断材料となります。他に特にY染色体上にある遺伝子(azoospermic factor: AZFという)の微小欠失が男性不妊の原因となることがわかっており、最新の知識をもつ施設ではこのAZF遺伝子の検査を行っています。AZFにはa, b, c領域があり、それぞれの微小欠失で精子形成不全のタイプが異なります。この検査をすることにおいても、治療の可能性を探ることが可能です。よく勉強して外来に来られる患者にDAZ領域の欠失について聞かれることがありますが、DAZ領域とはAZFc領域の一部であり、このDAZ領域の検査だけをすることはほとんど意味がありません。少し専門的になりますが、たとえばAZF遺伝子c領域のみの微小欠失の場合には、精子が回収できることが多く、生殖補助技術により妊娠が成立した場合には、男児の場合、遺伝リスクは事実上100%であり、その児も同様に男性不妊となる可能性は非常に高いといえます。出生前診断または着床前診断により胎児の性別や Y染色体の欠失の有無を調べることはできなくはありませんが、日本では通常行われていません。こうやって情報を少しでも多く理解し、納得しながら進んでいくことは治療方針を決定するにあたって、医療者側にとっても患者側にとっても非常に重要なことと考えます。現時点でMicro-TESE前にAZF検査を行っていない施設は、世界的に見ると最先端ではないといえます。確率がさほど高くない手術を行う前に、絶対精子回収できない患者をふるいにかけることは大事なことです。無意味なお金をかけさせてはいけません。このAZF検査を行っているかどうか、一生に一回といえる手術を行う施設を選ぶ際の基準のひとつといえるでしょう。

micro-TESE

2010-05-19 20:44:09 | 日記
オーストラリアからmicro-TESEを導入したいので、7月のどこかで一週間滞在してくれないかとのemailが来ました。オーストラリアは生殖医療先進国ですが、男性不妊治療に関しては完全にアメリカに後れを取っています。治療に関しては日本のほうがまだレベルが高いと思います。この原因として、すべて婦人科医が治療にあたっていることが理由として考えられます。

私が昨年メルボルンで暮らしていた際も、何度もseminarやlectureを行いましたが、イギリスの流れをくむ保守的な人々が多く、遅々として前進しませんでしたが、わたしがこうやって日本に帰ってきてしまってから、依頼が来るとは皮肉なものです。もちろん向こうから准教授というpositionも頂いているので、当然行かせていただきますが、、。実は10月にアデレードで行われるオーストラリア生殖医学会にもmicro-TESEのテーマで招請講演を頼まれており、実際に始動するのはその後くらいかな、と思っていましたが。再びメルボルンにこういう形で遊びに(?)いけるのは楽しみです。

micro-TESEは術者の熟練度によって本当に結果に差が出る手術なので、どんどん若手医師が経験できる施設にしていければ、私の存在価値もあるというものです。向こうで一旦micro-TESEを始めてしまえば、あっという間に日本の大半の施設は症例数でかなわなくなるでしょう。こういったセンター化することは医師を養成するうえで本当に大事なことです。もちろん真剣に一例一例やっていく姿勢は大変重要ですが。

日本の患者はあまりに医師、施設に対する情報量が少なすぎます。術者の熟練度によって(もちろん人柄もありますが)判断がされるべきだろうし、私ならそういった医師を選んでいくら遠くても通います。実際にアメリカなど西海岸から東海岸まで6時間かけて治療に行き、治療後数日ホテルに泊まるくらいです。特に不妊症は専門性が重要な分野であり、婦人科医がすべて行うには少し無理があります(木場公園の吉田先生のような一部スーパードクターを除く)。それぞれの超専門家に治療をお願いし、その超専門家たちがうまくcommunicationをとる、これが理想の形でしょう。同一施設ですべて行えるのは理想ですが、そういった最先端の治療ができる施設は残念ながら現時点では日本では皆無です。

写真は元UCSF教授で現在男性不妊専門Turek Clinicで私がいま述べたような治療を具現化しているDr. Paul Turekです。specialistですが、とても気さくに相手してくれます。

operative microscope

2010-05-18 00:55:21 | 日記
私が最も得手とする手術であるmicro-TESEとvaricocelectomy。共に手術用顕微鏡が必要です。すなわちこれがなければ、私もただの人なのです。今回新規openに向け、新たな手術用顕微鏡を購入します。どんなものにしようか迷ってしまいますが、一番大事なのは「きれいに見えること」これに尽きます。特にmicro-TESEに関しては、顕微鏡で結果に差が出ると思いますね。いい機械と共に一人でも多くの方に喜んでいけるような体制を作っていきたいと思います。

varicocelectomy

2010-05-15 00:30:21 | 日記
大阪のある病院から左精索静脈瘤手術に関する手術指導の依頼あり、行ってきました。この手術は現在までかなり積極的にやってきましたが、印象としては良くなる人はとんでも良くなることもあるし、不変の人もけっこういるということです。ヨーロッパ、オーストラリアではほとんど行われていません。アメリカでは非常に積極的です。

男性不妊に対する精索静脈瘤の治療に関しては、賛否両論ありますが、私のデータではGrade IIもしくはGrade IIIに限れば、有意に治療効果はあったことが出ています。また、患者が40歳以上であったとしても有意に精液所見を改善しています。術前のFSH値が高いほど、またtestosterone値が低いほど改善しにくいデータです。不可逆変化が起こっているということでしょう。ただしwifeの年齢が38歳以上の場合にはいたずらにお勧めすべきではないと考えています。高度乏精子症の場合にも顕微授精を先行させたほうがいい場合もよくあると思います。しかし本治療は精子一匹一匹のDNA損傷を軽減させる結果も出ましたので、今後も積極的に行っていきたいと考えています。

もう少し症例数が増えると別の術後効果予測因子が出てくるかもしれません。データはうそをつかないので、真摯にとらえていきたいですね。

International Workshop on Klinefelter syndrome

2010-05-09 15:27:22 | 日記
デンマークコペンハーゲンで開催されたこの学会に招請講演を依頼され、3泊5日で行ってきました。タイトルはmicrodissection of testis with Klinefelter syndromeというものでした。このworkshopには内分泌内科医、小児科医、精神科医、産婦人科医、泌尿器科医などなどたくさんの科から講演があり、非常に有意義なものでした。本来私に与えられたセッションは、micro-TESEの考案者であるコーネル大学のDr. Schlegel(トップの写真で私の横に移っている方です)が行う予定でしたが、彼が急遽キャンセル。お鉢が回ってきました。

手術ビデオなどを中心に、私がこれまでに200例以上行ってきたmicro-TESEならびに30例のKlinefelter syndrome患者のmicro-TESE結果について講演を行いました。今回は旅費、ホテル代などすべて学会がもってくれるので、非常に快適な旅でした。日本から講演に呼ばれたのは私だけで、参加者くらいはいるかな、と期待しましたが、残念ながら一人もいませんでした。

内容はというと、KS患者の妊孕性について非常に熱い議論がありました。micro-TESE術前のホルモン治療は是か非か。もちろんまだevidence basedな答えはありません。日本では保険適応になっていないaromatase inhibitorやhCG, testosterone投与の意義についても様々なaudienceが経験をもとに質問してきました。30分間の講演でしたが、さらに質疑応答に20分かかり、またこれを止めようとしない座長(次のセッションまでじかんがあったせいでもありますが、、)の熱さに甘えていい議論ができました。

欧州では講演や発表に対して十分すぎるほどの敬意が表されます。日本も見習う点は多いです。政治的なつまらないことで講演者を決めているようでは、いい講演も聞けませんし、聴衆が飽きてしまいます。今回は本当にいい勉強ができました。北欧のspecialist達とのいい出会いもありました。今後collaborationできればと思います。

クラインフェルター症候群

2010-05-03 15:02:01 | 日記
東南アジア某国のKlinefelter syndrome患者から私の治療を受けたいとの問い合わせが。種々の医学論文を調べつくして、連絡をしてこられました。最近日本にはアジア諸国から医療観光という名目で治療に来られる富裕層が増えているということです。島国日本ではこれまでもまったく「よそ者」を受け入れる風土がなかったと思いますが、徐々に変わってきているかもしれません。

医局制度の崩壊、優秀な人材の海外流出など日本の医療自体が転換期にあるのは間違いないことだと思います。理想の医療は難しいですが、よりbetterを目指して医療政策が行われることを願います。特に日本は医療の教育、システムに問題が多すぎるような気がします。